2017年11月7日更新
お茶に含まれるタンニンとは?タンニンにはどんな効果があるの?
レストランでワインを注文すると「タンニンの渋味が特徴の…」なんて説明を受けたことありませんか?そうです。タンニンは飲み物や食べ物に含まれている渋味成分なのです。お茶の渋みの正体もこのタンニンなんですよ。そこで今回はお茶に含まれるタンニンについて調べました。
- 目次
- お茶に含まれるタンニンとは
- タンニンとカテキンの関係は?
- ほうじ茶、緑茶、コーヒー、紅茶、麦茶のタンニンの含有量の比較
- タンニンが少ないお茶と多いお茶の違いは
- タンニンの効果について
- お茶のタンニンの効果に期待しよう
お茶に含まれるタンニンとは
お茶に含まれるタンニンは植物の葉などに含まれているポリフェノールの総称のことです。タンニンは緑茶の渋み成分であり、緑茶になるチャノキの茶の葉の中に含まれています。タンニンを口に入れると強い渋味を感じるのは、タンニンが舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して変性させることで私たちは渋みを感じるのです。これを「収れん作用」と呼びますが、渋味は味覚というよりも、このタンパクの変性によって生じる口の中の痛みや触覚に近い感覚だと言われることもあります。そのため渋味のことを収れん味と呼ぶことがあります。
タンニンの名前の由来は「革をなめす」という英語の「tan」や「tanning」が語源です。そしてタンニンは水溶性化合物なので茶の葉に含まれているタンニンは湯や水によってお茶の液の中に溶け出します。タンニンはチャノキ以外の植物の中にも含まれ、その部位で異なる性質があり、その種類は150種類以上も存在すると言われています。
タンニンとカテキンの関係は?
緑茶の成分をみると渋み成分にタンニンと同様カテキンという言葉が登場してきます。カテキンも渋み成分であると言われています。ならば緑茶にはタンニンとカテキンという渋味成分があるのかというとそうではありません。カテキンとはタンニンの一種です。カテキンには様々な種類がありますがお茶に含まれるカテキンは「茶カテキン」というカテゴリーに区分されています。要するにカテキンというのはタンニンという大枠の中の一つでそしてそのタンニンはポリフェノールという大枠の中の一つであるわけです。
緑茶ではポリフェノールのほとんどがタンニンです。タンニンでも茶葉に含まれるタンニンはその85%以上が、カテキンに属する物質です。そのため「お茶の渋み成分」では混同して使われている場合があります。ポリフェノール、タンニン、カテキンは健康上よい効能を持ち合わせている成分なので、機能性成分とも言われています。医薬品ではないので必ずだれにでも同じ効果があるわけではありません。しかし健康に良い食品という形で毎日摂取することができる成分です。
ほうじ茶、緑茶、コーヒー、紅茶、麦茶のタンニンの含有量の比較
お茶の渋み成分であるタンニン。緑茶の渋みも紅茶の渋味もこのタンニンが素になっているわけですが、実際のお茶の中にはどのくらいのタンニンが含まれているのか調べました。下記のデータは「日本食品標準成分表 文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告2015年版(七訂)」を参考にした数値です。
<タンニンの含有量>
ほうじ茶…浸出液中のタンニンの含有量0.04g
(茶葉15g、お湯の温度90℃で650ml、蒸らし時間0.5分)
緑茶(一般的な煎茶)…浸出液中のタンニンの含有量0.07g
(茶葉10g、お湯の温度90℃で430ml蒸らし時間1分)
コーヒー(インスタント)…浸出液中のタンニンの含有量0.25g
(コーヒー粉末10g、熱湯150ml)
紅茶…浸出液中のタンニンの含有量0.1g
(茶葉5g、熱湯360ml、蒸らし時間1.5~4分)
麦茶…抽出法、麦茶50gに対してお湯1500ml、沸騰後5分放置したもののタンニンの含有量は食品成分表に表示するには微量であったため検出されなかった(0g)とされています。(「微量」とは最少記載量の1/10以上5/10未満のものを示しています)
タンニンが少ないお茶と多いお茶の違いは
チャノキの葉を摘んで作ったお茶には少なからずどのお茶にもタンニンは含まれています。緑茶も紅茶やウーロン茶も違う味わいのお茶ですが、実は同じチャノキの葉から作られているお茶で、チャノキの産地や栽培方法の違いによってそれぞれ特徴をもったお茶が作られます。製造工程の違いによっても種類の違うお茶になり、そのためタンニンの含有量も違うのです。
また生葉の成分はタンニンの含有量が多いのに、お茶を抽出する方法によって実際に飲むお茶に含まれているタンニンの量が少なくなってしまったり、逆に生葉の成分ではほかのお茶よりもタンニンの含有量が少ないのに実際お茶を飲むときはその抽出法によってタンニンの量が多くなるお茶もあります。
お茶のタンニンの量その1:緑茶について
たとえば緑茶は、チャの葉を摘み取る時期、チャの葉の栽培方法、お茶の抽出の仕方によってもタンニンが少ないお茶もあれば多いお茶もあります。
番茶は2番茶以降のチャの葉を摘んでお茶にしますが、2番茶以降の生葉は1番茶(新茶)よりタンニンの含有量が少ないので、1番茶を摘んで作る煎茶よりも番茶はタンニンの量が少ないです。
緑茶の中でも日常的に飲まれている煎茶は、チャノキを栽培するときに新芽から葉に日光をたくさん浴びせて育てます。お日様をよく浴びたチャの葉はたくさん光合成をおこない渋み成分であるタンニンを多く含むため煎茶の生葉のタンニンの含有量は緑茶の中では多いです。
しかし茶摘みする数週間前からチャノキを被覆して太陽を遮り光合成を抑制したチャの葉で作った玉露の生葉のタンニンの含有量は煎茶に比べると少ないです。ところがお茶として飲むと玉露はタンニンの多いお茶とされます。
そのわけは煎茶と玉露のお茶の飲み方に関係しているのです。
玉露の生葉は煎茶よりもタンニンの含有量は少ないですが、お茶を抽出するとき玉露はお湯の量が煎茶よりもとても少ない量で味わうためその分のタンニンの量が濃くなるのです。
お湯の量の違いから玉露はタンニンの量が多いお茶だと言われるのです。そのほか、煎茶よりも1回の茶葉の量が多いことやお湯を注いだ後の蒸らし時間が玉露の方が長いため、お茶に抽出されるタンニンの量が多くなり、ほかのお茶よりもタンニンの量が多いお茶だと言われるのです。
お茶とタンニンの量その2:紅茶について
紅茶は産地や種類によって味わいや水色などそれぞれ特徴が違います。それと同時に紅茶の茶葉に含まれているタンニンの含有量が違うため、一概にタンニンの多いお茶だとは言えません。
しかし一般的には紅茶の生葉にはたくさんタンニンが含まれているものが多く、生葉の製造工程で完全発酵させても紅茶の茶葉には煎茶と同じくらいのタンニンが含有されているものが多いといわれます。実際にお茶にして飲む場合はミルクティーにしたり、じっくり蒸らして味わう種類もあり、抽出されたお茶に含まれるタンニンの量については多い少ないと言い難いお茶です。
お茶とタンニンの量その3:その他のお茶について
日本の家庭に馴染みのある麦茶は、焙煎した大麦の種子を煎じたお茶なのでタンニンはほとんど含まれていません。
またハーブティーは薬草や香りの高い植物の草や花を乾燥させて抽出したお茶なので、原料によっては全くタンニンを含有されていないものもあれば多少含まれているものもあります。
中華料理では定番のウーロン茶は半発酵茶でありチャノキの葉を半発酵させるときに葉に含まれるタンニンが酸化されてしまいタンニンの含有量が少なくなります。
タンニンの少ないお茶と多いお茶をあげてみよう
実際に一般的にこんなお茶がタンニンの少ないお茶そして多いお茶とみられています。
<タンニンが少ないお茶>
- 麦茶(焙煎した大麦の種子を煎じたお茶)
- ハーブティー(マテ茶・南米のお茶、ルイボスティ・南アフリカのお茶はタンニンゼロ)
- ウーロン茶
- 緑茶
- ほうじ茶(焙煎した茶葉から抽出するのでタンニンは少ない)
- 番茶(タンニンの含有量が少ない2番茶以降の茶葉を使っているため)
- 玄米茶(茶葉と玄米が1対1なので茶葉が少ない分タンニンが少ない)
<タンニンが多いお茶>
- コーヒー
- ジャスミンティ(緑茶やウーロン茶などの茶葉に茉莉花の香りを付けたお茶)
- 紅茶(産地や種類によって異なるが一般的にタンニンが多い)
- 緑茶
- 玉露(生葉は煎茶よりタンニンが少ないが少量の湯で味わうため)
- 抹茶(原料となるてん茶は玉露と同じ栽培法であるが少量の湯で味わうため)
- 煎茶(太陽をたくさん浴びて光合成を盛んにした茶葉)
タンニンの効果について
近年、様々な研究チームによって、お茶に含まれているタンニンは健康に良い効能がありその効果に期待される報告がたくさんあげられています。そのため緑茶をはじめとするお茶は健康食品として注目されています。実際の研究報告などからみたタンニンの効果にはこんなことがあげられています。そして現在もまだタンニンについて研究し続けられている現状です。
抗菌効果
タンニンは体に有害となる細菌やウイルスなどを殺菌、解毒する作用があるとたくさんの研究チームから結果報告があげられています。コレラ菌、赤痢菌、チフス菌、呼吸器に感染する百日咳菌、肺炎マイコプラズマ、食中毒を起こす腸炎ビブリオ、サルモネラ、黄色ブドウ球菌などの抗菌効果があると発表されています。胃十二指腸潰瘍の原因菌とされるヘリコバクター・ピロリ、近年騒がれた腸管出血性大腸菌O157、さらに多くの抗生物質が効かないと言われるMRSA、ペニシリン耐性肺炎球菌などに対しても同様の効果を示すと言われています。
このためお茶のタンニンは食中毒の予防に効果的である言われたり、風邪やインフルエンザの予防にも効果が期待されています。インフルエンザンの感染に関しては試験管内実験だけでなく、動物実験や臨床実験でも、そのウイルスの感染を阻止することが明らかになり、そして抗体と同じようにウイルスの感染を阻止することが判明しています。風邪の予防に関してはお茶でうがいをすると効果があると言われますが、それはカテキンの殺菌作用で菌を殺し収斂作用で傷ついたノドの粘膜を保護するからだと言われています。
抗酸化作用
タンニンは活性酸素を抑制して抗酸化作用があると報告されています。活性酸素は体の機能を低下させて老化を促したり、生活習慣病の原因になるものです。しかし活性酸素は悪いことばかりをする物質ではありません。体内に侵入してきた細菌やウィルスを防御する役目もあります。ただし活性酸素が体内で多量に産生されると正常な細胞などを攻撃してしまうのです。
通常体内では活性酸素の発生を上手に調整してくれる物質があります。この物質を抗酸化物質といい、活性酸素を抑制する作用を抗酸化作用といいます。上手に体内でこの調整が行われればよいのですが、有害物質の多い環境では抗酸化物質の産生が追いつかないとか、また抗酸化作用も加齢とともに弱まってしまうため、抗酸化物質を多く含む食品を摂取する必要があり、近年お茶のカテキンにその作用があると研究報告が上がり注目を集めています。
抗酸化作用は体の様々な臓器や組織の老化防止に効果的に作用してくれると言われています。たとえば加齢によっておこる老人性白内障に効果的であるとか、肌の老化を防止しシミを消したりシワになりにくい効果があります。そのほか脳の老化防止にも効果的だと言われます。タンニンの抗酸化作用は血管の老化も予防するので動脈硬化や脳梗塞の予防にも効果的だと発表されています。
老化の原因には様々な化学物質や紫外線なども関係しています。そして化学物質や紫外線などは体細胞を傷つけることがあり、そのため老化だけではなく、様々な病気の原因、とくに細胞ががん化してしまう恐れもあると言われているのです。体細胞の損傷は、健康体では普通修復されていきますが、時には失敗したり損傷の程度が大きいと修復しきれないこともあります。
近年、タンニンは紫外線や化学物質による細胞の損傷とその修復に重要な役割を果たしていることが明らかになったとの研究結果が発表されました。また様々ながんに対して発がん性物質の生成を抑制することなど、動物実験や疫学データなどから多くの研究チームがその成果を発表しています。
腸内の悪玉菌を抑制する作用
腸内にはビフィズス菌のような善玉菌と、大腸菌・ウエルシュ菌などのような悪玉菌があります。二つのバランスが崩れ悪玉菌が増えると便秘や下痢を起こします。お茶に含まれるタンニンは、善玉菌を増やし、便秘の予防効果が期待されています。整腸作用のある食品には乳酸菌飲料・オリゴ糖・食物繊維などが挙げられますが、お茶のタンニンにも同様な効果が期待されています。
抗アレルギー作用
タンニンには優れた抗アレルギー作用があると言われます。ある研究チームの実験データによると、お茶10杯分のタンニンを摂取するとアレルギーを半分に抑えられたと報告されています。アレルギー反応が出ている時は体内にヒスタミンという物質が多く排出されるのですが、タンニンがヒスタミンの増加を抑制する働きがあるのでアレルギーの予防に効果的だと言われているのです。
お茶のタンニンの効果に期待しよう
お茶のタンニンには健康に良い効果がたくさん期待されています。そのことはたくさんの研究チームが研究報告をして裏付けしています。お茶は昔から健康に良い飲み物と言われていますが、それはタンニンの影響かもしれません。健康的にお茶を摂りいれ日頃からお茶を楽しみましょう。