2017年12月18日更新
二酸化硫黄の毒性。使用を禁止されている食品は?
二酸化硫黄は、自動車の排気ガスに含まれる物質であり、公害や環境汚染をもたらす可能性のあるものとして知られています。一方、食品添加物として、食品や飲料の酸化防止や保存、漂白などに使用されていることもあり、私たちも普通にそれを摂取していますが、これには健康への影響が懸念されます。
二酸化硫黄とは
二酸化硫黄は、刺激臭のある無色の気体で、別名で亜硫酸ガスとも呼ばれています。車の排気ガスや工業活動、また火山活動のような自然界でも発生することがあります。
二酸化硫黄は酸性雨や公害の原因にもなる毒性の強い物質です。かつて、日本における有名な公害で足尾銅山鉱毒事件、四日市ぜんそくなどがありましたが、これらの発生原因は工業活動などの影響で、二酸化硫黄が発生したことによるものとされています。
二酸化硫黄は、私たちの体内に入ると、せきや気管支炎、気管支喘息などを引き起こします。また、動物実験により胃から出血したり、体重が減少したりする可能性があることも分かっています。一定量の二酸化硫黄が含まれているワインを毎日ラットに飲ませるという動物実験を行ったところ、肝臓に障害がみられたという結果もあります。また、発がん性や催奇形性、腎臓への障害なども心配があるとされています。さらに、水に溶けると亜硫酸になるので、それを摂取した場合に胃腸を刺激され、腹痛や下痢を引き起こす可能せもあります。
人体にとって有害であることが明らかになっている二酸化硫黄ですが、衣類や紙の漂白剤や殺虫剤、また食品添加物としての用途があります。
二酸化硫黄の臭い(におい)
二酸化硫黄は刺激臭が強いと言われます。では実際にどんな臭いかというと、二酸化硫黄の臭いは火山の噴煙や温泉を思わせる臭いです。また温泉街に行くと腐った卵のような臭いがしますよね。あの臭いを思わせる臭いです。
日本には活火山がいくつかありますが、例えば長野県の浅間山が噴火したときはたくさんの二酸化硫黄が放出されたそうです。浅間山とは限らず三宅島や伊豆大島の噴火の際にも火山ガスと共に二酸化硫黄が観測されています。火山が噴火のする時のあの温泉の硫黄のような臭いを思わせる臭いが二酸化硫黄の臭いです。
二酸化硫黄の性質
硫黄の粉末に火をつけて乾いた臭気ビンの中で二酸化硫黄を発生させて、その性質を調べた実験から得られた二酸化硫黄の性質は、
- 気体となっては発生した二酸化硫黄は腐った卵のような刺激的な臭いがあり無色である。
- 蒸留水を加えてみた結果、水には溶けやすい性質であり、その水溶液は酸性を示すがしばらくすると白くなることから漂白性がある。
- ほかの物質と反応させてみた結果、二酸化硫黄は還元剤として働き、また酸化剤として働く性質がわかる。
- 有毒を発する。
このような性質のほかに、紫外線を吸収すると蛍光を発する性質があります。その性質を利用して環境省では、その蛍光の発色の強さをもとに、大気に含まれている二酸化硫黄の量を測り大気汚染の尺度にすることがあります。
また生態系に悪影響を及ぼすと言われる酸性雨の原因のもとを作り出す性質があります。火山活動や人為的に燃焼させた燃料よって放出される二酸化硫黄(そのほか窒素酸化物など)は大気中で光化学反応などの化学反応をおこして硫酸や硝酸に変化する性質があり、変化した物質が雨や雪などに溶け込み酸性雨となって降り生態系に悪影響を及ぼすことがあります。そのため世界の気象を観測する拠点では大気観測の測定の物質として観測しています。
ちなみに二酸化硫黄の特徴となる性質ではありませんが、火山噴火の際には火山ガスと一緒にたくさんの二酸化硫黄も放出されることから、気象庁は火山口から放出される二酸化硫黄の放出量を調べて火山活動の参考にされている物質でもあります。
食品添加物としての用途
二酸化硫黄は昔から防腐剤やワインなどの保存に使用されてきました。古代ローマ時代に遡ると、ワインを作るため樽に亜硫酸ガスを発生させていたとも言われています。
ただ、二酸化硫黄が食品に加えられるのは、防腐の目的ではなく、見た目を良くしたり、殺菌をしたりする意味合いが大きいようです。具体的には、食品添加物として保存料、漂白剤、酸化防止剤などに使用されています。また、干し柿が作られる際に保存性を高めるために、粉末を吹きかけることがあるようです。
使用されている食品。使用が禁止されている食品も。その理由とは
二酸化硫黄が使用されている食品例を紹介します。
保存料として
まず、保存料として使用されているのが果汁、ジュース類、ワインなどです。特にワインは製造過程において大切な役割を果たしているとされています。
漂白剤として
漂白剤として使用されているのが、かんぴょうや煮豆、甘納豆などです。
酸化防止剤として
酸化防止剤として使用されていることがあるのが、エビやカニ、ドライフルーツなどです。
ただし、二酸化硫黄は人体にとって有毒であるとされているため、これらは使用基準が決められており、使用量も食品ごとに制限があり、私たちの食卓に届くまでには厳しい検査を経ているものとされています。
そして、二酸化硫黄はゴマや豆類、野菜には使用が禁止されています。二酸化硫黄でこれらを漂白する目的で使用することは、それらの品質や鮮度に関して、消費者の誤解を招く可能性があるからとされています。
【参考文献】
・国立大学法人大阪教育大学 硫黄の化合物 http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~hiroakio/2008/08ko-047.html
・国土交通省・気象庁・酸性雨に関する基礎的な知識 http://www.data.jma.go.jp/gmd/env/acid/info_acid.html
・環境省・大気中の二酸化硫黄等の測定方法の改正について http://www.env.go.jp/hourei/01/000052.html