2017年9月11日更新
菱の実とは?その効能や食べ方について
秋になると一部の地域だけに出回る菱の実。昔は国内のあらゆるところで食べられていました。美味しく体に良いことから、今でも季節の食べ物として親しまれています。そこで今回は菱の実の効能や美味しい食べ方について紹介します。
菱の実とは
菱(ひし)はミソハギ科ヒシ属の1年草の実であり、水面に浮かぶ葉の形が菱型であることが名前の由来です。栄養が豊富で「水中の落花生」とも呼ばれます。
どんな植物?
蓮子のように水中から茎を伸ばし、葉は水面に浮かんでいます。菱の実は果肉部分であり、柔らかい茎も野菜として食べることができます。果肉の形が特徴的で、餃子のようないびつなハート型をしており、先端が尖っているものや丸みを帯びているものなど、産地によって種類もさまざまです。
実の大きさは、人工栽培でマッチ箱ほどの大きさまで成長し、野生のものはそれより小ぶりの爪ほどの大きさになります。
毎年8月ごろから成熟し始め、ツル状に伸びた先に緑色の葉が生えます。茎は赤みがかった紫色で、鮮やかな黄色の小花を咲かせます。成熟すると実は硬くなり、秋の終わりまで収穫されなかった菱の実は、茎から自然に落ちて翌年水中で発芽します。2月ごろには栽培用の苗が出回るようになり、水面に密集させる方法で栽培されます。
産地や気候
菱は温帯気候の湿地に多く自生し、実際は沼地や池で多く栽培されています。寒さに弱く、気温は25-36℃、水深60cm程度が最適な環境とされます。
原産はヨーロッパで、現在では中国南部やロシア、日本、ベトナム、台湾、ミャンマーでも栽培されており、国内では福岡や佐賀が特産で少しずつながら出荷量を伸ばしています。
菱の実の効果・効能
菱の実は豊富な成分からなり、昔から漢方にも使われています。
具体的にどのような効能があるか、見ていきましょう。
菱の実の味
硬い皮に滑らかな舌触りの菱の実は、栗や芋のように蒸す、茹でるといった下処理をしてから食べられてきました。ホクホクとしてほんのり甘みがあり、昔からおやつのほか、重要な食料として食べられてきました。
菱の実の栄養成分
菱の実はビタミンとミネラルの種類が豊富なほか、βカロテンやリボフラビンといった生理活性作用(体の調子を整える)成分も含まれています。
菱の実は、栗と同じように硬い皮を剥いて食べます。しかし、この皮の部分にも栄養がたっぷり含まれており、さまざまな病気への治療効果が期待されています。
菱の実の皮を炒って乾燥させ、お茶の葉の代わりにして飲むと、肝硬変や腹水の治療に効果があることが明らかとなりました。
また現段階の研究において、菱の実の皮はがん細胞の成長と増殖を抑え、白血球や貪食細胞の働きを活発にする作用があり、そのがん細胞抑制率は28.8%にも達するそうです。
皮を剥いて残った実の部分にも肝癌や腹水の抑制作用が確認され、特に胃がんや食道がんなど、消化器系のがんに対する治療効果が高いとされています。
菱の実の食べ方
もし何かの機会で菱の実が手に入ったら、美味しく食べたいですよね。
よく食べられている地域では、どのように調理されているのでしょうか。
食べる時の注意
菱の実には1つ注意点があります。それは「新鮮であっても生食はNG」ということ。
採れたての菱の実はまだ皮が柔らかく、そのままでも食べられそうですが、中に虫が入っていることがあります。この虫は小腸に寄生し、下痢や腹痛、貧血や浮腫を引き起こす原因となるため、必ず加熱処理をする必要があります。
オススメの食べ方
まずたっぷりのお湯で10分間下ゆでし、あら熱を取ってから硬い皮を剥く。これで下処理は完了です。
豚バラ肉の炒め
きれいに洗った豚バラ肉を角煮サイズに切り、軽く茹でてアクをきり、下処理した菱の実と合わせて炒めます。
味付けはお好みですが、甘辛く仕上げると、肉の旨味と菱の実の甘みが合わさり美味しさが増します。
レンコンのスープ
レンコンと菱の実を同じ大きさに切り、スペアリブと合わせてたっぷりの水で煮込みます。本場では食べる前にナツメやクコの実を入れて食べられるようですよ。
菱の実は、中国南部や東南アジアの一部の地域では路上で売られているほどポピュラーな食べ物のようですが、国内ではなかなかお目にかからないもの。
もし自生しているものを採る機会があったり、百貨店の高級食材コーナーで見かけることがあれば、ぜひその味を確かめてみてくださいね。