2021年6月23日更新
【どう違う?】うなぎのタレ、天丼のタレ、焼き鳥のタレの違い
濃い調味料と言えば、うなぎのタレや天丼のタレ、焼き鳥のタレなどがありますが、それぞれのタレの違いをご存じですか。馴染み深いこれらのタレは、材料や味の違いはあるのでしょうか。じっくり味わってみるとタレの違いが分かるため、今回は日本の食卓に欠かせないタレにスポットを当ててご紹介していきます。
材料の違い
うなぎのタレの材料
うなぎのタレが手元にない場合、レシピを検索すると濃い口醤油やみりん、砂糖、酒などが材料に記載されています。
風味や味のみをうなぎのタレに近づける場合はこの調味料でももちろん問題ありませんが、より本格的なうなぎのタレを作りたい場合は、半助と呼ばれるうなぎの頭や骨を適量使用すると、エキスが染みたコクのある味わいを楽しめます。
つまり、うなぎのタレが他のタレと違う点は、うなぎの頭や骨を使う点にあります。うなぎの半助は、市販のうなぎ蒲焼きの頭と尻尾を切り落とし、炙って軽く焦がした状態のものを使用するのがベストです。
天丼のタレの材料
天丼のタレは好みによって使用する材料の量が左右しますが、基本的に鰹出汁、濃口醤油、みりん、砂糖などを使用します。
天丼のタレに使われる材料も煮詰めて作りますが、煮詰める時間が長くなるほどコクが出てくるため、どういった味に仕上げたいかによって調節してみましょう。
焼き鳥のタレの材料
最後に焼き鳥のタレですが、本格的なタレ作りとして使われる材料は濃口醤油、みりん、砂糖、鶏ガラ、ネギ、酒です。
ベースとなる調味料はうなぎのタレや天丼のタレと同じですが、焼き鳥のタレにはだし汁やうなぎの半助は入っていません。また、隠し味として焼き鳥のタレには鷹の爪などが入っていることもあります。
味の違い
うなぎのタレの味
タレにうなぎをつけて焼くと、油が落ちることでコクが出ます。うなぎのタレは醤油やみりんを使いますが、これらの調味料が合わさった状態でうなぎをつけて焼くと、アミノカルボニア反応を起こして食欲に直接刺激するような良い香りを放ち、褐色の焼き色があるメラノイジンを生成します。
※メラノイジンとは、味噌や醤油などの濃い色となる褐色成分のことで、メイラード反応によって作られる物質です。食品を加熱した際などに作られ、抗酸化作用や整腸効果があることで知られています。
天丼のタレの味
天丼のタレはだし汁が使われているため、和風の香りを感じやすく、エビやシシトウなどの具材を優しく包み込むような味わいをしています。
うなぎのタレとの違いが分かりにくいですが、うなぎのタレはうなぎのエキスが染み出た旨みのある味わいです。
人によっては濃すぎると感じることもありますが、天丼はエビや野菜を主役に引き立てる万人受けの味と表現できるでしょう。また、天丼のタレはだし汁を使うのに対し、うなぎのタレにはだし汁を入れない点も違いです。
焼き鳥のタレの味
焼き鳥のタレもうなぎのタレ同様に非常に濃いタレというイメージですが、味を比較してみるとうなぎのタレの方が少し甘く感じられます。
濃度(塩分)の違い
うなぎのタレの濃度
うなぎのタレは、少量でも身にタレがよく絡むほど濃く感じますよね。量によっては塩辛さを感じるほどです。そんなうなぎのタレは、業務用のもので塩分濃度8%程度になります。
天丼のタレの濃度
まろやかで濃い味わいの天丼のタレは、業務用のもので塩分濃度5%程度です。
焼き鳥のタレの濃度
うなぎのタレと同じくらい濃いように感じる焼き鳥のタレは、塩分濃度が5%程度になっています。意外なことに、天丼のタレとほぼ同じくらいの塩分濃度です。
タレの濃度で菌の繁殖は抑制できるのか
古くから続く老舗店では、よくうなぎのタレなどを継ぎ足しで作っていると見聞きしますが、何年、何百年と継ぎ足ししている場面を見ると、衛生面に問題はないのか心配になるのが一般的な感覚です。
タレと呼ばれる調味料には、塩分や糖分が含まれており、菌の繁殖がしづらい環境になっています。しかし、完全に菌の繁殖を抑える濃度には達していないため、低温殺菌と呼ばれる方法で菌の増殖を抑制しています。
焼いてすぐのうなぎや焼き鳥を手早くタレに浸けているシーンを度々見かけることがありますが、あの作業そのものが低温殺菌です。63~68℃程度の低い温度にするために、うなぎや焼き鳥を浸けることでタレの低温殺菌が行われています。
ちなみにタレの濃度で殺菌効果があるのは、塩分で10%、糖分で65%以上が目安となります。加熱すると菌の増殖は抑制できますが、タンパク質が変性してしまうため味が変わってしまいます。熱々の具をタレに入れることで、殺菌できる濃度に満たないタレでも長く使い続けていけるということですね。
うなぎのタレ・天丼のタレ・焼き鳥のタレを使い分けよう
日本の食卓に欠かせないとろっとした食感がおいしいタレについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。○○のタレといったように、限定的な使用目的にする理由は、その食品に最も合うからということですね。同じように見えて実は違う、うなぎのタレや天丼のタレ、焼き鳥のタレはしっかり使い分けておいしく味わってみましょう。