2016年10月20日更新
ほうれん草に含まれるシュウ酸とは
ほうれん草は鉄分や葉酸そしてビタミンやミネラルが豊富で、これから冬を迎える上で旬を迎える美味しい野菜の一つです。栄養価が高いからこそ健康のために食べたい野菜に入るのですが、しかしほうれん草には一つだけ注意しなければならない成分もあります。それがシュウ酸と呼ばれる結晶体が含まれていることです。
シュウ酸とは
ホウレンソウに含まれていることで知られるシュウ酸とは、どんな性質をもつ成分か改めておさらいすることにします。この成分の正体というのはジカルボン酸と呼ばれるもので、土中にあるミネラルを吸収するために植物が自身の体で作り出す成分です。
一般的には土中のミネラル成分カルシウムを吸収するために作り出すので、カルシウムと結合するとカルシウム酸塩という形になります。ただ自身の体を成長させるためにはカルシウムだけでは不十分なので、それ以外のミネラルも吸収できるようになっています。
例えば、土の中に含まれているミネラル成分のナトリウムを吸収した場合にはシュウ酸ナトリウムとなりカリウムを吸収した時にはシュウ酸カリウムという事になります。そして人間が野菜を食べた時に苦みに近いえぐみや刺激するような感覚が口の中で起きるときには、大抵は灰汁という概念で扱われています。しかし実際には灰汁も含めて、この成分が口の中に入ることによってえぐみや刺激として感じるのです。
シュウ酸を多く含む食品。小松菜にも
シュウ酸は植物が土の中のミネラル分を吸収するために作り出す成分なので、すべての野菜類にひとしく含まれている成分です。ただ含有量においては違いがあり、その含有量の中でも特に多く含む食品を知っておくことが尿路結石や骨粗鬆症を防ぐうえで大切になります。
一番多く含まれているのはホウレンソウであり、ホウレンソウの含有量は食べる量が100グラムで換算すると770ミリグラムと断トツで多いです。それ以外に100グラム換算で計算すると多く含む野菜には小松菜の場合では50ミリグラムと春菊では30ミリグラムとなっています。
これらの野菜を食べても良い目安としては、最も多いホウレンソウで換算すると平均4束から6束で1キログラム以下となります。
それ以上食べると余分に溜まったシュウ酸が血中や尿の中のミネラルと結合してしまうため注意です。
ただシュウ酸は水に溶けやすい性質を持っているので、食べるときには旬の時期であっても生で食べずに下ゆでするか大腸の血管に吸収される前に脂質やたんぱく質で覆えば無害化できるのでお勧めです。
シュウ酸の用途
尿路結石や骨粗鬆症の原因と言われるため体に良くない成分として扱われてきたシュウ酸ですが、実は食品添加物として使われていることが多いです。
どんな形で使われているのかというと、先に言ったとおりにシュウ酸はミネラル成分を吸着して一つの固まりにする性質を持っています。
その性質をうまく利用したのが豆腐の凝固作用であり、豆腐は豆乳の中にミネラル成分のにがりを加えて固めるのですがその中にシュウ酸を加えることでよりかためる力を強くすることができます。ただしシュウ酸は豆腐凝固剤という一括表示ができません。
それ以外にも中華麺を作る時に使われるミネラル成分が入ったかんすいの中に加えることによって小麦との吸着を強くしてコシを生み出したり、ハムやソーセージの中にもミネラル成分の塩と共に入れることでまとめやすくします。
このように材料を固める食品を作る際に食品添加物として使用することで、ミネラル成分を固めて一つにする性質が食品の凝固の成功率を上げてくれます。