2017年3月7日更新
イーストフードの危険性とは
パンの原材料名に、イーストフードと書かれていることがあるのはご存知でしょうか。
パンを作るためにはイースト菌を使うというのもよく聞きますから、このイーストフードというのがそれだと思っている人も多いかもしれませんね。
ですが、イースト菌とイーストフードは、実は別物。
では、このイーストフードとは一体何なのでしょうか。どういった目的で使用され、そして私たちの身体にとって毒性はないのか、気になるところを調べてみました。
イーストフードとは
イーストフードって何?
イーストフードとは、食品添加物の一つ。生地改良剤と呼ばれることもあります。
パンは小麦粉を発酵させて作りますが、その際、イーストフードを入れるとイースト菌(パン酵母)が活発になり、短時間で大量のパンを作ることができるのです。
つまり、イーストフードとは、イースト菌(パン酵母)の栄養源です。
イーストフードの種類
イーストフードとは、特定の何かを指すわけではなく、イースト菌(パン酵母)を活発にさせるはたらきをもった物質の総称です。
現在のところ、以下の16種類の物質が食品添加物としてイーストフードに指定されています。
- 塩化アンモニウム(合成添加物)
- 塩化マグネシウム(合成添加物)
- 炭酸アンモニウム(合成添加物)
- 炭酸カリウム(合成添加物)
- 炭酸カルシウム(合成添加物)
- 硫酸アンモニウム(合成添加物)
- 硫酸カルシウム(合成添加物)
- 硫酸マグネシウム(合成添加物)
- リン酸三カルシウム(合成添加物)
- リン酸水素二アンモニウム(合成添加物)
- リン酸二水素アンモニウム(合成添加物)
- リン酸一水素カルシウム(合成添加物)
- リン酸二水素カルシウム(合成添加物)
- グルコン酸カリウム(合成添加物)
- グルコン酸ナトリウム(合成添加物)
- 焼成カルシウム(天然添加物)
焼成カルシウムを除くすべてが化学合成によって作られる合成添加物です。しかし、焼成カルシウムも天然のカルシウムを高温処理して別の物質に変化させているわけですから合成添加物といってよいかもしれません。
イーストフードは一括表示が認められている
どのイーストフードを使用するかはメーカーによって異なりますが、大抵の場合、16種類のうち4~5種類の物質が使われているようです。
しかし、イーストフードは一括表示が認められており、原材料名にどの物質を使ったのかを記載する義務はありません。「イーストフード」と書けばそれでいいのです。
ちなみに、一種類しか使っていない場合は、イーストフードと記載できません。
そのため、イーストフードと書かれていれば、その時点で二種類以上の物質が入っているということになります。
一括表示の問題点
一括表示が認められていると、そのほかの目的で使った成分があっても記載されないという問題があります。
たとえば、保存料として使われた物質があったとしても、その物質がイーストフードに指定されていたとしたら、そのほかのものと一まとめにしてイーストフードとのみ記載されてしまうのです。
そうすると、原材料名に保存料の文字はなくなります。
イーストフードを使うメリット
イーストフードを使う目的はコスパです。
イーストフードを使うと短時間で大量のパンが生産できますし、見た目もふっくらしていてとてもきれいです。
それなのに、使用する小麦粉はイーストフードを使わないものと比べて7割ほどですむのです。
イーストフードと乳化剤
乳化剤とは
乳化剤とは、パンを作る際にイーストフードとともにもちいられる食品添加物です。
その名のとおり、乳化をうながすために使われる食品添加物で、そのままでは混ざりにくい物質同士をなじませるために利用されます。
乳化剤も一括表示が認められている
乳化剤も、イーストフードと同じように一括表示が認められている食品添加物です。
食品に乳化剤として使用されているものには次のようなものがあります。
- グリセリン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ショ糖脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ソルビタン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ポリソルベート(合成乳化剤)
- ステアロイル乳酸カルシウム(合成乳化剤)
- レシチン(天然乳化剤)
イーストフードの危険性と毒性
専門家の意見はさまざま
そもそもイーストフードが安全なのか危険なのかについては、専門家の意見も真っ二つにわかれています。
イーストフードが安全だとする意見は、専門家が試験を重ねた上で問題ないと確認できた物質しか食品添加物として認められていないこと、生涯摂取しても大丈夫な量しか使われていないこと、体内に入っても安全な物質に変化するかすぐに排出されること、など。
反対に、危険とする意見は、個々の安全性は確認されていても、イーストフードは複数組み合わせて使われる場合が多いため、物質同士が組み合わさったときの反応がわからないというものです。
塩化アンモニウムに注意
イーストフードに指定されている物質の一つに、塩化アンモニウムがあります。
この物質は通常化学肥料に使われているもの。大量に摂取すると嘔吐や昏睡を起こす危険性があるとされており、犬の場合、6~8gの摂取で死に至ることが確認されています。
リン酸塩類に注意
イーストフードにいくつか指定されているリン酸化合物ですが、これらは骨粗しょう症や心筋梗塞につながるおそれがあるといわれています。
イーストフードとあわせて使われる臭素酸カリウム
イーストフードを使うと、効率よくふっくらとしたパンが焼きあがります。
しかし、そのためにはイーストフードとともにビタミンCなどの酸化防止剤や酵素剤、もしくは臭素酸カリウムを使う場合があります。
前者の場合は問題ないのですが、後者の臭素酸カリウムには問題があり、危険性、毒性が指摘されています。
実際、臭素酸カリウムは国際ガン研究機関(IARC)において発がん性が認められる物質であるとされており、国際連合食糧農業機関・世界保健機関合同食品添加物専門会員会(JECFA)でも遺伝子障害性発ガン性物質に指定されています。
それを受け、EU諸国やカナダ、ナイジェリア、ブラジル、ペルー、スリランカ、中国など多数の国で使用禁止になっているのですが、日本ではパンの製造に限り、残留しないことを条件に使用が認められているのです。
イーストフードは賛否がわかれても、こちらの臭素酸カリウムは可能な限り避けたいところですね。
赤ちゃんが食べても大丈夫?
パンといえば、赤ちゃんの離乳食にする人も多いと思います。
イーストフードは、もちろん赤ちゃんが食べても大丈夫なように、量などの基準がもうけられていますが、できれば避けたほうがいいでしょう。
理由はもちろん、イーストフードが一括表示出来ること、その中には塩化アンモニウムなどの避けたい物質が含まれているかもしれないからです。
絶対に与えてはいけない、と神経質になる必要はありませんが、回避できる機会は回避しておいたほうがいいのではないでしょうか。
イーストフードと乳化剤を使ったパンの製造法
パンの製造方法の代表として以下の2種類をご紹介します。
ストレート法
ストレート法は、全材料を一度にミキシングして生地を作る製法です。(特殊な配合は除く)
小麦粉に砂糖、食塩、脱脂粉乳、ショートニング、乳化剤、イースト(パン酵母)、水などを一度に混ぜ合わせて生地を作り発酵を経て焼成して作ります。
このストレート法の場合はイーストフードは必要ありません。
この製法は少量生産に向いていて、ホームベーカリーにも採用されています。輸送の必要が無く焼き立てを食べきるのであればイーストフードだけではなく乳化剤も必要ありません。
ただしショートニングに関して一つ注意点があります。ショートニングにはトランス脂肪酸の問題があるため家庭で作る場合はトランス脂肪酸が入っていないものを選ぶようにしましょう。
ショートニングの代わりにパーム油や米油などを使えばトランス脂肪酸は少なくなります。
ストレート法は日持ちしないという欠点がありますが家庭で作るときは問題ありませんよね。
中種法
中種法は、小麦粉にイースト、イーストフード、水を加え中種という生地を作り発酵させたあとミキサーに移します。
そこに小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング、脱脂粉乳、水などとそのほかの添加物(乳化剤など)を加えて焼成して作ります。
中種法の特徴として、機械による生産に合っていて大量生産に向いています。また、日持ちするといった特徴もあります。
効率よくたくさん作るためにはイーストフードと乳化剤が必要でしたが、現在はイーストフードと乳化剤がなくても大量生産できる製法も考えられていますが少しだけお高めです。
イーストフードを使わなくてもパンはできる
パンを作る際に、イーストフードも、乳化剤も、必ずしも入れなくてはならないものではありません。
実際、両方とも不使用なものはたくさんあります。
少しの価格差で安心、安全が手に入るのなら、できればイーストフードも乳化剤も使われていないものを選びたいものですね。
・超熟のヒミツ:イーストフード・乳化剤不使用(敷島製パン株式会社)