2016年11月18日更新

硫酸銅は農薬として使用されるほどの劇物なのに食品に使用可能な理由

硫酸銅

硫酸銅は、学生時代の化学の時間に有毒な物質であると学んだ記憶のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしその危険な硫酸銅が、食品に使用されているということはご存知でしょうか。一体どのような食品に使用されているのでしょうか。

  1. 目次
  2. 硫酸銅とは
  3. 致死量も設定。その毒性とは
  4. 乳児用のミルクにのみ使用可能

硫酸銅とは

硫酸銅とは、一水和物や三水和物などもありますが、一般的に硫酸銅五水和物を言います。水に溶けやすく、水溶液は青色を呈しますが、銅が含まれているため急性毒性があります。そのため、国では劇物指定されている他、法律によって「医薬用劇外品」とされ、取り扱いには十分気をつけなければならないものとされています。

致死量が設定されている?その毒性とは

硫酸銅の毒性は強く、塩基性硫酸銅の致死量は200mg/kgとされています。摂取すると、溶血、肝臓や腎臓の壊死が起こる可能性が示唆されています。また、子どもの皮膚やけどに硫酸銅を塗布したところ、深刻な溶血性貧血を引き起こしたという報告もあります。

乳児用のミルクにのみ使用可能

硫酸銅は毒性が強いにもかかわらず、食品にも使われることがあります。注目すべきは、それが乳児用のミルクに使用されているという事実です。銅は、乳児にとっては必要な成分とされており、特に完全に人工乳に依存している乳児には微量の銅の摂取が必要とされているようです。そのため、国から標準調整濃度に調乳した際に6mg/Lまでは強化剤としての摂取が認められています。

硫酸銅の使用は、日本では母乳代替食品にしか認可されていませんが、中国では工業用の硫酸銅がピータンに使用されていたとして一時期話題にのぼりました。ピータンはアヒルの卵からできていますが、これを短期間で黒ずませるために硫酸銅が用いられたようです。

輸入元の対応は、十分に検査しているので大丈夫とのことだったそうですが、このような商品が他にも日本に輸入されていないか、非常に懸念される事態です。

また、直接口にすることはないものの、硫酸銅は農薬であるボルドー液にも使用されています。ボルドー液は、主に果樹や野菜の栽培に使われており、硫酸銅の殺菌作用を活用して、消石灰と混ぜて作られています。消石灰もヒトが摂取するのはあまり良くありませんが、本来毒性のある硫酸銅と混ぜることによって、何か私たちの健康に影響はないのか気になるところです。しかし、ボルドー液を農薬として使用しても、収穫物の人体への影響はほとんど無いとされているようです。さらには、ボルドー液を使用した農産物には「有機農産物」と表示することも認められています。

硫酸銅は毒性が強い物質であることが明らかであるだけに、食品に使用されるのは、国による使用制限が厳しくなっています。さらに、出荷される前に検査も行われているので、私たちが硫酸銅を摂取するということはほとんどないと捉えても良いかもしれません。