2018年3月6日更新
還元水飴とは?還元水飴の効果や危険性について
低カロリーとか糖質オフと謳っている食品、最近よく見かけますよね。ダイエット中の方や糖質制限されている方にはうれしい食品です。これらの食品の原材料の表示をみると「還元水飴」という名称を目にします。今回はこの還元水飴とはどんなものなのか調べました。還元水飴の効果や危険性についても見てみましょう。
還元水飴は糖アルコールの一種
還元水飴は糖質系甘味料の糖アルコールの一種です。水飴に水素を添加し製造した低カロリーの甘味料で、砂糖の代替甘味料として利用されています。
還元とは
還元水飴の還元は酸化の反対の過程のことをいいます。物質が酸素と結合して変化することを酸化、そして還元は物質が水素と結合して変化することもしくは物質から酸素が奪われる反応を還元といいます。還元とは酸化物から酸素を全部もしくはその一部を取去ってもとに戻す変化であるわけです。
還元水飴は水飴という食品に水素を加えて結合させてできた化合物です。水飴から酸素が奪われることで、水飴のもともとの成分であるマルチトールやソルビトールなどが元に戻り還元水飴の成分に含まれているのです。
そもそも水飴とは
そもそも水飴は食品に甘味をつけるために砂糖やハチミツと同様に甘味料食品として使われているものです。しかしその原料は砂糖やハチミツのように自然界に存在するものではなく、穀類や芋類などに含まれるでんぷんを原料に、酸や酵素を利用して反応させ糖化した粘液状の甘味化合物です。
反応した後にできた化合物の中にはマルトース(麦芽糖)、グルコース(ぶどう糖)、デキストリン(マルトースとでんぷんの間の分解物)などが含有されています。使用する酵素の種類や反応時間の違いによって含有される成分の割合や糖化の違った化合物ができ、それが水飴と呼ばれる食品になるのです。
還元水飴の種類
還元水飴は原料の水飴の糖化度によっていくつかの種類があり、それぞれの性質を持ち味にして食品に利用できる甘味料です。
低糖化還元水飴
甘味度が砂糖の10~20%と低いので素材の味をそのまま出したいときなどに利用されるほか、皮膜性が高く粘度も高いので食品に照りや艶をつけたいときなどに利用すると有効的です。
中糖化還元水飴:砂糖の50%ほどの甘味度で味の質も砂糖に近いため甘味を押さえカロリーダウンしたい和菓子やデザートに利用されるほか、塩との馴染みもよく塩なれ効果があるためハムやソーセージなどにも利用されます。
高糖化還元水飴
マルチトールやソルビトールが中心成分で、甘味度は砂糖の50~65%の甘さです。低粘度ですが保湿性があるので食品の表面の乾燥を防ぎ保存効果のある還元水飴です。
マルチトールシラップ
低カロリー飲料やキャンディなどに利用され糖アルコールのマルチトールを50%以上含んでいる比較的甘味度が高い還元水飴です。
還元麦芽糖水飴
マルチトールを75%以上含有した還元水飴の中で最も甘味度が高い種類です。
還元水飴は単糖の糖アルコール及び多糖の糖アルコールの混合物であるため同じ甘さの還元水飴であっても還元水飴中の構成する糖の含有率の違いにより,それぞれ異なった性質を示すので、それぞれの特徴を把握して目的にあった使い方できます。
還元水飴は糖質オフ、低カロリーの甘味料
還元水飴は水飴に水素を加え水飴のグルコースを還元した糖アルコールです。水素をくっつけることで消化酵素に反応せず、体に栄養素として消化されにくいため、食品に加えてもカロリーを低く抑えることができます。甘味度は砂糖より控えめですが、低カロリーや糖質カットの食品に砂糖の代替甘味料として利用されています。
【関連リンク】
・糖アルコールとは?アルコールとの違いってなに?
・ソルビトール(ソルビット)とは。毒性や効果
還元水飴の食品への表示
糖アルコールは「食品」と分類されるものと、「食品添加物」に分類されるものがあり、それぞれ表示の仕方が違います。還元水飴は糖アルコールでも食品に分類されているので原材料の表示には品名「還元水飴」と明記します。還元澱粉加水分解物、還元澱粉糖化合物、還元オリゴ糖などという名称が使われるときもあります。
糖アルコールで「食品」に分類されるものは還元水飴のほかにエリスリトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノースなどがあります。
ちなみに「食品添加物」に分類される糖アルコールの表示は、消費者に使用目的などを理解しやすくするために、原材料の表示に使用用途「甘味料」につけて物質名をカッコ付けなどで明記(たとえば「甘味料(ソルビトール)」と明記)することが食品表示法で義務付けられています。
【関連リンク】
・エリスリトールとは?心配されるエリスリトールの害や副作用は?
還元水飴の問題点
還元した水飴にはグルコース(ぶどう糖)など単糖のほかマルトース(麦芽糖)など複数の糖が結合したものを含有しているものがあります。グルコース(ぶどう糖)がたくさん含まれる原料を還元するとソルビトールを多く含む還元水飴ができます。
この時の表示の仕方ですが、ソルビトールを多く含んでいる還元水飴でも、これを「ソルビトール」という表示をするのではなく「還元水飴」と表示されてしまいます。
すなわち消費者は水飴に水素を添加した甘味料とは理解できても、その還元水飴の含有されている成分までは見極めることができません。ソルビトールは紛れもなく食品添加物です。食品添加物を嫌い、自然食品を食事として摂取しようとしている人にとっては、その表示の仕方は不安になる問題です。還元水飴の他に合成添加物を使用していなかったのであれば「合成添加物不使用」と謳うこともできてしまうのです。
このようなことから、還元水飴は食品として扱われるため食品添加物である「ソルビトール」や「合成甘味料」の代わりとして抜け道的な使用が許されてしまう食品だとも言えます。還元水飴はでんぷんに酵素などを使い人工的に分解して作った水飴に、水素原子を結合させたものですから間違いなく合成化合物のはずですが、なぜか食品添加物ではなく「食品扱い」になっているのは、表示の仕方に消費者としては問題視せざる得ない点です。
還元水飴の効果は?
還元水飴は砂糖の代替甘味料として食品に利用されるほか、保湿性が高く浸透性の効果を利用して化粧水や医薬品などにも利用されています。食品に利用されるときには還元水飴の効能から以下のような効果が期待されています。
血糖値を上昇させないので糖尿病に効果的
近年血糖値の上昇の抑えるために特定保健用食品がたくさん開発されていますが、糖アルコールの一つである還元水飴も甘味をもちながら、血糖値を上昇させない効果があり、同時にインスリンの分泌にも刺激を及ぼさない効果があります。そのため糖尿病患者の方にも安心して利用いただけます。
虫歯予防に効果的
虫歯は食べ物を食べた後の口の中に残る食べかすを餌にした菌が、虫歯の原因となる酸を作り虫歯ができると言われます。糖アルコールの中で還元水飴のように「還元○○」とか「○○トール」というものは、口の中の細菌の餌にならない性質をもつ糖なので、歯垢の原因となる物質や歯のエナメル質を溶かす酸が産生されることがないため、還元水飴などは虫歯になりにくい効果があります。
ダイエットや肥満防止に効果的
水飴の糖質に水素を添加し還元した科学的に安定した糖アルコールである還元水飴は、胃や腸で消化吸収されにくいまたはされないで体外へ排出されてしまうため、食品を低カロリーに抑える効果があります。そのためダイエット食品や肥満からくる生活習慣病の予防食に安心して利用していただけます。
還元水飴の人体への危険性はどんなこと?
還元水飴など糖アルコール類を一度に大量に摂取するとおなかが緩くなることがあります。その理由は小腸で消化吸収されにくいため、吸収されなかった糖アルコール類が大腸に到達すると、大腸内の浸透圧が高くなるためにおなかが緩くなるのだと言われています。しかしこの暖下作用は一過性のものなので、体に危険があるわけではないということです。
現在のところ還元水飴が人体に危険をもたらしたという報告は上がっていません。一部の風評では還元水飴の種類の還元麦芽糖水飴やマルチトールシラップの成分であるマルチトールが化学物質であることで健康への危険性を疑う風評や、加水分解の分解工程で人体に悪影響を及ぼす物質が生成されるのではということを耳にしますが、現在これらの風評は裏付けのない話に過ぎません。
糖アルコールの還元水飴は低カロリー甘味料
還元水飴は糖質系甘味料の糖アルコールの一種です。糖アルコールの中でも「食品」に分類されるため、原材料の表示は「還元水飴」と明記されています。しかし原料となる水飴自体が人工化合物であることから、その表示の仕方については問題視されている点です。しかし胃や腸に吸収されず体外に排出されるので食品を低カロリーに抑える効果があり、ダイエット食品や肥満による生活習慣病の改善食、そして血糖値を上昇させない効果から糖尿病の方にも砂糖の代替甘味料として安心して利用していただけます。還元水飴はいくつか種類がありそれぞれ性質が違うので、その性質を把握して上手にご利用ください。
【参考文献】
・日本食を支える還元水あめの役割 http://www.bfsci.co.jp/pdf/news/20170119.pdf
・早わかり食品表示ガイド:消費者庁 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/jas_1606_all.pdf
・砂糖類情報:独立行政法人農畜産業振興機構 https://sugar.alic.go.jp/japan/fromalic/fa_0707c.htm
・虫歯になる糖:歯科衛生士 https://ameblo.jp/mk200605/entry-12140725516.html
・実験教室で実地可能な「水あめづくり」実験法の検討と開発 https://aue.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=569&item_no=1&page_id=13&block_id=21