2017年12月22日更新

ラードの健康への影響や使い方

ラード

健康に良い油といえば植物性のイメージがありますが、動物性では健康にどのような影響をもたらすのでしょうか。今回は動物性油脂の中でも比較的食べる機会の多いラードについての紹介です。

  1. 目次
  2. ラードとは
  3. ラードの健康への影響
  4. ラードが余ったときの保存方法
  5. ラードの上手な使い方とは

ラードとは

ラードは主に豚の脂のことをいいます。家庭で使う機会がなくても、業務用として外食メニューによく使われているため、食べていることが多い脂でもあります。

ラードの原料

主に豚の背中の部分の脂からなります。ちなみに油は常温で液体のものを指しますので、みなさんご存知の白く固まったラードは脂となります。

豚脂の不純物を取り除いて、練り合わせながら冷やし固まらせ、香料を添加した純正ラードと、パーム油などを加えた調整ラードの2つがあり、売り場などで目にするもののほとんどは純正ラードです。

ラードと牛脂の違い

ラードの他によく使われる動物性油脂といえば牛脂ですね。
牛脂は主に牛の腎臓周囲につく脂であり、ケンネ脂とも呼ばれます。そしてケンネ脂を溶かして液状の油分を抽出したものがヘットです。
ラードは固形のみであるのに対し、牛脂からは油がとれるという点が、まず大きな違いです。

また、料理の際に重要となる融点ですが、ラードが33~46℃牛脂は40~50℃とやや高めです。肉特有の臭いの問題もありますが、溶けにくさから牛脂は主に温かい肉料理に使われ、ラードは料理以外にパンなどにも使われます。

他には、賞味期限に差があります。ラードは3ヶ月ほどですが、牛脂は日持ちしにくく1ヶ月ほどしかありません。
これらから、加工食品にはラードの方が多く使われていることが分かります。
栄養面ではビタミンA、E、Kのほか、脂質にはオレイン酸やイコサトリエン酸を多く含みます。
カロリーについては後述しますが、植物油よりやや高めでラードとほぼ同じです。

ラードの健康への影響

余分な脂肪と結びついて排出してくれるココナッツオイルや、アンチエイジング効果のあるオリーブオイルが注目されていますが、ラードにもたくさんの優れた効果があります。

ラードの栄養成分やカロリーは

100gあたりの主な成分は脂質であり、他は以下のとおりです。

  • 糖類 0.2g
  • ビタミンA 27μg
  • ビタミンB1 0.02mg
  • ビタミンB2 0.03mg
  • ビタミンE 5.12mg

他に不飽和脂肪酸であるオレイン酸を含みます。

ラードには植物油にはない独特の香りがあり、この香りが料理をさらに美味しくさせる要素です。特に大根や春雨、大豆製品などのあっさりした食材と合わせると調味料だけでは得られない味わい(旨味)を生み出します。

脂質のうち飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸はほぼ同じ割合であり、不飽和脂肪酸は体の酸化を防止してくれるのに対し、飽和脂肪酸は大事なエネルギー源であり、骨や血を作る働きをします。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の理想的な摂取バランスは3:7とされていることもあり、飽和脂肪酸は摂りすぎの傾向にあるため悪者扱いされていますが、本来はどちらも欠かせない栄養素であり、バランスよく摂ることが大切です。
ちなみに成長期の子どもはビタミンAやEが不足しがちのため、ラードやヘットといった動物性油脂は少量でも効果的に摂ることができます。

また、植物油を加工する際に発生するトランス脂肪酸をラードは含みません。最近では飽和脂肪酸の取りすぎよりも、このトランス脂肪酸の摂りすぎのリスクの方が懸念されているほどです。

ラードのカロリーは100gあたり940kcal、大さじ1だと114kcal程度。植物油が100gあたり920kcalということを考えると、極端に高いというわけではないんですね。
サラダ油など液状の食用油に比べると、凝固しやすく口溶けが悪いため、こってり=太りやすいという印象を与えているのかもしれません。

健康に良くないとされる理由

ラードが体に良くないと言われる理由には、食べる際に気をつけることが多い点にあります。
以下はラードが禁忌とされる人です。

腸炎

急性、慢性ともに腸炎の人はラードの脂質が腸の滑りをよくし下痢が治りにくくなったり、症状が重くなることがあるようです。

動脈硬化

ラードの飽和脂肪酸は血中の脂質を増加させるため、動脈硬化で治療中の人も避けたほうがいいでしょう。

ラードが余ったときの保存方法

市販のラードはチューブ1本分ほどですので、揚げ物には足りず炒め物では余ってしまいます。
余った場合はどうすれば良いのでしょうか。

ラードの賞味期限や保存方法は

だいたい1ヶ月が目安になりますが、記載されている期限を必ず確認した上で保存するようにしましょう。
保存は、常温でも固形を保ち酸化しにくいラードですが冷蔵庫に入れる方がより安定した状態が保てるため、冷蔵がおすすめです。

ラードがないときの代用は

ラードは豚肉バラで代用すると、風味が変わらず代用しやすいです。
作り方は、きれいに洗った豚肉を弱火で煮て、豚の脂肪が少しずつ湯に溶け出すのを待ちます。表面に溜まった油膜が淡い黄色になったところで火を止め冷ましたら完成です。
ちなみにラードの風味をあまり重視しなければ、サラダ油などでも充分代用は可能です。

ラードの上手な使い方とは

ラード特有の美味しさや扱いやすさを使えば、いろんな分野の料理に活用できますよ。

美味しい使い方

ふだんサラダ油で作っている料理に使うと甘みと旨味がアップします。

例えばミンチに混ぜ込むと焼いた後は肉汁に、チャーハンなら炒めてから冷めてもべちゃっとならずパラパラに仕上がります。
これはラードの常温で固まるという性質によるものです。

他に、野菜炒めは肉なしでも豚肉の存在感が出て味に深みが増しますし、スープにませれば濃厚な旨味が調味料を引き立てて、調味の手間が減りますよ。
スイーツではつぶあんに混ぜるとて照りがでて甘みが増し、口当たりも滑らかになります。あんまんなどはかなり市販に違い味わいになります。

他にはこんな使い道も

(1)ふんわり発酵させる
パンなど発酵させる時に少量混ぜると、大きく膨らむほか甘く柔らかく仕上がります。

(2)ごはんを柔らかく炊き上げる
研いだお米に塩とラードを少量加えると口当たりがよく美味しさがアップします。

(3)サビ防止に
鉄鍋に薄くのばせば錆びにくくなります。

(4)海外では
革靴に塗ったり、リップクリームがわりに塗ったりする習慣もあるようです。

どんな食材もそうですが、ほかの油脂と合わせてバランスよくとれば、ラードも美味しく食べることができます。
ぜひ、お家でラードの美味しさを実感してみてください。

ラードが禁忌とされる人について修正して再送信(2017/12/22)

【参考文献】
・農林水産省 油脂やトランス脂肪酸の健康に与える影響 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/