2017年11月15日更新

和三盆って何?特徴や原料、落雁との違い

お彼岸のお供え物によく使われる落雁(らくがん)という干菓子には、大きくてカラフルな中華的なものから、小さくて繊細な日本的なものまで、色々な種類があります。その中でも、高級和菓子として、小ぶりで美しい繊細な型押しがされた落雁には、和三盆という日本独自の高級な砂糖が使用されています。今回は、この和三盆についてご紹介します。

  1. 目次
  2. 和三盆の特徴
  3. 和三盆の特徴
  4. 和三盆の原料と製造法
  5. 和三盆と落雁の違い
  6. 和三盆は健康的な砂糖?
  7. 和三盆のカロリーや栄養成分について
  8. 和三盆の賞味期限と保存方法について

和三盆とは

和三盆とは日本の四国(徳島県や香川県)で作られている高級なお砂糖です。和菓子の干菓子の原料として使われます。和三盆は砂糖の原料のサトウキビの中でも四国原産の竹糖を呼ばれる種類を使い、伝統的な製造方法によって作られているお砂糖です。

竹糖を原料とした和三盆とは

和三盆の原料となる竹糖という種類のサトウキビは細黍(ほそきび)ともよばれ、イネ科シネンセ種に属した植物です。地元四国に古くから存在する在来種です。

竹糖から作られる和三盆は四国の東部(徳島県や香川県など)で伝統的に生産されるお砂糖です。

和三盆の味は、黒砂糖から雑味を少し取り除いたまろやかな甘い味わいで、独特の風味があります。見た目の色は淡い黄色をしていて粒子が細かく口どけの良さが特徴的です。くどくない甘さと後味が大変良いお砂糖なので、和菓子の高級材料と利用されます。

和三盆の伝統的な製法とは

そもそもお砂糖は江戸時時代にすでに利用されていた調味料です。その頃、砂糖の原料となるサトウキビは、九州南端から台湾の北東にかけて点在する島々や沖縄諸島、奄美諸島、宮古島列島、尖閣諸島など南西諸島に限られて栽培されていました。

また作られる砂糖も黒砂糖でした。その後、全国的にサトウキビの栽培が行われ、四国の徳島でも盛んに栽培がおこなわれて砂糖が作られたのですが、その頃の製法については確かな記述は残っていません。

現在の和三盆の製法が確立したのは1700年末の頃で、徳島から価値の高い特産物として全国に売られ、和菓子や極上のお菓子に使われました。

和三盆の伝統的な製法の工程は、秋の終わりに収穫した竹蜜の茎を絞って汁をとったあと、こすってきれいにした砂糖を麻の布に詰めて専用の「押し船」という箱の中に入れ、重石をかけて圧搾して黒糖蜜を抜くという作業を何回か繰り返して、約1週間乾燥する工程です。

和三盆の特徴

和三盆という名称

和三盆というと、なかなか手に入らない「高級なお砂糖」というイメージと、お茶うけにいただく「上品な和菓子」というイメージがあるかと思います。実はこの和三盆という名前は、お砂糖自体の名称でもあり、和三盆のみで作られた干菓子の名称でもあるのです。

和三盆

  1. 日本の四国で伝統的に作られる砂糖のこと
  2. 和三盆のみを固めた干菓子のこと

そして、この和三盆という言葉は、「盆の上で三度研ぐ(手で練る)」という伝統的な製法に由来しています。

和三盆の風味と食感

和三盆の特徴といえば、何といってもそのまろやかな風味と、ほろりとした口どけの良さです。風味は黒砂糖、食感は粉砂糖のようで、そのまま何も混ぜずに固めるだけで和菓子になってしまうのも納得です。

和三盆の原料と製造法

和三盆が他の砂糖と一線を画す要因としては、その原料と製造法の違いです。

グラニュー糖、上白糖、三温糖、黒砂糖といった一般的な砂糖の原料である熱帯地方のサトウキビとは別の種属の、四国地方原産の「竹糖」と呼ばれる細キビから和三盆が作られます

そして、一般的な砂糖の様に近代的な製糖法ではなく、伝統的な職人の手作業によって和三盆は作られます。このため非常に繊細な品質を持ち、かつ生産量にも限りがありますので、とても貴重な存在のお砂糖となります。

  • グラニュー糖・上白糖・黒砂糖・・・・熱帯地方の一般的なサトウキビが原料/近代的な製造法
  • 和三盆・・・四国産の竹糖が原料/伝統的な手作業の製造法

和三盆と落雁(らくがん)の違い

落雁(らくがん)という干菓子は、米や麦や豆などの粉と砂糖を混ぜ、型に押して乾燥させたもので、幅広い種類があります。粒子が細かく、まろやかな風味があり、そして口当たりの良い砂糖の和三盆は、この落雁の材料として重宝されますが、高価なため他の糖類で代用されることもあります。

一方、和三盆という干菓子は、砂糖の和三盆だけを型に押して固めたもので、他になにも加えられていません。そのため、非常に繊細で上質な、希少価値のある和菓子なのです。

  • 落雁・・・米・麦・豆などの粉と和三盆や黒砂糖などの糖類から作られる、型押しされた干菓子
  • 和三盆・・・和三盆のみから作られる、型押しされた干菓子

和三盆は健康的な砂糖?

和三盆は、その原料や製造法から、比較的ナチュラルで健康的な砂糖のイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?

砂糖の分類

サトウキビや甜菜などの植物から作られる砂糖は、その精製法によって「含蜜糖」と「分蜜糖」という2つの種類に分類されます。

「含蜜糖」は黒砂糖、メープルシュガー、パームシュガーなど、精製の際に糖蜜を分離させないため、ミネラルなどの成分が多く残り、独特の風味があります。

一方「分蜜糖」は、グラニュー糖、上白糖、てんさい糖など、精製の際に糖蜜を分離させ、ショ糖の純度を高くした砂糖です。和三盆は近代的な遠心分離機などを使ってはいませんが、伝統的な職人による「研ぎ」という手作業を介して糖蜜分を抜いていきますので、精製のプロセスとしては「分蜜糖」となります。
※注意・・・「含蜜糖」であるという解釈、どちらでもないという解釈もあります。

  • 含蜜糖・・・糖蜜を分離させず結晶化させた砂糖(黒砂糖、メープルシュガー、パームシュガー)
  • 分蜜糖・・・糖蜜を分離して精製する砂糖(グラニュー糖・上白糖・てんさい糖・和三盆

より自然な砂糖という観点からは、糖蜜を分離せず、元々の風味や栄養素を残した「含蜜糖」の方が、健康的ではあります。しかし、砂糖というのは栄養素を求める食品というよりは、少量を利用する調味料や嗜好品という位置づけですので、この点にあまり固執する必要はないかと思われます。

和三盆のカロリーや栄養成分について

和三盆は精製された砂糖で、ショ糖含有量も97%と高い純度を持ちます。しかし伝統的な手作業で作られるため、ミネラルなどの栄養素は白砂糖と比較すると若干残っていますが、含蜜糖である黒砂糖ほどではありません。

100gあたりの成分量およびカロリー
てんさい糖 和三盆 黒砂糖 上白糖
マグネシウム 0-0.3mg 17mg 31mg 微量
リン 0-0.3mg 13mg 31mg 微量
0-0.3mg 0.7mg 4.7mg 微量
亜鉛 0-0.1mg 0.2mg 0.5mg 0
カリウム 5-65mg 140mg 1100mg 2mg
カルシウム 0-1mg 27mg 240mg 1mg
ナトリウム 15-85mg 1mg 27mg 1mg
オリゴ糖 5g 0 0 0
カロリー 390Kcal 383Kcal 354Kcal 384Kcal

和三盆の賞味期限と保存方法について

砂糖は長期保存しても品質に変化がないため、JAS法によって「賞味期限を表示する必要のない食品」に定められています。

しかし和三盆は伝統的な手作業で精製された、非常に繊細な砂糖です。湿気に弱く、固まりやすいため、密封可能な容器に保存し、できるだけ早く使い切るようにしましょう。