2017年4月19日更新

てんさい糖の害について

自然で身体にやさしいお砂糖として知られる「てんさい糖」ですが、最近その害についての様々な情報が目につくようになりました。つい最近まで「身体に良い」とメディアで持ち上げられていた食品が、ある日を境に掌を返したように「身体に悪い」と糾弾されるというのは、消費者としては何を信じてよいのか不安になりますよね。そこで今回は、この「てんさい糖の害」について見ていきたいと思います。

自然でやさしい甘さの砂糖 てんさい糖とは?

  1. 目次
  2. 砂糖=悪という概念
  3. てんさい糖=健康効果のある食品という誤解
  4. てんさい糖に害がある!と言われる原因
  5. てんさい糖には農薬が使用されているのか?
  6. てんさい糖は遺伝子組み換え食品なのか?
  7. 本当に安全な「てんさい糖」はあるのか?

砂糖=悪という概念

砂糖は肥満の元凶、糖尿病を引き起こす、中毒性がある、精神的にキレやすくなる、薬品まみれ、栄養素が取れない、低血糖症になりやすい、カルシウム不足になる・・・などなど、特に白砂糖についての弊害を説く団体やムーブメントが盛んになっています。

しかしこれらは、人工甘味料を含む糖類があらゆる加工食品や飲料の中に含まれ、それらを過剰に摂取している現代の私達の無自覚な食生活に対する警告として、アメリカやヨーロッパから始まったもので、砂糖そのものの存在を否定するものではありません。

もともと砂糖という食品は、サトウキビや甜菜といった植物から抽出した自然由来の甘味料で、私たち人類が古来より利用してきたものです。本来の自然な風味やミネラル等の栄養分を残した黒砂糖や、メープルシロップ、ココナツパームシュガーなどはもちろん、精製された白砂糖であっても、嗜好品や食品としてではなく、調味料の一部として、本当に必要な時だけ適量を使用するのであれば、決して害を引き起こす悪ではありません。

肝心なのは、その使い方であって、その選択と責任は私たち消費者に委ねられているというのが現状です。

てんさい糖=健康効果のある食品という誤解

上記の様に、私達の不安をあおるような「砂糖=悪」といった情報が煽情的に語られると、それではどうすればよいのか?といった解決法が求められます。

そこで、ほぼ完璧な精製度を持つ白砂糖との比較対象として、「てんさい糖」や「きび砂糖」といった精製度合いの低い砂糖が、あたかも未精製で栄養満点の健康効果のある食品として登場するようになります。

たとえば今回のテーマである「てんさい糖」に関しては、下記のようなメリットが挙げられることが多いようです。

  • 身体を冷やす白砂糖とは違い、身体を温める効果があるので、冷え性が改善する
  • 精製されて栄養のない白砂糖とは違い、未精製で自然のままなので、ミネラルなどの栄養がたっぷり
  • 白砂糖とは違い、血糖値の上昇が緩やかなので、肥満防止やダイエットに効果的
  • 白砂糖とは違い、天然のオリゴ糖が含まれているので、腸内環境を整えて便秘解消に!

これらは確かに「てんさい糖」の特徴を取り上げていますが、あたかも素晴らしい健康効果があり、積極的に摂取したい食品として、過剰に誇張されています。

しかし実際は、「てんさい糖」は精製された砂糖であり、他の食品と比較すれば、カロリーは高く、栄養価は低く、GI値(血糖値の上がるスピード)の高い、摂り過ぎれば肥満や低血糖症などを引き起こす可能性の高い食品です。

誇張された健康効果の情報が安易に流布され、「てんさい糖」は自然で身体にやさしいお砂糖だというイメージが定着し、ひいては健康効果のある食品といった誤解を生みだしてしまったようです。

てんさい糖に害がある!と言われる原因

自然で身体にやさしい「てんさい糖」に害がある!と言われる原因は、下記の2点です。

  • 原料である甜菜の栽培には農薬が使われることが多い
  • 原料である甜菜が遺伝子組み換えの場合がある

身体に優しい自然な健康食品とうたわれていた「てんさい糖」だからこそ、この2点が許容できない大罪として問題視されてしまったようです。

しかし、私たちが普段口にする野菜のほとんどは農薬が使用されていますし、気軽に食べているスナック菓子の原料には多くの遺伝子組み換え食品が利用されています。

つまり、非常に厳密に原料から気を配らない限り、知らないうちに農薬をはじめとする化学物質や、遺伝子組み換えといった近代テクノロジーによって作られた人工的な食品によって、私達の食生活は成り立っているといっても過言ではないのが現状です。

これらをふまえると、「てんさい糖」だけが、農薬使用や遺伝子組み換えの可能性があり、健康に害を与える危険な食品である、と糾弾することもおかしな話です。

繰り返しになりますが、「てんさい糖には害がある」という問題には、「白砂糖=悪・人工・身体に悪いもの」に対して、「てんさい糖=善・自然・身体に良いもの」という誤った認識があったからこそ、過剰反応となってしまったのではないでしょうか?

てんさい糖には農薬が使用されているのか?

それでは「てんさい糖」の原料である甜菜の栽培には、本当に農薬が使用されているのでしょうか?

日本の「てんさい糖」のほとんどは、北海道で栽培される甜菜から作られます。もともと甜菜は寒さに強いため、寒冷地の作物として、緯度の高いヨーロッパなどが主な産地ですので、北海道はその中でも最南に位置し、害虫の被害に合う割合も高いそうです。そのため、北海道で栽培される甜菜のほとんどは、害虫予防のためにも農薬が使用されているようです。

どうしても無農薬にこだわりたい場合は、海外産のオーガニックてんさい糖が、自然食品のお店やインターネットで購入することができますが、若干価格は高めになります。

てんさい糖は遺伝子組み換え食品なのか?

次に気になるのが、てんさい糖は遺伝子組み換え食品なのかどうか?という点です。

実は日本では遺伝子組み換えされた甜菜の商用栽培が認められていませんので、日本産の甜菜が原料であれば安全です。

しかし海外産のてんさい糖については、遺伝子組み換えの甜菜が原料のものも存在します。さらに、原料が遺伝子組み換えの甜菜であっても、表示の義務がないため、それと気づかずに使用してしまう可能性があります。

特に海外産のオーガニックてんさい糖は、遺伝子組み換えによって害虫に強い甜菜を作り、それにより無農薬栽培を可能にしているケースが多い、という情報もあります。

本当に安全な「てんさい糖」はあるのか?

これまで見てきたように、日本産の「てんさい糖」は無農薬ではありませんが、遺伝子組み換えの心配はありません。無農薬の「てんさい糖」を求めるのであれば、海外産になりますが、その場合遺伝子組み換え品である可能性があります。

日本産・・・無農薬はない・遺伝子組み換えはない
海外産・・・無農薬もある・遺伝子組み換えもある

もちろん、できるだけ無農薬で、かつ遺伝子組み換えでもない、安全な「てんさい糖」を選びたい、と思う方も多いことでしょう。けれど、仮にそのような完全に安全な「てんさい糖」があったとしても、それを必要以上に摂取してしまえば、砂糖の弊害か生まれてきます。また一方で、普段何気なく食べている出来合いの惣菜や加工食品の方が、より多くの農薬や添加物などの化学物質を含み、遺伝子組み換え品の危険も高いのです。

そういった意味では、この「てんさい糖」だけに限らず、本当の意味での「安全」とはなにか?を改めて意識し、正しい知識を持って判断し、自分の責任で食品を選択する必要があるのかもしれません。