2017年12月11日更新

プロピレングリコールの食品添加物としての用途

プロピレングリコールという物質名を聞いたことはありますか?安全性が高く、無色透明な液体の形状をしていますが、主に食品以外の用途に使われている毒性のある物質であるとされています。

  1. 目次
  2. プロピレングリコールとは
  3. 用途や使用されている食品
  4. プロピレングリコールの安全性

プロピレングリコールとは

プロピレングリコールとは、保湿剤や乳化剤として使用されることの多い有機化合物の一つです。また、少しの粘性があり、水や精油、樹脂などに溶解することから様々な溶剤として用いられることの多いアルコールでもあります。

インクなどの溶剤や洗剤の安定剤、化粧品の保湿剤、内服薬や注射液を調剤する際の溶剤などとして使用されることがあります。

さらに、この物質と脂肪酸がエステル結合してできたプロピレングリコール脂肪酸エステルという化合物がありますが、これは食品や化粧品用の乳化剤、油脂などの加工の際に使用されています。ただ、プロピレングリコール脂肪酸そのものの乳化剤としての働きはさほど大きくないため、他の乳化剤と併用して補助的に用いられることが多いようです。

用途や使用されている食品

プロピレングリコールは、化学的に安定した物質であり、低用量の摂取であれば毒性は低いとされている上、かすかな苦味はあるものの、甘味のある無臭の物質であることから、様々な食品添加物として使用されています。

例えば、防カビ性がある特性を活用して、麺類やおにぎりなどの品質保持剤として使われたり、保湿性があることから餃子や春巻きなどの皮、イカの燻製品に使われたりしています。また、チューインガムの軟化剤として使用されることもあるようです。さらに、水やエタノールをはじめとする様々な溶媒に溶けやすい性質があることから、着色料や香料などの添加物の溶剤としても幅広く使用されています。

プロピレングリコールは、食品に直接使用される用途は限られているようですが、間接的には幅広く使われていることがあるようです。

プロピレングリコールの安全性

プロピレングリコールは、食品添加物や他の用途でも、一般的に使用される際には原液を薄めたものを使っているので、低用量の摂取であれば健康上問題ないとは言われています。

しかし、元は自然由来のものではなく、毒性の強い有機化合物であることに変わりはありません。そもそも、私たちの目や皮膚に触れた場合、発赤、炎症などの刺激をもたらす可能性のある物質とされてます。さらに誤飲してしまうと、脳、肝臓、心臓などに障害をもたらしたり、溶血したりする危険性もあります。

また、プロピレングリコールは法律で危険物第4類として分類されており、生活環境保全条例においては規制対象物質とされている側面も持っています。
使われる量が微量とはいえ、この毒性の強い物質が、食品はもちろん、化粧品類やシャンプー、リンスなど、私たちが日常的に直接肌にのせて使用するものに多く使われているということは事実として知っておくべきでしょう。

犬や猫などのペットに対する毒性について

近年、犬や猫を家族同様に可愛がるペットブームの傾向から、人間の食の健康同様に、多くのペットに与えられている市販のペットフードやサプリメント、おやつなどにも愛玩動物の健康に影響がないかどうかと問われる声が上がるようになりました。

そんな中で、ペットフードに関してアメリカで大規模な愛玩動物の健康被害の問題が発生し、日本にも輸入されていたそのフードが輸入メーカー側より自主回収された事件がありました。日本では被害が出なかったものの、それがきっかけとなりますますペットフードへの不安の声が高まり、それまで規制がなかった愛玩動物のフードについて、2009年6月1日に環境省と農林水産省の管轄のもとで「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」が施行され、ペットフードに対して基準や規制の検討がなされるようになりました。

その中で、プロピレングリコールは猫用のフードには製造の基準の添加物に用いてはならないという基準が決められています。これは調査データーや科学的なデーターをもとに検討された結果から決められたものです。

犬のセミモイストタイプのフードにおいては、試験結果からは健康に影響は出なかったと報告がなされており、保湿効果を向上させることやソフトな感じを出すために使用されています。

しかし猫についてはプロピレングリコールを添加したものを摂取すると赤血球の表面に免疫抗体が結合して赤血球が破壊されてしまい貧血を起こすというハインツ小体を発症するとか、赤血球数の変化が見られるという試験結果があり、それにより猫用のフードにはプロピレングリコールの添加は禁止されています。平成26年3月の「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律」の中でもその規定にいまだ変わりありません。