2017年7月26日更新

搾りたては飲めない?生乳と牛乳の違いとは

生乳

  1. 目次
  2. 生乳とは
  3. 生乳が牛乳になるまで
  4. 生乳のアレルギーについて
  5. 日本は生乳不足?

生乳とは

生乳とは殺菌処理をしていない搾りたての牛やヤギの乳を指します。
流通していない背景には、生乳の状態で売るには食品衛生法の定める基準をクリアするのが難しいということが関係しています。

生乳と牛乳との違いは?

生乳が厳しい検査や殺菌処理を経て、市場に出る基準に達したものが牛乳です。私たちが毎日飲んでいるのはほぼ100%これにあたります。
また、乳製品に関しても同じで必ず生乳→牛乳というステップを踏んでから加工されます。
全ての牛乳の原料は生乳であるため、生乳は原乳とも呼ばれています。

生乳の読み方は?

厚生労働省が生乳について定めた法律によると、読みは「せいにゅう」となっています。
しかし「なまにゅう」と読む時もあるようです。この読み方だと、殺菌乳に対する言葉としての「無殺菌乳」という意味になります。
また、小岩井乳業が販売する「小岩井生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト」のいう製品もあります。
ここでの「なまにゅう」は殺菌していないという意味はなく、フレッシュな美味しさを強調した意味合いで使われています。

生乳が牛乳になるまで

生乳が牛乳になるまでの工程は、どのようなものなのでしょうか。

生乳が牛乳になるまでの工程

牛乳への一歩は牧場の時点から始まっています。
酪農家の人たちは高品質を保つため、搾乳したらなるべく空気に触れさせないようにして、バルククーラー(タンク)で冷蔵貯蔵します。その後保冷車が農場の生乳を回収し、工場での受け入れ検査を受けます。
検査から製品完成までの流れは以下のようになっており、たくさんの行程があることが分かります。

  1. 搾乳…【酪農家・牧場】…牛から搾る
  2. 集乳…【酪農家・牧場】…タンクローリーで低温輸送
  3. 計量…【工場】
  4. 受入検査…【工場】
    1. 官能検査…色や香り、味などに異常がないか風味を確かめます。
    2. 理化学検査…水が混ざっていないか、凝固しやすくないか(体調の悪い牛の生乳は凝固しやすい)を調べます。
    3. 成分検査…乳脂肪率や全固形分(脂質のほか、タンパク質やミネラルなど)、酸度(新鮮かどうか)を調べます。
      例えば成分無調整牛乳の場合、無脂乳固形分が8%以上求められます。
    4. 細菌検査…大腸菌群は陰性で、細菌数は1㎡あたり5万以下。
    5. ペーパーディスク法による検査…抗菌剤が効かない菌はいないかなどを調べます。
    6. 体細胞検査…乳腺炎や病気の牛は白血球の値が高いため、白血球の値が高くないかを調べます。
  5. 清浄機…【工場】…ゴミや遺物などを除去する
  6. 冷却機…【工場】…5℃以下に冷却する
  7. 貯乳タンク…【工場】…保冷式貯乳タンクに貯える
  8. 均質機…【工場】…乳脂肪の粒子を細かくする(※1)
  9. 殺菌機…【工場】…加熱殺菌する(※2)
  10. 貯乳…【工場】…冷却して貯乳する
  11. 充填包装機…【工場】…ビンや紙パックに詰めて密封する
  12. 製品検査…【工場】…消費期限などを印字して、細菌数や成分・風味などの検査をする
  13. 冷蔵庫…【工場】…5℃以下で冷蔵保存する
  14. 出荷…【工場】…保冷車で出荷

(※1)…生乳は乳脂肪の粒子が大きく比重が軽いために分離して浮き上がってしまい、容器の上部にクリームの層ができてしまうため均質機で乳脂肪の粒子を細かくする。

(※2)…主な殺菌法は以下の通りです。

  • 低温保持殺菌(62℃~65℃で30分以上)
  • 高温保持殺菌(75℃以上で15分以上)
  • 高温短時間殺菌(72℃以上で15秒以上)
  • 超高温瞬間殺菌(120℃~150℃で1~3秒)

生乳のアレルギーについて

数ある食物アレルギーの中で牛乳アレルギーの人の割合は高く、主には牛乳に含まれるタンパク質がアレルギーを引き起こすと考えられています。
よって、牛乳アレルギーの人にとっては、牛乳も生乳もアレルゲン食材であることには変わりありません。

乳タンパク質の80%を占めているカゼインとは

ちなみに、生乳が飲めるかどうかということですが、衛生面から一般的には飲むことはできません。

しかし、日本で唯一生乳販売をしている牧場が十勝にあります。想いやりファームという牧場では、牛が自然で健康的な生活を送っています。
この牧場の飼育方法はコストと手間がかかる反面、とれた生乳は殺菌処理をした牛乳よりも細菌が少ないという利点があり、これが販売できる理由です。
この牧場では、一般の牧場でとれた生乳の中に細菌が多いのは、飼育の方法にあると指摘します。
もし牛乳の生産効率を上げるために、牛に施す飼料や狭い牛舎、発育を促進するさまざまな化学物質が生乳内の細菌数を増やしており、それを解消するためにこれほど手間のかかる検査や殺菌をしているのであれば、色々と考えさせられますね。

想いやり生乳(想いやりファーム)

日本は生乳不足?

日本で食料自給率の高い食材を思い浮かべた時、まず浮かぶのはお米ですね。牛乳はどうかというと実は牛乳も100%なんです。

バターなどの乳製品は?

日本の乳製品の消費量は生乳で換算すると年間1000t以上であるにも関わらず、実際の国内の乳製品の生産量は750tです。これは自給率で見ると64%ほどであり、60年前に比べると20%以上低下しています。
これには乳製品の存在が関係しており、バターやチーズの原料を輸入品でまかなっていることが大きな要因となっています。

輸入の乳製品に対する対策

そこで、この問題を打開すべく、JA全農と全国酪農業協同組合連合会(全酪連)は、今年(2017年)すでにオーストラリアから乳牛を480頭輸入し、乳製品の国内の自給率を上げることを始めています。

いつも何気なく飲んでいる牛乳にはさまざまな処理がされていることが分かりました。
生乳を飲む機会があれば、ぜひ牛乳との違いを確かめてみてくださいね。