2018年1月16日更新

乳化剤とは?食品に含まれる乳化剤の役割

乳化O/W型
乳化とは、水と油が混ざり合った状態のことをいいます。本来、水と油は相性が悪く一緒にしても混ざり合うことはありません。
ところが水とも油ともなじみやすい物質である乳化剤を加えかき混ぜることにより牛乳のように濁り、水と油が分離しなくなるのです。

乳化には水に油が分散しているO/W型油に水が分散しているW/O型があります。

代表的なO/W型(水に油が分散している)の食品といえばマヨネーズです。マヨネーズは、水、食物油、酢(酢はほぼ水)、調味料に卵黄を加え激しくかき混ぜて作ります。

マヨネーズは卵黄に含まれるレシチンという物質が乳化剤として作用しています。このレシチンはとても体に良い物質で健康食品としても販売されています。

  1. 目次
  2. 食品添加物、乳化剤の役割(使用目的)
  3. 乳化剤の種類
  4. 乳化剤の成分や原料について
  5. 乳化剤の危険性

食品添加物、乳化剤の役割(使用目的)

水と油に相性が良い乳化剤は以下のような目的で使用されています。

乳化

前述したとおり水と油を混ぜる役割のために使用されます。混ぜる物質が液体の場合に乳化と言います。
例えば、マヨネーズ、マーガリン

分散

乳化と似ていますが水や油に溶けない固体の粒子が沈殿したりせず混ざり合った状態を作ります。
例えば、チョコレート

可溶化(溶けたように見せる)

一般的な乳化は溶かした物質が光の波長よりも大きいため白く濁った色になりますが、可溶化させることで溶けたように見せる(透明)ことができます。
溶けたように見せることができれば香料を飲み物などに添加することができます。

起泡(泡立てる)

泡立てることにより食品の使用用途が広がります。 
例えば、ホイップクリーム、アイスクリーム

消泡(泡を消す)

混ぜたときにできる泡を消すための役割。
例えば、豆腐、ジャム

離型・湿潤

食品を金型などから剝がれやすくする。ガムが歯にくっつかないようにする。
例えば、スポンジケーキ(離型)、ガム(湿潤)

品質改良

でんぷんが多い食品の品質改良、タンパク質が多い食品の品質改良。
例えば、パン。パンに乳化剤を使用することでしっとり感を出すことができます。無添加のパンは焼き立てから時間が経つとどんどん固くなっていきます。

乳化剤の種類

2016年10月現在、日本で食品添加物として認められている乳化剤は次のようなものがあります。

  • グリセリン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
  • ソルビタン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
  • ショ糖脂肪酸エステル(合成乳化剤)
  • ポリソルベート(合成乳化剤)
  • ステアロイル乳酸カルシウム(合成乳化剤)
  • リン酸塩類(チーズにのみ使用可)(合成乳化剤)
  • レシチン(天然乳化剤)
  • コレステロール(天然乳化剤)

乳化剤として認められているのは上記8種と書きましたが、実はこの8種だけではありません。これらの物質に他の物質を結びつけることでさらに細分化されさまざまな食品に使用されています。

チーズに使われている乳化剤

プロセスチーズ

チーズに使用できる乳化剤はピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、リン酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩など23種類の合成乳化剤が認められています。

これらは単純に乳を固めて熟成して作るナチュラルチーズではなく、複数のチーズやその他の材料(脱脂粉乳・牛乳・乳とは無関係な炭水化物・脂肪・タンパク質・香料など)を混ぜて作られるプロセスチーズを作る際に使われます。これらの材料は溶かして混ぜるだけではうまく混ざり合わないため、いわゆる「つなぎ」が必要です。このつなぎの役目をするのが乳化剤なのです。

【関連リンク】
プロセスチーズのすべて!~プロセスチーズはナチュラルチーズを溶かしてかためたもの~

チョコレートに使われている乳化剤

チョコレート

例として森永ミルクチョコレートの原材料は砂糖、カカオマス、植物油脂、全粉乳、ココアバター、ホエイパウダー、バターオイル、乳化剤(大豆由来)、香料です。これらは原材料中にある乳化剤(大豆由来)をつなぎとして使うことでうまく混ぜ合わさります。
大豆由来の乳化剤というのは大豆油の製造工程で分離され作られている物質でレシチンといいます。

チョコレートにはポリソルベートやグリセリン脂肪酸エステルの一種であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルなども使用されていることがあります。

【関連リンク】
ポリソルベートとは?毒性や安全性は?

パンに使われている乳化剤

パン

パンに使われている乳化剤の例として以下のようなものがあります。
・ショ糖脂肪酸エステル
・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(ショ糖脂肪酸エステル)
・グリセリン脂肪酸エステル
  ・モノグリセド(パンには乳化剤としての目的ではなく品質向上を目的として使用)
  ・ジアセチル酒石酸モノグリセド(パンの生地向上の目的で使用)
  ・コハク酸モノグリセド(パンの生地改良の目的で使用)
  ・ポリグリセリンエステル(ショートニングを作る際に添加されていることがある。その場合は原材料の中の原材料なので表示はない。)
  ・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(こちらもパンの原材料のマーガリンの原材料として使用されていることがあります。

【関連リンク】
ショ糖脂肪酸エステルって何?

麦茶に乳化剤が使用されている理由

麦茶

麦茶に限ったことではないですが缶やペットボトルなどの容器に入った飲み物には乳化剤が使用されていることがあります。前述したように乳化剤の使用目的には可溶化(溶けたように見せる)や消泡(泡を消す)、品質改良などさまざまです。

麦茶などの容器に入った飲み物はさまざまな環境下に置かれる可能性があります。工場を出荷された後トラックでゴトゴト揺られるかもしれません。熱々の倉庫や凍ってしまうような場所に保管されるかもしれません。はたまた賞味期限が切れるまで全く動かされない可能性もあります。

賞味期限とは「美味しく食べられる期限」です。販売されている食品は製造から賞味期限が切れるまでは安定した常に同じ味、見た目、食感等を保たなくてはいけません。

そのために乳化剤が使用される場合があります。賞味期限を短く設定すれば添加物に関する問題は解決しますが企業的にはなかなか難しいのかもしれません。

また飲料水には酸化防止剤が添加されていることがほとんどです。食べ物は酸化することで変色や劣化するためです。

化粧品(クレンジング)に乳化剤が使われる理由

食品とは離れてしまいますが同じ乳化剤に関することなのでご説明します。
一般的な化粧品の原材料は以下の通りだそうです。

化粧品原料の主なものは油脂・ロウ類をはじめとする油性原料、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色材類、香料などです。また、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、天然抽出物など

これを見ると油性原料と添加物なんですね。さらに添加物として界面活性剤が使用されています。界面活性剤=乳化剤なので恐らく油分と水分を安定して混ぜ合わせるために使用していると思います。

乳化剤と界面活性剤は同じ働きをするものですが使用用途によって呼び方が変わります。同じ物質でも食品に使用する場合は乳化剤、食品以外に使用する場合は界面活性剤と表記されます。

例えばポリソルベートという乳化剤をチョコレートに添加した場合の表記は乳化剤、化粧品に添加した場合の表記は界面活性剤となります。

話がそれましたがクレンジングに乳化剤(界面活性剤)が添加されている理由は、乳化剤が肌に塗った油分を活性化して落としてくれるためです。

大豆由来のレシチンという乳化剤

レシチンは昔から天然の乳化剤として食品添加物として利用されていました。レシチンはそもそも自然界の動植物の細胞の中にあるもので、その生体膜が主要構成成分なのです。たとえば卵黄が原料となるレシチンは卵黄レシチン、そして植物の大豆由来のレシチンは大豆レシチンと呼ばれています。レシチンの成分はリン脂肪酸で簡単にいうと脂肪が成分です。動物由来の卵黄レシチンはコレステロールを含有しますが、大豆由来のレシチンはコレステロールが含まれていません。

大豆レシチンは天然の乳化剤でチョコレート、マーガリン、ビスケット、ホイップクリーム、インスタントラーメンなどの原料となっています。乳化剤としてだけではなく、たとえば油がはね返るのを防いだり粘り気の度合いを低くする働きもあります。

乳化剤の成分や原料について

乳化剤は自然界に存在する天然の動植物などから得られる天然系と、化学的な手法によって元素や天然由来の物質の化合物を化学反応させて得た混合物などの合成系の成分から成り立っています。天然系の乳化剤にしても合成系の乳化剤にしても原料については、その乳化剤を商品として製造する各メーカーによって原料が選ばれており、とくに合成系の乳化剤の詳しい原料は一般の消費者には判断しきれないことがあります。

グリセリン脂肪酸エステルの成分と原料

グリセリン脂肪酸エステルは合成系の添加物です。古くから世界中で使われている代表的な乳化剤です。その成分はもともとの食品に含まれていたり、元素や天然由来の物質と化学反応させた化合物が成分になります。

そもそもは脂肪の仲間で、グリセリンと脂肪酸がエステル結合した合成物です。グリセリンの原料にはヤシの実の油やパーム油などの天然の植物から得たものと、石油を原料とした合成グリセリンがありますが、現在はほとんどが天然のものが使用されています。

アイスクリーム、パン、ケーキ、マーガリン、生クリームなどの原料に使われています。

ソルビタン脂肪酸エステルの成分と原料

日本で最も古くからある食品添加物であるソルビタン脂肪酸エステルも合成系の乳化剤です。成分はグルコースから得られた糖アルコールの一種であるソルビートと脂肪酸の化合物です。

グルコースの原料はもともと自然界にあるぶどう糖が発酵して得た甘味料や、大豆油や獣脂を分解したグリセリンなどが原料となります。乳飲料やアイスクリーム、清涼飲料水、チューイングガムの原料となります。乳化剤としてだけではなく豆腐の消泡や、パンやめん類などのでんぷん食品の改良などの目的で、豆腐やパンなどの原料に加えられています。

【関連リンク】
ソルビトール(ソルビット)とは。毒性や効果

ショ糖脂肪酸エステルの成分と原料

ショ糖脂肪酸の成分はサトウキビなどに含まれるショ糖が原料となり、それに食用の油脂を反応させて得られた脂肪酸との化合物です。ショ糖はサトウキビやてんさいなどを原料にして得ています。また油脂の原料は牛脂、豚脂、魚油、鯨油などの動物油や、ヤシ油やパーム油などの植物油が原料となります。ならば天然系の乳化剤と思われますが、ショ糖と脂肪酸を化学的な手法によって化学反応させて得た合成物がショ糖脂肪酸の成分であるため、天然物質を原料とした合成系の乳化剤となります。アイスクリーム、パン、ケーキ、マーガリン、ホイップクリームなどの原料になります。

ポリソルベートの成分と原料

ポリソルベートもまた合成系の乳化剤です。成分はソルビタン脂肪酸の化学反応で作られた化合物です。グルコースを還元することで作られる糖アルコールの一種のソルビトールに脂肪酸を反応させて生成されるソルビタン脂肪酸エステルに有機化合物を反応させて得たソルビタン脂肪酸の化合物が成分です。

糖アルコールの一種のソルビトールの原料はリンゴやナシ、ナナカマドなどに含まれている糖質を原料としています。水に油が分散しているO/W型の乳化剤です。ケーキ、サラダのドレッシング、チョコレートなどの原料になります。

乳化剤の危険性

乳化剤は一括表示が許されている食品添加物です。
一括表示とは、類似の性質、作用、効果をもつ複数の添加物を使用する場合一括(ひとまとめ)して表示してもよいということになっています。

ただし、一括表示は定められた用途以外の使用は認められません。乳化剤の一括表示が認められる場合の使用目的は、食品の乳化・起泡です。それなのに実際にはパンやスポンジケーキなどには品質保持が目的で使用され堂々と一括表示されています。

認可されている乳化剤は8種ですが、それぞれが別の物質と結びつくことで無数の乳化剤となり食品に添加されています。
なにがどれだけ結び付けられていても食品への表示は『乳化剤』でよいのです。

また近年、問題視されている食物アレルギーについての乳化剤の影響も消費者にとっては心配する点です。しかしながら現在のところ、とりわけ乳化剤が原因でアレルギーを起こしたという問題は起こっていません。ある研究チームは乳化剤の原料となる大豆油について動物を用いてアレルギー反応のテストをしたところ、乳化剤に含まれる大豆油ではアレルギー反応の心配はされないと報告されています。また厚生労働省の調べからは、乳化剤のステアロイル乳酸カルシウムの抗原性についてモルモットを使ってテストをした結果、皮膚反応などは観測できないと報告されています。

しかしながら、乳化剤のアレルギーに対する影響については、成分や原料がアレルゲンであるかどうか、また抗原性があるかどうかなど検討すべき部分もまだ多く残っており、症例や発症するかどうかの検証が今後の国の課題とされているところだそうです。

乳化剤のアレルギー表示について

食物アレルギーの予防は、個々が食品を摂取するときに自分の持つアレルゲンを摂取しないことが大切であることから、厚生労働省では、アレルギー物質を含む特定原材料を25品目指定して、これらの食品表示について指導をおこなっています。それは乳化剤をはじめとする食品添加物においても同様です。

乳化剤などの食品添加物の中に、厚生労働省が定めるアレルギー物質とされる特定原材料が含まれている場合は、それが消費者に判断できるように表示することが必要だとされているのです。たとえば「物質名(〇〇由来)」とか「一括名(〇〇由来)」とか「用途名(物質名:〇〇由来)」などと記載する必要があるとされていることは、たとえば乳化剤が一括表示であっても、食品のアレルギーの危険性に対しては少々安心する点でもあります。

乳化剤の危険性をまとめると、

  • 個々の物質を食品に添加した際の安全性の詳しい試験がされていない。
  • 不純物が含まれる割合が法令で定められていない。(品質が悪くても違法ではない)
  • 一括表示が認められている。

現状では乳化剤を食べる我々消費者には選択の余地がないということになります。

内容を追加して再送信(2018/1/16)