2017年10月26日更新
柿の種類・品種・産地。渋柿の見分け方も
秋が旬の柿、美味しい秋の味覚の一つですよね。柿は古くから日本で栽培されており、今ではその品種は1000種類以上だと言われています。今回は柿の種類と品種について調べました。渋柿の見分け方、そして種類別に柿の品種とその産地をご紹介します。
柿にはこんな種類がある
英語で柿は「persimmon(パッシモン)」と表記されますが、学名は「kaki」です。柿は日本をはじめ、中国など東アジアが原産の果物です。
日本の古い書物の中にも柿は果樹として登場しており、平安時代の頃から栽培されていたと思われます。ヨーロッパやアメリカの柿は日本から伝わったものであるという説が有力なので学名がこのように付けられていると言われています。そんな柿の品種は今や1000種類以上にも及ぶと言われている果物です。
たくさんの品種がある中で、日本で収穫される柿の種類は大きく分類すると甘柿と渋柿、そしてその中間に不完全渋柿という種類に分類されます。
甘柿とは
そもそも柿は液体に溶ける性質のタンニンを果肉に含んでいるので、実が未熟な時期はどの柿も渋みがあります。
甘柿のタンニンは成熟していく中で水に解けない状態になるため、成熟した実に渋みがなく甘い実になります。ちなみに甘柿の実を見ると黒い斑点が見られますが、これは水に溶けないタンニンが固まったあとだそうです。
渋柿とは
渋柿は成熟しても液体に溶ける性質のタンニンが果肉にそのまま残っているので未熟な実の頃と同様に渋みがあります。
この渋柿はそのままの状態では食べることができず炭酸ガスなどを使って渋抜きの加工が施されて食されます。渋抜き加工された柿は「合わせ柿」とか「さわし柿」と呼ばれます。
また渋抜きしない渋柿は干し柿として利用されます。
不完全渋柿とは
甘柿とそうでない柿が種類の中で混在しています。タンニンの不溶性の性質をそのまま残すことが多少影響している状態の柿です。一つの木で甘い柿と渋柿が混じって実る品種もあります。
その他の種類
日本の柿の種類はこの3種類に分類されますが、そのほかに輸入の柿もあります。輸入の柿はイスラエル産の「Triumph」種という柿です。日本をはじめヨーロッパやアメリカなどに輸出されています。
日本に輸入されるフルーツはイマザリルのような防カビ剤の存在が気になりますが、柿については「病害虫が付着するおそれがない植物」に分離されており輸入植物検疫の対象ではないとのことです。
輸入植物検疫の対象とならない植物について
輸入植物類に病害虫が付着して日本に侵入することを防ぐことが目的の輸入植物検疫では、病害虫が付着する可能性のある植物はすべて検査の対象となります。
ただし、家具や製茶のように高度に加工されたもの、瓶詰めされた乾燥香辛料などで密閉されているものなど、植物検疫の対象となる植物の病害虫が付着するおそれがない植物又は、植物加工品等は輸入植物検疫の対象となりません。
輸入植物検疫の対象とならない植物
- 製材、防腐木材、木工品、竹工品及び家具什器等の加工品
- 木材こん包材(木材こん包材についての詳細は、木材こん包材の輸出入をご覧ください)
- 籐及びコルク
- 麻袋、綿、綿布、へちま製品、紙、ひも、綱等の繊維製品及び粗繊維(原綿を含む。)であって植物の包装材料として使用されたことのないもの。
- 製茶、ホップの乾花及び乾たけのこ
- 発酵処理されたバニラビーン
- 亜硫酸、アルコール、酢酸、砂糖、塩等につけられた植物
- あんず、いちじく、かき、キウイフルーツ、すもも、なし、なつめ、なつめやし、パインアップル、バナナ、パパイヤ、ぶどう、マンゴー、もも及びりゅうがんの乾果
- ココやしの内果皮を粒状にしたもの
- 乾燥した香辛料であって小売用の容器に密封されているもの
対象ではないからといって防カビ剤が使われていないと断言はできませんが、国が検疫が必要ないよと認めているくらい日持ちがするということになりますね。
【関連リンク】
・防カビ剤イマザリルとは。毒性や使用基準
不完全渋柿が甘いかどうかの見分け方
不完全渋柿は同じ木の実でも渋柿の場合もあるし甘柿のものもある場合があります。
渋柿か甘柿かの見分け方はたとえば種ができる物は渋みが抜けて甘くなり、種ができないと渋みが残る傾向があるといわれたり、また断面にタンニンの固まったあとの黒い斑点であるゴマというものがたくさんあるものは甘柿、ないものは渋柿と見てわかると言われます。
しかし切って断面を見て判断するのでは出荷できないので、昔はともかく勘で見分けていた時代もあり店頭に並んだものを買って渋柿だったということもあったようです。
今は自動選別機や甘渋判定機というものを使って渋柿か甘柿か見分けて出荷されるので店頭並んでいる柿を購入し渋柿に当たってしまったということがほとんどなくなりました。
種類別で見た代表的な柿の品種
甘柿、不完全渋柿、渋柿の代表的な品種をご紹介します。主な産地と見た目の特徴そして不完全渋柿の品種については甘柿か渋柿の見分け方を添え記載しました。
甘柿の代表的な品種
富有柿(ふゆうがき)
産地は奈良、福岡、岐阜、和歌山など西日本で多く栽培されています。甘柿の生産量の約80%を占めている品種です。
見た目は丸みのある四角い形で光沢のあるつるつるしたきれいなオレンジ色をしています。旬は10月下旬~12月下旬です。ちなみに次に紹介する次郎柿と並んで柿の代表と言われています。
富有柿の果肉が柔らかいのに対して次郎柿は硬めのシャキとした歯ごたえのある食感の柿であるため、その食感をたとえて「富有はあごで食べ、次郎は歯で食べる」などとちまたでは言われています。
次郎柿(じろうがき)
産地は愛知が大半を占めますが、埼玉、三重、静岡、そして東京などでも栽培されています。
見た目は四角い形をしていてデコボコと起伏があります。側面には浅い線状のくぼみのあるものもあります。種はありませんが果汁も少なめです。
果肉は硬くコリコリした歯ごたえのある食感が特徴です。富有柿と食感が対照的なためよく比較されますが、美味しさは富有柿に軍配が上がってしまいがちです。
御所柿(ごしょがき)
現在はごくわずかしか生産されていませんが甘柿のルーツであるということでご紹介する御所柿の産地は奈良県御所地区。
しかし現在はほとんど残存していません。わずかに残っている木から収穫され貴重な柿です。
正岡子規の有名な句である「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」に登場する柿がこの御所柿だと言われています。小ぶりながらも大変甘い柿です。旬は11月の中旬~12月上旬と言われます。巡り合えたらぜひご堪能ください。
不完全甘柿の代表的な品種
西村早生柿(にしむらわせがき)
産地は福岡が主な産地であるほか岐阜、茨木、鹿児島、などで栽培されています。
見た目はやや丸みのある形でつやのある淡いオレンジ色をしています。果肉は硬めで程よい果汁があります。切った断面にタンニンが固まり酸化した黒茶色の斑点がたくさんあるものは甘く、ないものは渋いと言われます。
しかし出荷するのに断面を切って確認するわけにはいかないので、出荷の前は甘渋判定機で甘さと渋さをチェックしてから出荷されます。ですから店頭には渋柿は並びませんのでご安心してお求めください。旬は9月下旬~10月上旬と早い時期に美味しい柿です。
筆柿(ふでがき)
産地は愛知県です。見た目は小ぶりで、筆先のような形が特徴です。1本の木に甘柿に交じり1割程度、渋柿がなります。
種がないと渋柿、種ができると甘柿だと言われ、断面にタンニンが固まったゴマがたくさんあれば甘く、ないと渋いといわれます。今は自動選別機を使い渋柿か甘柿かを見分けて甘柿を出荷しています。旬は9月下旬~10月初旬と言われます。
渋柿の代表的な品種
平核無柿(ひらたねなしがき)
産地は山形と和歌山は栽培面積が大きいほか、新潟、山梨、奈良などでも栽培されています。
見た目は扁平な四角い形をしていて光沢のあるオレンジ色をしています。程よい硬さの食感です。渋柿なので炭酸ガスなどを使い渋抜き加工してから出荷されます。
その名の通り種がないのが特徴です。和歌山県では手の平いっぱいで握るほどの大きい(クイーンパーシモンと呼ばれる)ものもあります。旬は10月下旬~12月初旬です。
刀根早生柿(とねわせ)
産地は和歌山が全国の栽培面積の半分を占めるほか奈良をはじめとする各地で栽培されています。平核無柿の枝変わりの柿です。
渋柿なので渋抜き加工されてから出荷されます。平核無柿同様に種がないのが特徴です。平核無柿より10~15日早く実がなります。見た目も味わいも平核無柿とほとんど変わりません。旬は9月下旬~10月上旬、ハウスものは7月に出荷され、夏に柿を味わうことができます。
紀の川柿(きのかわがき)
この柿は木になっている平核無柿を木にならせたまま渋抜きした方法で栽培された柿です。
平核無柿がまだ色づかない青柿のときに、固形アルコールの入っている袋に果実一つずつかぶせ、ほぼ丸一日おいて渋味を抜きます。時間が経過したら袋の底を切り開き、十分に熟して色付くまで袋のカサを被せたままにします。
渋抜きするのに手間がかかることや、和歌山県北部の紀ノ川流域でのみで生産される産地限定であるため普通の平核無柿と比べ価格が高めです。
大きさなどは普通の平核無柿と同じですが、皮の色が木につけたままの完熟させたものなので濃いオレンジ色をしています。断面はたくさんタンニンのあとの黒いゴマが入っており果肉はオレンジ色というよりこげ茶色だとさえ感じます。完熟していても、グジュっと柔らかいわけではなくしっかりとした歯ごたえのある食感です。旬は10月下旬~11月中旬です。
柿の品種はこんなにたくさんあります!
柿に種類は大きく分けると甘柿と渋柿、そして不完全甘柿があります。最初はみんな渋み成分を含んでいますが、成熟途中で液体に溶ける性質だったタンニンが不溶性のタンニンとなって甘みが出る甘柿の品種はご紹介あげたほかにも11品種ほど、不完全甘柿はそのほか2品種ほど、渋柿は17品種ほどあります。
渋柿と甘柿の見分け方は断面を見たり、種があるかどうかで見分けると言いますが、今はほとんど器具を使って見分けてから甘柿のみが出荷されているので、「買った柿が渋かった」などということはほとんどありません。希少まれな柿や産地限定も柿も食べてみたいものです。柿!味覚の秋に美味しく召し上げってください。