2017年11月7日更新
煎茶の効能。煎茶には面白い特徴があった!
和食の後はやはり緑茶でしめたいですよね。緑茶の中でも煎茶は日本の多くの家庭で愛飲されているお茶です。今回は今健康茶として注目されている煎茶の効能について調べました。何気に淹れていた煎茶にはこんな面白い特徴もありました。
煎茶の意味とは
煎茶は、ご存知のとおり日本茶の仲間です。緑茶の一種で日本ではもっとも一般的に飲まれているお茶です。読んで字のごとく茶葉を煎じて出したお茶という意味から「煎茶」と呼ばれています。現在の煎茶は綺麗な緑色をしたお茶ですが、昔は黒っぽい色をしたお茶でした。
大昔の煎茶は、春にチャノキから摘まれた葉を蒸す、もしくはゆでたあと、葉を乾燥させて作った色の黒っぽい茶葉でした。その葉を煮出したお茶だったので色が黒っぽいお茶だったのです。その後、現在の「永谷園」の創始者である永谷宗円が煎茶の新しい製法を発明し現在の緑色の煎茶が生まれたのです。
この製法は「青製煎茶製法」と呼ばれている製法です。それまで摘んだ葉を蒸すかゆでてから乾燥させて煎茶の茶葉を作っていた工程に、乾燥させる前に「揉む」という工程を加え茶葉の品質を向上させたものです。この製法により黒っぽい茶葉が綺麗な濃い緑色になりました。そしてこれが緑茶の製法の主流となり現代に伝承されたのです。
煎茶は今日のように急須などで簡単に淹れられるものではありませんでしたが、現在の山本山の創業者、山本嘉兵衛氏が宗円の発明した青製煎茶製法によって作られた煎茶を江戸で販売することに大成功したことで、急須でお茶を入れることが考えられ、それが現在の日本茶の入れ方の主流になりました。現在の煎茶文化のきっかけとなる話です。
煎茶の特徴
煎茶は摘んだ茶葉をすぐに蒸して発酵を止めて作られる不発酵茶の一種です。
茶葉の形は細くてまっすぐな針のような形で、深くて美しい緑色をしています。5月の初めにチャノキから摘まれる葉からできた一番茶(新茶)は特に鮮やかな色をしていて新鮮な香りが特徴です。
それに続いて摘まれる2番茶、3番茶も、渋味と煎茶特有の旨みのバランスを重視して作られます。一般的な煎茶の特徴は爽やかな香りとすっきりした味わい、そして水色は緑がかった金色透明色をしています。
蒸す時間によって味が変わる
蒸し時間 | 種類 | |
---|---|---|
薄い ↑ ↓ 濃い |
30秒以下 | 浅蒸し煎茶 |
30~40秒 | 中蒸し煎茶 | |
40~60秒 | 深蒸し煎茶 | |
90~120秒 | 特蒸し煎茶 | |
120秒以上 | 極蒸し煎茶 |
煎茶は製造工程で一番初めに行う「蒸す」過程において、その蒸し時間により味や香りに違いがあります。蒸し時間が短い「浅蒸し煎茶」は渋味を感じるすっきりしたさわやかな味わい、極一般的な煎茶は30~40秒ほど蒸したもので「中蒸し煎茶」と呼ばれ程よい渋さのすっきりした味わい、そしてそれに続き40~60秒ほど蒸す「深蒸し煎茶」、1分半~2分程度蒸らした「特蒸し煎茶」、蒸し時間が最も長い「極蒸し煎茶」があり、蒸し時間が長くなる程、深い緑色をしていてコクとまろやかさを存分に味わえます。
この蒸し時間は各メーカーによって多少違いがあります。煎茶の茶葉の形状はこの「蒸す」時間の短いものは細長い棒状をしていますが、蒸し時間が長くなる程細かくなり「極蒸し煎茶」の茶葉は粉のような形状をしています。製造工程の蒸らす過程での蒸らし時間によって味わいが違うお茶ができるのも煎茶の特徴です。
茶葉によって入れるお湯の温度を変える
煎茶の茶葉は5月の初めに摘まれた1番茶(新茶)と、それに続いて6~8月に摘まれる葉で作られた一般的に飲まれている2番茶、3番茶があります。1番茶は煎茶の中でも旬なもので上級茶として飲まれます。爽やかで清々しい味わいが特徴です。1番茶を美味しく入れるお湯の温度は70℃が一番茶の特徴を出す好ましい温度だと言われています。
一般的な煎茶として飲まれる2番茶、3番茶の特徴は程よい渋味と爽やかさですが、その特徴をうまく出して入れるにはお湯の温度が80~90℃であることが好ましいです。煎茶は茶葉の品質によって入れるお湯の温度が決め手となり、その茶葉の持つ特徴をより引き出すことができるお茶であることも煎茶の特徴です。
煎茶はほかの緑茶とどこが違う?
煎茶は緑茶の中で最もポピュラーに飲まれているお茶ですが、同じ不発酵茶の緑茶でもチャノキの葉の栽培方法が違ったり、茶葉の製造工程の違いで色々な種類の緑茶ができます。
それぞれの緑茶は緑茶の特徴的な成分であるビタミンCやカテキン、カフェイン、うま味成分であるテアニンの含有量にも違いがでるため、味や香り、水色もそれぞれに特徴をもち、それぞれの緑茶の味わい楽しむことができるのです。
緑茶の中で最もよく飲まれている煎茶のチャの葉の栽培方法と製造過程
不発酵茶である緑茶の代表的なお茶・煎茶の茶葉はチャノキから新芽がでて摘み取るまで太陽の光を存分に浴びて生育します。
4月下旬~5月上旬に最初の茶葉を摘んだ一番茶(新茶)、そのあとに続き6月~8月上旬にかけて二番茶、そして三番茶が摘まれます。
煎茶の製造工程
- チャの葉を人の手もしくは摘採機で摘み取り茶工場へ運ぶ
- 摘まれた生葉の酸化を止めるため蒸気で蒸す(釜炒り茶の場合は釜で入り蒸しする)
- 葉の表面の水分を取り除きながら冷やす
- 粗揉機で圧力をかけて揉みながら熱風で乾かす(粗揉という)
- 粗揉の不足を補いながらさらに圧力をかけて揉むがこの時は熱を加えないで揉む(揉捻という)
- 乾燥させる。
このような工程を経て煎茶が作られます。緑茶の製造工程はこの煎茶の製造過程が基本なって製造されています。
緑茶の中でも高級な玉露と煎茶の違いは?
高級茶として知られる玉露は煎茶と同じ製造工程で作られますが、使用するチャの葉の栽培方法が違い、煎茶とは違う味わいの緑茶が作られます。
玉露はチャノキの葉がまだ新芽の頃に茶園をヨシズや藁などで20日間ほど覆い(被覆するという)、葉に太陽の光を当てずに育てます。
こうして生育されたチャの葉を摘んで製造された玉露は同じ緑茶の仲間でも煎茶と味わいや香りの違うお茶になります。そして玉露の独特の美味しさを抽出するためにお湯の温度も煎茶より低温で抽出するのが玉露の特徴です。
茶葉の生育や摘み取る作業が煎茶よりも手間がかかるので、緑茶の中でも玉露は価格も高い高級茶と扱われているのです。
しかしながら価格が高いだけのことはあり味わいは贅沢な極みとも言われる味わいです。玉露と同じような栽培方法で育てたチャの葉を使った緑茶にかぶせ茶という緑茶もあります。かぶせ茶は玉露よりも被覆する期間が短く煎茶と玉露の中間的な緑茶です。
緑茶の仲間である芽茶、茎茶、粉茶と煎茶の違いは?
緑茶の仲間には芽茶、茎茶、粉茶などという種類もよく目にします。
芽茶は煎茶や玉露の製造工程で茶葉の柔らかい葉先の部分や小さい部分だけを取って作ったお茶で、茎茶は煎茶や玉露の製造工程で茎の部分だけを集めたお茶です。
お寿司屋さんに行くとでてくる粉茶は煎茶や玉露の製造工程で砕けた茶葉を集めた緑茶です。これらのお茶は煎茶や玉露の製造工程の途中でできた副産物であり派生茶といいます。
緑茶の中ではランクが低く見られ安い価格で売られていますが、もとは煎茶や玉露の茶葉なので、安くても美味しくお得な緑茶だと言われています。
抹茶も緑茶?
もちろん抹茶も緑茶の仲間です。
抹茶は、チャの葉の栽培方法は玉露と同じですが製造工程に揉む過程がなく蒸して乾燥させただけで作ったてん茶を石臼などで引いて作ったお茶です。
抹茶の原料であるてん茶自体がチャの葉の栽培の仕方や製造工程が煎茶と違うので、ビタミンCやカテキンなど含有されている成分量も煎茶と違い渋みや水色、香りなどに違いがあります。入れ方も特別な茶道具を使って入れるので、抹茶は煎茶と同じ緑茶といえども、また一味違う味わいの緑茶です。
こんな緑茶もあります!
日本の家庭に馴染みのある番茶や玄米茶も緑茶の仲間です。
番茶は2番茶以降に摘まれた葉で作られた緑茶です。また玄米茶は主に煎茶がベースとなっていますが、ベースとなる茶葉に玄米が1対1で加えられた香りのいい緑茶です。
ちなみにチャの葉は煎茶と同じように栽培された葉を使いますが、製造工程でチャの葉の発酵を止める際に釜で入り蒸しした釜炒り茶も緑茶の仲間です。煎茶とは茶葉の形も味わいも水色も香りも違うそんな緑茶もあります。
煎茶の効能について
近年、煎茶は健康茶として注目されています。煎茶はその栄養成分の効能により体に良い効果がたくさん期待されています。
煎茶にはこんな栄養成分が含まれています
煎茶の成分にはカテキン、ビタミン、ミネラル、カフェインが主に含まれています。ビタミンは特にビタミンCをたくさん含有しており、ミネラルにはフッ素が含有されているのが特徴的です。そして煎茶特有の成分であるカテキンは健康茶として注目される効能をたくさん持っています。
カテキンの効能
カテキンは発酵すると減少してしまうため紅茶や烏龍茶には含まれていません。煎茶は不発酵茶であるためカテキンを含有しています。そのカテキンには体に良い優れた効能があると色々な研究グループから発表されて、今、煎茶の持つカテキンの効能に注目が集まっています。
煎茶のもつカテキンの効能は目を見張るほどたくさんの効果に期待がよせられています。有害な細菌を抑制する抗菌作用は多くの研究チームからその成果が発表されています。例えば昭和大学医学部の研究グループはウイルスが細胞に感染するのを防御する成果を上げてインフルエンザへの感染を抑える効果があると発表しています。
ほかの研究グループは、カテキンは体内のDNA(デオキシリボ核酸)を傷つける有害な活性酸素を抑制する抗酸化作用あると発見しました。カテキンの抗酸化作用により肌や血管の老化を防止する効果が期待されています。カテキンの抗酸化作用の効能は色々な研究チームが動物実験、臨床試験、疫学調査からがん細胞の増殖をも抑制すると発表し、様々ながんの発生のリスクを減らす効果に期待がよせられています。
カテキンの効能は体内脂肪を燃やしてくれる作用もあります。ダイエットに効果的であるほか、生活習慣病の予防にもなると言われています。大阪大学医学部の研究チームは疫学調査によってカテキンは糖質を分解する酵素の働きを阻害し、血糖値の上昇を抑える効果があると発表しました。そのため生活習慣病の一つである糖尿病にも効果的だと言われます。
「お茶のカテキン配合」とうたわれた歯磨き粉や口臭予防のタブレットが最近販売されていますが、カテキンは口臭や虫歯予防にもなると言われます。口臭がするのは口の中にいる細菌が食べかすなどを分解して臭いを発するのですが、カテキンは口の中のこの細菌を殺菌してくれる働きがあります。このため口臭予防に効果的だと言われます。またカテキンはフッ素との相乗効果で虫歯予防にも効果が期待されています。
ビタミンCの効能
ビタミンCは、お茶の中でも煎茶にもっとも多く含まれています。ビタミンCは日光で生成されます。煎茶は日光を浴びて育ったチャノキの葉を使って作られるお茶です。そのためほかのお茶よりもたくさんビタミンCを含んでいるのです。ビタミンCは水溶性の成分なので茶葉に含まれるビタミンCはお茶の中にたくさん溶けだして煎茶を飲むことでたくさんビタミンCを摂ることができるのです。その量はなんとレモンの3~5倍に相当します。
煎茶にたくさん含まれているビタミンCは抗酸化作用があり、肌の老化を防ぎ美肌作りに効果的であったり、体の老化を防止してくれるため生活習慣病に効果があると言われます。またビタミンCは情緒を安定させる作用があるのでストレスを和らげ、疲労回復に効果があります。
健康茶と注目される煎茶の効能はやっぱりすごい!
健康茶として注目されている煎茶の効能は、煎茶特有の成分であるカテキンやビタミンCの効能から期待される効果がたくさんありました。煎茶のすっきりと爽やかな味わいを楽しみながら、その効果に期待して煎茶を美味しくいただきましょう。