2017年4月7日更新

食品添加物の膨張剤とは?種類や危険性など

料理番組でパンやケーキを作る時に「膨張剤に○○を使って…」などと講師の方が説明している場面がありますよね。名前に馴染みはあり、食品を膨らませる働きがあることはおおよそ理解していたけれど、ただレシピに書いてあるから使っていたなんてことが多いかと思います。ご存知のとおり膨張剤は食品添加物の一つです。食品添加物とは食品の製造や加工を補助するもので、それぞれ必要な用途によって食品に添加されています。今回は食品添加物の種類の一つ「膨張剤」についてのお話です。膨張剤の仕組みってどうなっているんだろう?これって人体に危険はないのだろうか?そんな疑問を解決していきましょう。

  1. 目次
  2. 膨張剤とは
  3. 重曹の膨張剤としての作用
  4. 膨張剤の人体への危険はあるの?
  5. 食品添加物の膨張剤とは

膨張剤とは

食品添加物の膨張剤はパンやケーキを作る時にふっくらと仕上げるため、食品の製造や加工の時に使用されます。ふんわりした柔らかさをだして、ソフトに仕上げてくれるのが膨張剤の働きです。ベーキングパウダー、ふくらし粉ともいいます。

膨張剤の種類

膨張剤の種類には卵白や卵黄などを使う物理的膨張剤、イースト菌からなる発酵膨張剤、そして化学的に作られた化合物を加熱してガスを発生させ膨らませる化学的膨張剤(合成膨張剤)があります。

卵やイースト菌をつかって食品を膨張させる仕組みは、泡立てた卵白や卵黄の原理やパン作りではおなじみのイースト菌の発酵作用から、膨張する方法は一般的で理解しやすいと思います。
一方、化学的膨張剤(合成膨張剤)はというと、重曹(炭酸水素ナトリウム)や炭酸アンモニウムなど加熱によりガスを発生させる物質と、酒石酸やミョウバンなどの酸性剤を同時に使用することで炭酸ガスやアンモニウムガスが発生し、そのガスの力で食品を膨張させる方法です。

ただ現在ではアンモニウムの場合はアンモニア臭が残るためあまり使用されていません。

膨張剤は一括表示が許されている食品添加物

物理膨張剤は食品(食材)を使用するため食品添加物ではありません。食品添加物に指定されているのは化学的に作られた化合物です。主なものは以下の通りです。

  • 炭酸水素ナトリウム(重曹)
  • 炭酸水素アンモニウム
  • アジピン酸
  • L-アスコルビン酸
  • 塩化アンモニウム
  • クエン酸カルシウム
  • クエン酸
  • グルコノデルタラクトン
  • DL-酒石酸
  • L-酒石酸
  • L-酒石酸水素カリウム
  • 炭酸カリウム
  • 炭酸ナトリウム
  • ピロリン酸四ナトリウム
  • ピロリン酸二水素カルシウム
  • ポリリン酸カリウム
  • ポリリン酸ナトリウム
  • ピロリン酸二水素二ナトリウム
  • メタリン酸ナトリウム
  • フマル酸一ナトリウム
  • 硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)
  • 硫酸アルミニウムアンモニウム(ミョウバン)
  • 硫酸カルシウム
  • リン酸二水素ナトリウム

上記を含め全部で41種類あります。
膨張剤は一括表示が認められている食品添加物のため、2種類以上の物質を膨張剤の目的で使用した場合、食品への表示は「膨張剤」とだけ記載すればよいことになっています。

化学的膨張剤の仕組み

膨張剤はそもそもパンやお菓子などの生地をスポンジのような細かい穴の空いた構造に膨らませた状態にして、その状態を保つ作用が目的です。ホイップクリームなどバターや卵白を泡立てて、その気泡を生地に混ぜて加熱することで食品を膨らませる物理的な方法と違って、炭酸ガスやアンモニアガスを発生させて生地を膨らませるのが化学的膨張剤です。

化学的膨張剤(合成膨張剤)の中には重曹が含まれていて、これにガスを発生させるための化学物質が加わり二酸化炭素ガス(炭酸ガス)などのガスの発生によって食品が膨れるのです。ではガスを発生させる元となる重曹(炭酸水素ナトリウム)を例にどんなものなのか見ていきましょう。

重曹(炭酸水素ナトリウム)の膨張剤としての作用

重曹(炭酸水素ナトリウム)は古くから膨張剤として使われてきた食品添加物です。食品を膨らませるためのガスを発生させる源で、「ガス発生剤」として使われています。この重曹に助剤物質(たとえばL-酒石酸水素カリウムや硫酸アルミニウムなど)を併用することでガスを発生させ、食品を膨らませるのが化学的膨張剤です。重曹に働きかける助剤物質である化学物質のことをガス発生剤に対して「酸剤」といっています。すなわち化学的膨張剤は重曹というガス発生剤に助剤物質である酸剤の働きかけでその作用を発揮しているのです。

化学的膨張剤の種類

重曹と個々の酸剤の組み合わせによってガスの発生量なども違い、その食品の特徴がいかせる膨張剤が食品に添加されています。大きくわける3種類に分類されます。低温で大量のガスを発生させる即効性の膨張剤、高温にならないと大量のガスを発生しない遅効性のもの、またじっくり焼くような長い加熱に耐えられる持続性がきく膨張剤です。

たとえば酸剤としてL-酒石酸水素カリウムが併用されたものは、即効性の膨張剤として使われ気泡も均一に膨れるので、蒸しパンやホットケーキ、スポンジケーキに利用されているんです。

膨張剤の人体への危険はあるの?

これまでの検証結果からは、膨張剤は人体へ危険性はないと報告されています。ただ、化学的膨張剤はガス発生剤となる重曹に様々な化学物質が作用してガスを発生させて膨張剤としての働きをするため、酸剤となる化学物質それぞれを調べると、個々においては有害と報告される物質もあるのは事実です。しかしその有害な物質だけを大量に摂取するわけではないので、食品の危険性を調べる研究所からは、膨張剤が人体へ危険を及ぼす心配はないと言われています。

食品添加物の膨張剤とは

食品添加物の膨張剤。お菓子やケーキをふっくらと膨らませるには卵白の泡立ちを利用したり、イースト菌でふっくらとパンを焼くことは知っていたけれど、知らずに使っていたベーキングパウダーは重曹に化学物質が併用され、ガスの発生でお菓子などの食品を膨らませていたんですね。こう考えるとお菓子やパン作りってお料理の範疇をこえて、化学の実験みたいに感じてしまいます。酸剤にあげられる化学物質の名前をきくと、体には有害だと言われている物質も実際にありますが、膨張剤の中に含まれる量はごく微量であるため人体への危険はないと調査報告に上がっています。即効性の膨張剤や持続性のある膨張剤などを上手に使い分けて、ふっくらと美味しいお菓子作りを楽しんでくださいね。