2017年1月20日更新
ポリソルベートとは?毒性や安全性は?
ポリソルベートはソルビタン脂肪酸エステルともいい、食品には乳化剤として使用されます。ポリソルベートは古くから食品添加物として使用されて、日本でも2008年に食品添加物として認可されました。
ポリソルベートとは
ポリソルベートは、糖アルコールであるソルビトール(ソルビット)を化学合成(長鎖脂肪酸をエステル反応)して作られるノニオン(非イオン)性界面活性剤です。
米国では1960年初めに、EUでは1995年にそれぞれ使用基準を定めた上で、その使用が認められている食品添加物で幅広く使用されています。
▽ソルビトールの参考記事はこちら
ソルビトール(ソルビット)とは。毒性や効果
ノニオン(非イオン)性界面活性剤とは
水に溶けたとき、イオン化しない親水基をもっている界面活性剤で、水の硬度や電解質の影響を受けにくく、他の全ての界面活性剤と併用できます。
この使いやすさと浸透性、乳化・分散性、洗浄性などの性能面での特徴が認められ、近年、非イオン界面活性剤の使用量の伸びは大きく、アニオン界面活性剤とならぶ主力界面活性剤になっています。非イオン界面活性剤は分子内の主要な結合の仕方により、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型およびその他に分類されます。
上記のように優れた浸透性、乳化・分散性などの特徴を持っているポリソルベートは、ノニオン(非イオン)性界面活性剤で、食品添加物以外に乳液や洗顔料などの化粧品や軟膏クリーム、注射剤、ドリンク剤など医薬品などさまざまな分野で使用されています。
また、ポリソルベートには4種類ありそれぞれ用途によって使用目的が異なります。
ポリソルベートの種類
ポリソルベートの種類は以下の4種類です。どれも基本のポリオキシエチレンソルビタンという物質に脂肪酸を結合させたものです。
このポリソルベートという乳化剤は水と相性が良くさまざまな食品に使用されています。
また、ポリソルベートの後に、20、60、65、80と数値が表記されていますが、これは数値が高くなるにつれて油に近い性質があり、低いほど水に近い性質になります。
ポリソルベート20
別名:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 20)
主としてラウリン酸を結合させた物質です。4種の中で一番に水によく溶けます。
ポリソルベート60
別名:モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 60)
主としてステアリン酸及びラウリン酸を結合させたものです。
ポリソルベート65
別名:トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 65)
主としてステアリン酸及びパルミチン酸を結合させたものです。他の3種に比べて油との相性がよく油によく溶けます。
ポリソルベート80
別名:オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)
主としてオレイン酸を結合させたものです。
使用用途
使用されている食品は、アイスクリーム、チョコレート、ドレッシング、ココア、インスタントラーメンの調味料、マヨネーズ、洋菓子、飴、野菜の漬物、チーズ、ショートニングなどです。
洋菓子の製造の際にショートニングを使用することにより滑らかさやしっとり感を出す場合がありますが、原材料表示ににはショートニングと記載されています。それは原材料の添加物のためです。
食品以外では薬用のクリームや化粧品などに使用されています。
また、ポリソルベートは、加熱等の処理をしなくても簡単に水と油を乳化することが出来るため、ポリソルベートを使用して化粧品手作りしている人もいます。
「手作り化粧品原料」として販売しているので誰で購入できます。
ポリソルベート20
作り方も非常に簡単で、水で流せるクレンジングオイルを作る場合には、化粧品用のオイル(オリーブオイル・ホホバオイルなど)にポリソルベートを加えて混ぜるだけなので数分でできてしまいます。
加える量は使用するポリソルベートの種類やお好みによって異なりますがオイルの量に対して20%~50%程度になります。また、香りを付けたい場合にはアロマオイルなどの精油を加えます。
毒性や安全性
ポリソルベート4種類に関し個々の化合物の安全性を示すデータはありません。日本で認可される際安全性に関し議論されており、染色体異常試験で陽性となり染色体に異常をきたす恐れがあるということです。
発がん物質と同時に動物に食べさせると胃がんの発症率が高まり、肉腫(筋肉や神経、骨などのがん)の発生の増加また悪性度の促進などが見れたそうです。
これはポリソルベート60での試験で他の3種についての記載はありませんが、規模の小さい試験なので問題にしなくてはよいという結論が出されました。
また、食品安全委員会(http://www.fsc.go.jp/)の食品健康影響評価で以下のような評価を行っています。
乳化剤である「ポリソルベート 20」、「同60」、「同65」及び「同80」(CAS番号:9005-64-5、9005-67-8、なし、9005-65-6)について、各種試験成績等を用いて食品健康影響評価を実施した。評価に供した試験成績は、反復投与毒性、遺伝毒性、発がん性、生殖発生毒性等である。
今回評価を行った 4 物質間に、体内動態及び有害影響について本質的な相違はみられないことから、これらをグループとして評価した。試験結果から、遺伝毒性、発がん性は認められなかった。反復投与毒性試験では、主な症状として下痢が認められた。Brubaker らの1 投与量によるラット神経発生毒性試験において、児動物の行動の変化が認められていることから、児の行動への影響を確認するための追加試験が行われ、7.5 vol%投与群で母体毒性が認められ、児動物に体重増加抑制及び条件回避反応試験で低回避率等が認められた。
以上のことから、ポリソルベート類の無毒性量(NOAEL)は、ラットを用いたポリソルベート60 の13 週間混餌投与試験において5%投与群にみられた下痢を根拠に1,000 mg/kg 体重/日と考えられることから、安全係数を100 とし、ポリソルベート類(ポリソルベート20、同60、同65 及び同80)の一日摂取許容量(ADI)をグループとして10 mg/kg 体重/日と設定した。
上記評価では、一日摂取許容量(ADI)「10 mg/kg 体重/日」であれば健康に影響を与えないとの評価をしています。
一日摂取許容量(ADI)は、人が生涯該当の物質を摂取し続けたとしても健康上問題なく安全である量で、「mg/kg/day」で表します。
このことから、ポリソルベートは科学的には一日摂取許容量(ADI)内であれば毒性がなく安全であるとみることができますが、事業者によっては「安全性を量的に判断できる科学的根拠はあるが、懸念すべき問題点がある物質」として使用制限添加物など独自に自主規制を行っているところもあります。
アメリカやEUで先に使用されてきた添加物なので日本でも使用を認めましょうといった安易な認可のようだとしたら安全性に不安が残ります。