2018年5月2日更新
ユキノシタを食べる。民間薬としての効能や効果も
子供の頃、虫に刺されるとユキノシタの葉の汁を傷に塗りつけられたことはありませんか?ユキノシタは昔からなんにでもよく効く民間薬として利用されてきましたが、実はこのユキノシタ、食べても美味しい野草なんですよ。今回はユキノシタを美味しく食べるにはどんな料理があるかリサーチしました。民間薬として使われてきたユキノシタの効果や効能も一緒にご紹介します。
ユキノシタとは
里や山の水がにじんでいるような湿った石垣や岩の間に自生するユキノシタ。ユキノシタ科ユキノシタ属の植物です。学名はsaxifraga stoloniferaと言います。英語ではStrawberry Geraniumと書きます。
葉は3cm~8cmくらいの円形をしていて、細かい毛のようなものがたくさん生えています。初夏のころになると茎が20cm~50cmくらいに延び、白い花を咲かせます。名前の由来は花の下側に長い花弁が2枚あり、それを見て「雪の舌」という意味合いからという説や、真っ白い花を雪にたとえて「雪の下」という説などがあります。
ユキノシタの使い方
近年はドラッグストアなどで手軽に応急処置の薬を購入することができますが、そんな時代ではなかった頃は、子供の怪我や病気などによく効く民間薬としてユキノシタの葉のしぼり汁や、葉や茎を乾燥させて煎じて飲ますなどとユキノシタを利用していました。
そのため昔は家の庭の湿った場所に、ユキノシタがよく植えられていたそうです。今も時々見かけることがあります。
今でもユキノシタの昔ながらの効果を知っている人は、熱がでたり風邪をひくと葉のしぼり汁を飲んだり、風邪のひき始めには葉や茎を乾燥させて煎じて飲み風邪の予防に使います。
切り傷ややけど、虫刺され、かぶれには葉のしぼり汁つけるなどということにも使われます。葉をあぶりやけどや腫ものの消炎に使うこともあります。
なんと子供がかかりやすい中耳炎や耳垂れにもこのユキノシタのしぼり汁が効果的に活躍することから、ユキノシタを「耳垂れ草」などとも呼ぶ人もいるそうです。
このようにユキノシタは葉や茎のしぼり汁や乾燥させたものなどを民間薬として使います。現在ではユキノシタの効能に着眼した化粧品メーカーなどが、美容液の成分にユキノシタを含んだ商品を製造したり、入浴剤の成分にユキノシタが利用されたりしています。
また花を乾燥させハーブティーにして飲用されることもあるようです。またユキノシタを食ベる目的で摘みとり、調理して料理として食卓に並べることもあるのです。
民間薬と漢方薬の違い
東洋医学で処方される漢方薬も草木などの薬用効果に期待された薬ですが、ユキノシタも薬用効果を怪我や病気の時に使うのであるなら、ユキノシタも漢方薬なの?と思ってしまうところですが、ユキノシタは漢方薬ではありません。漢方薬というのは製法や用法容量など薬物療法が決められている薬のことをいいます。
民間薬であるユキノシタは、我々の祖先が経験による効果を受け継ぎ伝えてきたものです。民間薬は薬用効果があっても、製法や対応疾患などが細かく決められていません。たとえばドクダミやゲンノショウコ、センブリなどもユキノシタと同じように民間薬として有名な野草です。
このようにユキノシタが薬として利用されてきた理由はユキノシタには抗菌作用のある精油成分が含まれているからのようです。
ユキノシタの効能と効果
古い時代の人の経験からその効果に期待されて民間薬として使われているユキノシタの効能や効果は、ユキノシタの成分の研究が進み、その効能や効果にさらに期待が寄せられ、軟膏の成分や化粧品、健康茶の成分に加えられて利用されています。
サプリメントでおなじみのわかさ生活の調べによると、ユキノシタに含まれる主な成分はカリウム、アルブチン、ポリフェノールの一種であるベルゲニンなどです。カリウムは体の中の余分な塩分を体外に出す利尿作用を促す効果があり、アルブミンはメラニン合成を抑制し美肌効果があると言われます。ポリフェノールのベルゲニンは抗菌、抗酸化作用に期待されます。
カリウム効果でむくみを改善!
ユキノシタには利尿作用のある硝酸カリウム、塩化カリウムなどのカリウムが含まれています。ユキノシタの葉を乾燥させてハーブティーにして飲むと利尿作用の効果に期待が持てると言われます。
葉や茎にはポリフェノールがいっぱい!
葉のしぼり汁にはポリフェノールの一種のベルゲニンがたくさん含まれています。ポリフェノールには抗菌作用や抗酸化作用があります。しぼり汁を切り傷ややけど、しもやけ、虫刺されの跡に塗ると回復への期待が持たれます。また抗菌作用から耳垂れ、中耳炎の回復効果に期待されます。しぼり汁や乾燥させた葉を煎じて飲むことで扁桃炎や咽頭炎、風邪の予防にも効果があると言われます。
美肌効果に期待!
ユキノシタにはメラニン合成を阻止するアルブチンという成分が含まれています。近年、海外のある研究チームによって、ユキノシタのエキスが紫外線のもたらす活性酸素による細胞の老化を修復増進する効果があると報告したことで、ユキノシタが肌のアンチエイジングや美白効果を目的とした化粧品の成分に使用されて、その効果に期待されています。
カンボジアからの報告ではたくさんの効果に期待あり!
日本貿易振興機構JETROに寄せられたカンボジアからの報告からは、ユキノシタの生もしくは乾燥させたものをお茶にする、乾燥したものを粉末にして水に混ぜて飲む、もしくは傷などの局部に塗って使用した結果、腸の感染症、肝炎、眼病、膿腫、炎症、皮膚感染、マラリア、発熱などを抑制できたということが報告されました。
経験的に伝授されてきた効果
民間薬として利用されてきたユキノシタは、その経験から小さな子供がひきつけを起こしたときは小さじ5杯ほどのユキノシタのしぼり汁が効くと紹介されています。(ただ小さじ5杯分の搾り汁を作るのは結構大変です。。)
また風邪にはユキノシタの葉20gに氷砂糖と生姜を1片加えて煎じて飲むと効くそうです。しかしこれは近年庭先にユキノシタをたくさん植えることもなく、ドラッグストアを活用する世代の人には、なかなか実行しづらい効能かもしれません。
ユキノシタをハーブティーに
民間薬としてその効能が伝えられてきたユキノシタは、花や葉、茎を乾燥させてハーブティーとして飲むことがあります。しぼり汁は青臭くて飲みづらくとも、ハーブティーなら飲みやすく簡単にユキノシタの効能にあやかれます。
ユキノシタを料理して食べる
子供の頃にユキノシタのしぼり汁を飲まされた経験のある人からは、独特な野草の青臭さや苦味を想像してユキノシタを食べることに抵抗があるかもしれません。しかし実際ユキノシタを食べた人からのユキノシタの料理の味の評価は、アクもクセもない山菜のような美味しさだと言われます。ユキノシタの代表的な料理は天ぷらです。その他おひたし、和え物、酢の物、汁の実、炒め物など、思いのほかメニューの幅の多い野草です。
天ぷら
天ぷらはユキノシタの定番料理です。天ぷらの時は柔らかな葉を使うのがおすすめです。衣を薄めにつけて、中温(150~170℃)で揚げるのがコツです。ちなみに中温とは衣を油の中に1滴たらしてみて、それがいったん下まで沈みそして徐々に浮いてくるのが中温の目安です。葉の裏だけにうすく衣をつけて揚げる「白雪揚げ」もおすすめです。
おひたし
ユキノシタのおひたしもおすすめ料理です。塩茹でにして茹で上がったら水にさらします。茹ですぎると、とろけてしまうので多少硬さが残る程度に茹で上げましょう。好みのだし汁をかけ召し上がってください。葉に生えている毛は、茹でたり揚げると全く気にならなくなります。
食べても美味しい民間薬の薬草!ユキノシタを上手に活用!
ユキノシタは食べても美味しい野草です。定番の料理は天ぷらですが、おひたしもおいしいようです。ぜひご賞味ください。民間薬として子供の怪我や病気の万能薬として活躍してきたユキノシタ。今では庭先にたくさん植えられて様子を見かけることも少なくなりましたが、成分の研究も進み、昔ながらの効果に期待されて、ハーブティー、化粧品の成分、健康茶の成分などに利用されています。ユキノシタの効果を上手に利用して、日常に活用してみてください。
【参考文献】
・日本貿易振興機構JETRO カンボジア有望産品調査 伝統医療や伝統料理に用いられるハーブ等素材 https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001349/Khmerherb.pdf
・あきた森づくり活動サポートセンター http://www.forest-akita.jp/data/sansai/19-daimongi/daimon.html
・わかさ生活 成分情報 > ユキノシタ http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/strawberry_geranium/
・養命酒 生薬ものしり事典 8 耳と縁の深い薬草「ユキノシタ」 https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/crudem/130426/