2017年11月30日更新

ゲル化剤や安定剤として使われるペクチン…その効果や危険性は?

ペクチンは、身体にいい成分だという認識をもっている人が多いのではないでしょうか。
実際、ペクチンは食物繊維の一種であり、果実や野菜、海藻などに多く含まれている成分です。
しかし、このペクチンも、実は食品添加物としてもちいられることがあるのです。
一体、どのような目的で使われ、どんな効果があるのでしょうか。いろいろと調べてみました。

  1. 目次
  2. ペクチンとは
  3. ペクチンの効果・効能
  4. 食品添加物としてのペクチン
  5. ペクチンの危険性や毒性は?
  6. ペクチンは安全性の高い添加物

ペクチンとは

ペクチンとは、食物繊維(特殊な多糖類)の一つです。
ペクチンはリンゴジュースを製造する際に出る絞り粕や柑橘類の皮などから抽出される天然の食品添加物です。
ペクチンには水溶性のものと不溶性のものの二種類あり、前者は熟した果実から、後者は青い果実から抽出することができます。

ペクチンを多く含む食品

ペクチンは、りんご、オレンジ、レモンといった柑橘類にとくに多く含まれています。
そのほか、オクラやキャベツといった野菜や海藻などにも含まれますが、もっとも有名なものはりんごの皮から抽出されるアップルペクチンでしょう。

ペクチンの正体

ペクチンはゲル化剤であり、植物の細胞壁を作る成分としてセルロースなどの他の構成成分たちと合わさって植物細胞を繋げる役割を持っています。

ペクチンは食物繊維の一つですが、食品添加物という分類として液体をゼリー状に固定する役割や食品の形状を保つための維持的存在、そしてねばり気やとろみをつけるために役立てられています。食品で指すとジャムやアイス、フルーツソースなどにペクチンが使われています。

しかし、このペクチンという成分を果実から採取する際は果実が熟しすぎても熟さなさすぎても本来の効果を発揮することはできません。熟していない果実から採取されるペクチンはプロトペクチンという非常に長い繋がりを持つ性質となるため、水に溶かせず、食品の形状を保つことができなくなるのです。

反対に熟しすぎている果実から採取されるペクチンは果実の中に含まれるペクチンそのものが分解されて形を維持していない状態です。そのため、分解されたペクチンでもゲル化させる力を失ってしまいます。

そのため、食品に使用するペクチンは採取する果実の熟れ具合に十分配慮する必要があり、ペクチンがちょうど良いバランスを保っている状態の果実を選ぶことが重視されます。しかし、初めからペクチンの含有量が少ない果実から食品を製造する場合は食品の形状を維持するために市販されているペクチンを添加してとろみなどを補うこともあります。

ペクチンの効果・効能

ペクチンは健康にも美容にも良く、さまざまな効果・効能があります。

・コレステロールの吸収を抑え、コレステロール値を下げてくれます。コレステロール値が下がるわけですから、それにともなって動脈硬化や高血圧といった生活習慣病も予防できます。

・糖分の吸収を抑えてくれます。これにより血糖値の上昇も抑えられるので、糖尿病が予防できます。

・腸内に乳酸菌を増やしてくれます。乳酸菌は善玉菌ですから、これにより腸内環境が整えられ、便秘や下痢といった症状が改善されます。
それだけでなく、ペクチンは腸のぜん動運動を促進させますから、これによりデトックス効果が得られ、肌の調子も良くなります。
また、腸内環境が整えば栄養の吸収も良くなり、疲労回復や滋養強壮にもつながるでしょう。

食品添加物としてのペクチン

ペクチンには二種類ある

ペクチンは、DEというエステル化度(メチルエステル化の度合い、つまり、どれだけメチルエステル化しているか)によって大きく二種類に分けられます。
DEが50%以上のものをHMペクチン、と50%未満のものをLMペクチンといい、HとLはそれぞれHighとLowの頭文字です。
ちなみに、食品から抽出できるペクチンはHMペクチン。LMペクチンは、必要に応じて脱エステル処理をほどこして精製されます。

食品添加物としての使い方と効果や原理

ペクチンは増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料(こりょう)という食品添加物としてもちいられます。

ゲル化剤…ジャムやゼリーなどを固める。
安定剤…氷の感覚をなくし、アイスクリームなどの食感を良くする。
増粘剤…ジュースやソースにとろみをつける。

これには、HMペクチン、LMペクチン、それぞれの特性が利用されています。
HMペクチン…砂糖やクエン酸などの酸があるとゲル化する。
LMペクチン…カルシウムなどの2価イオンや乳があるとゲル化する。

食品添加物としてのペクチンはどう表記されているの?

ゲル化剤、増粘剤、安定剤などの糊料は、用途と合わせて物質名を記載することが定められています。
たとえば、増粘剤(ペクチン)など。
ただし、ほかの天然の多糖類と併用した場合は、「増粘多糖類」と表記すればいいことになっています。
ちなみに、天然の多糖類とは、でんぷんやグリコーゲンのことです。

ペクチンの危険性や毒性は?

ペクチンは現在のところ、合成で作り出すことはできません。
そのため、ペクチンを含む果物や野菜から抽出するしかなく、食品添加物の中では比較的安全性の高いものだといえるでしょう。

ペクチンの入っているジャムは避けるべき?

きちんとしたジャムを選ぶコツは、ペクチンの入っていないものを選ぶことだという人がいます。
しかしこれは、ペクチンが身体に悪いという意味ではありません。
本来ペクチンは果実に含まれているものですから、くだものでジャムを作ろうとした場合、理屈としては何も加える必要がありません。
ですが、ジャムを作る際には砂糖を入れますから、この糖分のぶん、どうしてもくだものの割合は下がります。そして割合のぶんだけ粘性も下がるのです。
そのため、食品添加物としてのペクチンが加えられるのですが、粘性を気にしなければ、このペクチンは必要のないもの。そういった意味で、きちんとしたジャムはペクチンが入っていないものだといわれるのです。

農薬にはじゅうぶん気を付けましょう

たとえペクチン自体には問題がなくても、主にくだものの皮から抽出される以上、気を付けたい部分もあります。
それが農薬。
極端に安い商品はコストをおさえるため、ペクチンを抽出するくだものも輸入くだものを使っている場合が多いです。
そして、輸入品には、果肉からも残留物が検出されるほどの農薬が使われている場合がほとんどですからじゅうぶん注意しましょう。

ペクチンは安全性の高い添加物

食物繊維としてのペクチンにはさまざまな健康、美容にいい効果がありますが、食品添加物としてのペクチンにはそれらの効果・効能はないといわれています。
しかし、それでも、なんらかの毒性が発生したり、危険性が生じたりするわけではありません。
できれば食品添加物は摂りたくないと考える人も多いでしょうが、ペクチンに関してはそう気にしなくても大丈夫そうです。