2017年5月11日更新
体に悪い?こめ油の危険性と食べ方について
こめ油はサラダ油、キャノーラ油、ごま油に続いて身近な食用油であり、その栄養価は高い評価を得ています。しかし一方でこめ油は危険という声もあるようです。
そこで今回はこめ油の成分や効果、そして危険性について紹介します。
こめ油とは
JASの規定をクリアしたこめ油はサラダ油のひとつに分類されます。
また、こめ油の原料である米ぬかは、精米時の副産物としての大量に発生する反面、生産効率の問題からまだ十分普及していないのが現状です。
こめ油の作り方
稲の64%の栄養はお米にあり、そのうち60%はぬかと胚芽に集中しています。
そこで日本をはじめ東南アジア諸国では米ぬか油とも呼ばれ、油を抽出する技術の開発は今なお進められています。そして現在、こめ油は以下の方法により作られます。
圧搾法
蒸留前に予備処理したぬかと胚芽を蒸留脱酸法(NRM)にかけて圧搾します。特にこの予備処理がこめ油の質を決めることから、この工程の研究が盛んにされています。
精製率が高い、汚水が出ない、製品の安定性が良いといった利点があり、現在注目されている作り方です。
明るい色をしており、遊離脂肪酸含有量が少なく繊維質やビタミンE豊富なこのこめ油は最高品質とされています。
シリカゲル吸着柱による分離法
溶剤を使って抽出したこめ油は色が暗いという欠点があります。そこで開発されたのが、溶剤で抽出後のこめ油をシリカゲル吸着柱という機械にかけて脱色するという方法です。
微生物の酵素を利用する方法
微生物には一定の条件がそろえば、脂肪酸をグリセリド(食用油の成分)に転化する働きがあります。
溶剤と膜分離の併用による抽出法
大豆油の製造によく使われる方法で、溶剤でこめ油を抽出後、油を分離する膜に通してさらに脱酸処理をする方法です。生産コストが低く、廃液が少なく抑えられることから、先進国の多くでこの方法が採用されています。
こめ油の成分
お米の栄養のほとんどは、精米で削ぎ落とされてしまいますが、こめ油には以下の栄養がしっかり凝縮されています。ぬかと胚芽の15%-22%が脂質であり、含油量は大豆に匹敵するほど。
内訳はオレイン酸 、リノレン酸、リノール酸 、パルミチン酸 、ステアリン酸 となり、ほかにβ-シトステロール(抗がん作用や降コレステロール作用のある植物ステロール) 、オリザノール(抗酸化物質) 、タンパク質、ヘキサトリアコンタン(抗酸化物質)、リン脂質、ビタミンEなど数10種類の天然の生理活性物質からなります。
特にビタミンEとβ-シトステロール含有量が他の植物油の中で群を抜いて高いことから、抗酸化作用も注目されています。
こめ油の効能は
こめ油はその高い栄養価から、欧米や韓国などの先進国ではオリーブオイルに並ぶ健康食品として人気です。とくにヨーロッパでは早くから家庭の常備油として使われています。
健康食品としての効能
脂肪酸のバランス
飽和脂肪酸、1価不飽和脂肪酸、2価不飽和脂肪酸の割合が1:2.1:1.8で、これはアメリカ心臓協会が推奨する1:2.1:1.1に最も近い値です。動物性食用油が1:0.5:1であることを考えると、栄養学的にバランスのとれた健康的な食用油といえます。
アンチエイジング
オリザノール、ビタミンE、トコトリエノール(ビタミンEの1種)、β-シトステロールには体を老化を抑制する効能があり、コレステロールを下げたり、大脳の神経系統を活性化する働きがあります。
血糖値と血圧を下げる
ごま油と一緒に摂ると、中程度の糖尿病や高血圧の治療を助けてくれます。これは体内のコレステロール代謝を調節して血管壁の脂質を減らし、動脈硬化を防止することによります。同時にビタミンなどの有効成分は細胞の変異やがん化を抑えます。これらは特に高齢者や心臓血管疾患の人に推奨される効能です。
こめ油に味はある?
こめ油の味はとても薄く、ほとんど無味であり、色はやや茶色を帯びた明るい黄色をしています。このうすさが料理の素材の風味をしっかり活かしてくれます。
また、高温になる揚げ物でもその風味は変わらず、カラッとあっさりした味わいが続きます。
こめ油が危険とされる理由と上手な取り方について
こめ油は安定性がよく、常温の冷暗所で比較的長い間保存が可能です。利点が多いにも関わらず、危険といわれるのはなぜでしょうか。
こめ油が危険と言われる理由
作り方で触れましたが、溶剤の抽出方法ではノルマルヘキサン(n-ヘキサン)という薬剤を使用します。これが体に有害なためこめ油は危険と言われるゆえんです。
しかし、実際にはこめ油は溶剤抽出の後で高温で蒸留するため、この時にノルマルヘキサン(n-ヘキサン)は揮発して無くなります。製品には有害物質の残留がないことは多くのメーカーで説明されていますので、安心して食べられますね。
そして、こめ油が危険といわれるもう1つの原因はカネミ油症によるものです。
カネミ油症とは1968年北九州市で起きた公害病で、カネミ倉庫株式会社のこめ油を食べた人に体のかゆみや、爪の変色、皮膚の色素沈着、結膜炎、などが見られたというもの。
調査の結果、原因は脱臭の過程で熱媒体として使用されたPCB(ポリ塩化ビフェニル)であり、誤って混入していたことが後に明らかとなりました。
中毒症状を起こした人の中には死亡者もいたため海外でも大きく取り上げられました。
公害ではあったものの、これがこめ油=危険という誤った認識につながってしまったようです。
効能を上手に生かした取り方は
こめ油の使用範囲は普段の食用油同様料理全般に使用できます。焼いたり炒めたり、もちろんそのまま食べるサラダドレッシングにも使えますよ。
こめ油は高温でも煙が少ないため、揚げても空気が汚れにくく、油特有の嫌な臭いがこもらないという点も嬉しいですね。
お米の生産が盛んな日本はもみと胚芽が豊富にあります。
この先さらに生産技術が進んで、今より最も手軽に良質なこめ油が食べられるようになるといいですね。