2018年11月14日更新
パート・ド・フリュイが固まらない原因と解決法
甘酸っぱい果物のジュースやピューレをたっぷり使ったフルーツゼリーの砂糖菓子のパートドフリュイ。フランスでは夏になるとチョコレートの代わりよく食べられるお菓子です。見た目も可愛く日持ちするのでお土産にも喜ばれるお菓子です。果物のジュースやピューレで自宅でも作れますが、上手に固まらないという声も耳にするパートドフリュイ作り。今回はパートドフリュイが上手く固まらないわけを調べてみました。
- 目次
- パート・ド・フリュイの意味
- パート・ド・フリュイとグミの違い
- ペクチンを凝固剤に使うパート・ド・フリュイ
- パート・ド・フリュイが固まらない原因
- パート・ド・フリュイが固まらないことを防ぐ方法
- パート・ド・フリュイを上手に固まらせよう
パート・ド・フリュイの意味
パートドフリュイはフランス語でPâtes de fruitsと書きます。Pâtesは生地を表し、日本語に直訳すると「フルーツの生地」という意味となります。パートドフリュイはその意味の通り、果物のジュースやピューレを生地にしたお菓子です。果物のジュースやピューレをペクチンで固めて砂糖をまぶして作った砂糖菓子で果物だけの素朴な風味を味わえるゼリー菓子です。
パート・ド・フリュイとグミの違い
果汁で作られているゼリーというとグミも同じですが、グミはドイツ語でGummi書き、日本語に訳すと「ゴム」という意味になります。小さなクマの形をしたドイツのハリボー社のグミキャンディーは日本でもお馴染みですが、噛む必要がない食べ物が多くなり、そのことで子供が歯に関する病気にかかりやすくなったドイツで、噛む力を強くするお菓子を作り子供に食べさせることで、歯に関わる病気をなくそうと発案されたのがグミの始まりだそうです。だれもが好きな果物の果汁をゼラチンで固め弾力のある噛み応えのあるお菓子がグミです。
パートドフリュイはグミと同じく果汁で作られたゼリーですが、大量の砂糖と凝固剤にペクチンを使い、果汁や果物のピューレを煮あげてまわりに粗い砂糖をまぶした甘いお菓子です。パートドフリュイは食感も柔らかなゼリーの砂糖菓子です。日本ではお菓子として食べられているグミですが、グミの由来は甘味を楽しむお菓子ではなく、そもそも噛み応えを目的としたお菓子がグミ。パートドフリュイとグミは目的も凝固剤も食感も違うお菓子です。
ペクチンを凝固剤に使うパート・ド・フリュイ
パートドフリュイの材料は果物のジュースもしくはピューレ、グラニュー糖、ペクチン、酒石酸もしくはクエン酸と、少量の水です。ゼリー状に固める凝固剤にペクチンを使いますが、そもそもペクチンは大量の糖と酸を加熱することでゼリー状に固まる性質があります。ちなみにペクチンは加工過程によって2種類のペクチンがありますが、パートドフリュイに使われるペクチンは、高い糖度と酸によってゼリー化するHMペクチンが使われます。
ペクチンは寒天のように煮溶かすだけでは固まらない
ペクチンはパートドフリュイのほかジャムやコンフィチュールなどを作るときに使われる凝固剤ですが、凝固剤にはペクチンのほかにも、海藻が原料となっている寒天などの凝固剤もあります。どちらも食材を固める凝固剤ですが、ペクチンは寒天と違い、煮溶かしただけでは固まりません。ペクチンは液体の中にしっかりと糖度(甘味)とPH(酸味)がなければゼリー状にはなりません。たとえばパートドフリュイの場合は糖度がおよそ55%以上、PH3.0でゼリー化します。
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パート・ド・フリュイが固まらない原因
パートドフリュイを作るのに果汁やピューレが固まらない原因の一つは、ペクチンがダマになってしまったまま加熱してしまうことです。ペクチンがダマになってしまうと固まりません。ペクチンはダマになりやすいので、それを防ぐためにレシピ内の砂糖に混ぜ合わせて使用します。計量した砂糖にペクチンを加え泡立て器などで均一に軽くよく混ぜ合わせます。そして果汁やピューレにしっかり溶かしてから加熱するようにしてください。ちなみに固まったあとにかき混ぜてしまうと、これもまたうまく固まらなくなりますので注意してください。
レモンなどの酸度の高い果汁を使うときは酸を加減する
パートドフリュイの凝固剤のペクチンは、液体の糖度だけではなくPHも関係して固まるので、レモンなどの酸味が高い果汁を使う場合は、材料のクエン酸もしくは酒石酸などの量を減らすなど加減しなければ、レシピどおりに材料をはかっても、固まらない原因となることがあります。作っている過程で酸が溶けないとその部分が変色して糸を引いた状態になり固まらないことがあります。
パート・ド・フリュイが固まらないことを防ぐ方法
パートドフリュイが固まらないことがないようにするには、使用する果物の果汁やピューレのその時の状態で、ペクチンや酸(クエン酸もしくは酒石酸)の量を加減してみましょう。
糖度についても同じです。材料の果物は自然の産物なのでレシピ通りに材料をはかっても、それが的確な量ではないことがあります。その果物の収穫期によっては果物自体、本来その果物が持つ糖度より甘みがなければ砂糖を多めに加えて液体の糖度を高めなければ固まりません。そのため糖度計などを準備して液体の糖度をはかるのも固まらないことを防ぐ一つの対処法です。
またその量に差はありますが、そもそも果物にはペクチンが含まれていますが、ペクチンの含有量の少ない果物の果樹やピューレを使うときは、材料のペクチンを少し多めに加えると固まります。たとえば梨、バナナ、パイナップル、イチゴ、ブルーベリー、柿などはペクチンの含有量が少ない果物です。
煮詰める温度にも気を付けよう
果汁やピューレを煮詰める時の温度がレシピの温度に±2℃の範囲内でなければ固まらない場合があります。固まらなかったら再度加熱して煮詰めると固まりますが、残念ながら再加熱したものは、果物の香りが薄まってしまいます。たとえば酸味がPH3の果汁では沸点が110~111℃ないと固まりません。HMペクチンの使用量は全体の1%。バナナやマンゴーなどのように酸味の少ない(PHが低い)果物はクエン酸もしくは酒石酸を足してPHを調整してみましょう。
パート・ド・フリュイを上手に固まらせよう
パートドフリュイに使う凝固剤のペクチンは大量の糖と酸でゼリー化します。自然の産物である果物の果汁やピューレが材料なので、収穫期やその年の天候によって果物の糖度や酸味が違うことがあり、レシピ通りに凝固剤などをはかっても固まらないことがあるのは、パートドフリュイを作る難しいところです。また凝固剤のペクチンはダマになりやすいので、必ず分量の砂糖に混ぜて使いましょう。糖度と酸味に気を付け、煮詰める温度に注意して上手に固めて美味しいパートドフリュイを作ってください。