2017年2月1日更新
マスタードの栄養と効能
ホットドッグやサンドウィッチなどに欠かせないマスタードは、私達にとって身近な存在ですが、食品というよりは調味料としての位置づけで、その栄養価についてはあまり意識されないようです。そこで今回はこのマスタードの知られざる栄養や効能、そして種類や使い方について、詳しくご説明します。
マスタードって何だろう?
日本ではマスタードのことを「洋からし」とも呼び、辛子蓮根やおでんに使うピリ辛の「和からし」と区別していますが、今回ご説明するのは「洋からし」のマスタードについてです。「洋からし」と「和からし」の違いについては別途の記事をご参照ください。
ケチャップやマヨネーズとは違うの?
マスタードといえば、ケチャップやマヨネーズ、中濃ソースといった調味料というイメージが強く、野菜や香辛料といった色々な原料が入った加工品と思われがちです。しかし実際のところマスタードは、マスタードシードというアブラナ科の植物の種をペースト状にしたもので、風味をつけるためにワインやお酢などが多少加わる程度の、比較的加工の少ない食品なのです。
マスタードの原料はマスタードシード
一口にマスタードと言っても色々な種類がありますが、基本的にはアブラナ科の植物の種であるマスタードシードから作られます。このマスタードシードの元となる植物には3種類あり、マスタードの種類によって使い分けられています。
アブラナ科
1.シロガラシ属 シロガラシ(英名:ホワイトマスタード)
2.アブラナ属 カラシナ(英名:ブラウンマスタード、オリエンタルマスタード)
3.アブラナ属 クロガラシ(英名:ブラックマスタード)
ホットドッグなどに使うマイルドな風味のイエローマスタードは、辛みの少ない1のシロガラシの種を原料に、水、酢、糖類などを加えて作られています。ツンとくる辛みが特徴の和からしは2のカラシナの種が原料です。3のクロガラシの種はディジョンマスタードや一部の粒マスタードに使用されます。
マスタードには沢山の種類がある
マスタードと呼ばれる調味料には沢山の種類がありますが、その中でも日本でよく使われる代表的なものは下記のとおりです。
イエローマスタード
ホットドックに欠かせない鮮やかな黄色のマスタードといえば、このイエローマスタードです。辛みの少ないシロガラシの種を原料に、水、酢、糖類などが加えられ、ターメリックで黄色く着色されています。味はマイルドで辛みは強くありません。フレンチマスタードやアメリカンマスタードとも呼ばれます。
ディジョンマスタード
フランスのブルゴーニュ地方で作られる伝統的なマスタードです。カラシナまたはクロガラシの種を、現地で作られる白ワインと白ワインビネガーに漬けこみ、皮をむいてまろやかに仕上げた、風味豊かなクリーム状のマスタードです。砂糖などの余分な調味料が入りませんので自然な味わいが楽しめます。
イングリッシュマスタード
主にカラシナの種の粉末を水で溶いてペースト状にしたマスタード。日本の「和からし」のように、強い辛みが特徴です。
粒マスタード
シロガラシ、カラシナ、クロガラシの種を酢やワインに漬けこみ発酵させ、粗挽きにして粒々が残った状態のマスタードです。マスタードシードは潰さない限り強い辛みが出ませんので、ワイルドな見た目に反して、刺激的な辛さはありません。マスタードシートの自然な風味と、プチプチとした粒の食感が楽しめます。
他にも、イエローマスタードまたは粒マスタードに蜂蜜を加えたハニーマスタードなど、色々なハーブやスパイス、野菜や調味料などを加えた多くのバリエーションが世界中にあります。
栄養価の高いマスタードの成分と、その効能・効果
マスタードの成分
マスタードの原料となるマスタードシートは、カルシウム、マグネシウム、リン、カリウム、セレンなどのミネラルが特に豊富です。また、ビタミンAやビタミンB複合体も多く含みます。またグルコシノレート(カラシ油配糖体)を多く含み、この物質はマスタードシートを挽く・潰すなどして細胞が損傷される際にアリルイソチオシアネート(イソチオシアン酸アリル、アリルカラシ油とも呼ばれます)という非常に優れた効能を持つ天然成分を発生させます。
優れた殺菌力、防虫効果、食欲促進
マスタードシードを挽いたり潰したりすると発生するアリルイソチオシアネートはワサビや大根にも含まれ、その優れた殺菌力は食物の腐敗や老化を防ぎ、食中毒などを予防し、防虫にも効果があります。また食欲促進や消化を助ける働きもありますので、ワサビや大根おろしと同様に肉や魚に付けて食べることで、腐敗や食中毒から守り、食欲を促し、さらに消化も助けてくれるのです。まさに昔からの食べ合わせの知恵ですね。
注目の抗ガン作用を持つ成分
前述したアリルイソチオシアネートはイソチオシアネートというグループに属し、この成分は抗ガン作用があるとして最近注目を集めています。2004年には世界保健機関(WHO)傘下のIARC(国際ガン研究機関)がイソチオシアネートの抗ガン作用研究結果をまとめ、この成分を多く含むアブラナ科野菜の摂取を奨励しています。これはもちろん「マスタードに抗ガン効果がある!」と短絡的に謳うものではなく、科学的に抗ガン作用が認められた成分をマスタードは多く含んでいますよ、という認識を促すものです。
アンチエイジング効果をもたらす抗酸化作用
マスタードには、老化原因となる活性酵素(体内の錆び)を抑制する抗酸化作用もあり、動脈硬化や高脂血症を予防し、免疫機能が改善され、より若々しく全般的な健康が底上げされます。
炎症を鎮める
マスタードに多く含まれるセレンやマグネシウムには抗炎症作用があり、喘息やリウマチを鎮め、血圧を安定させ、偏頭痛や更年期の不眠などに効果があります。またマスタードの精油成分は皮膚炎に有効であるとの報告もあります。
マスタードの美味しい使い方
ホッドドッグやサンドウィッチに使うのはもちろんですが、マスタードには他にも色々な美味しい使い方があります。
サラダドレッシングに
手作りドレッシングにマスタードを加えるだけで、キレのよい風味が加わり新鮮な美味しさが生まれます。
シンプルなドレッシング
オイル・お酢・塩・胡椒で作るシンプルなドレッシングにディジョンマスタードを加えて、ほんのりとしたマスタードの風味を味わいましょう
ハニーマスタードドレッシング
粒マスタードとはちみつをメインに、オイルとお酢(またはレモン汁)、塩・胡椒で味付けをしたハニーマスタードドレッシングは、どんなサラダにも合う美味しさです。
野菜のあえものやマリネなどに
人参のマリネ(キャロットラペ)や、ポテトサラダ、ブロッコリーや小松菜などのあえ物に、味のまろやかなイエローマスタードやディジョンマスタードを加えてみると、意外とクリーミな味わい深さが広がります。また、粒マスタードでプチプチとした食感を楽しむのも新鮮です。
肉料理、魚料理の味付けとして
ローストの下味
肉や魚をローストする時の下味として、塩や胡椒、ハーブやニンニクなどと一緒にマスタードを加えてみましょう。粒マスタード、イエローマスタード、ディジョンマスタード、どのマスタードを使っても美味しくいただけます。
炒め物の調味料
肉や魚や野菜の炒め物を作る際の調味料としても、マスタードは大活躍です。調理の段階で加えるため味が調和され、思ったほど風味が際立たず、よい隠し味となります。
他にもいろいろとマスタードで風味アップ!
クリームチーズや、サワークリーム、マヨネーズやアボカドディップなどにマスタードを混ぜるだけで、簡単に風味がアップします。またオランダにはマスタードスープという料理があるのですが、ちょっと真似をしてクリームスープなどに加えてみても美味しそうです。
栄養価の高い食品としてのマスタード
いかがでしたか?身近な調味料のマスタードですが、実は栄養価の高い植物から作られる食品だったのですね。お店で売られているマスタードには色々な種類があり、それぞれ原料や添加物、製造法などが異なりますが、できたら添加物が沢山入った加工品としてのマスタードよりも、添加物が少なく栄養価の高い食品としてのマスタードを使用していきたいですね。