2021年2月1日更新
キャッサバは毒抜きが必要?タピオカやタロイモとの違いも
キャッサバは海外で日常的に食べられている芋の1種です。名前だけは聞いたことはあるけれど、売っているところは見たことがないという人がほとんどではないでしょうか。一体どんな芋なのか、見ていきたいと思います。
キャッサバとは
キャッサバは南アメリカ原産のトウダイグサ科の多年生木本で、原産地では古くから塊根(でんぷん質を蓄えた根が丸く膨らむ植物)を食料として利用していました。
英語ではキャッサバ(cassava)またはタピオカ(tapioca)、フランス語ではマニオク(manioc)と呼ばれます。
世界各地に広がったのはコロンブスの新大陸発見(1492年)以降だといわれています。
キャッサバの世界総生産量は約1億2000万t(2012年時点)で、主な産地はナイジェリア、ブラジル、インドネシア、タイなどとなっています。用途は生産量の95%が直接の食用となっています。
トウダイグサ科のキャッサバは多年生で、国際熱帯農業研究所(IITA)の研究によると、他作物が育ちにくい土壌や気候条件下でも良く育ち繁殖も容易だということです。
キャッサバの根には毒がある
品種によって芋の大きさも異なり、400gのものから2kg近いものまでさまざまです。表面は灰褐色で粗い木目模様が目印です。芋の中は白くて甘いでんぷん質で満たされており、必ずそのままではなく、水に浸けたり火を通してから食べます。
これはキャッサバの根には青酸配糖体という化合物が含まれているからです。現在では毒性の低い品種も作られているようですが、必ず下処理は必要です。
日本でも栽培されている
日本ではあまり馴染みのない食材ですが、戦後の食糧難の時にはサツマイモの代わり蒸して食べられてきました。今でも静岡や沖縄では、キャッサバを生産している農家があり、芋の部分だけでなく苗まで買うことができます。
自宅で栽培したいという人は、ぜひチェックしてみてくださいね。
【参考】日本のキャッサバ栽培(M&Kエムケーラボラトリーズ)
キャッサバとタピオカの違いは
キャッサバと聞いて、タピオカを思い浮かべた人もいるかもしれませんね。
キャッサバの根を水に溶かしながら粉砕し、繊維質を濾して水に溶け出したでんぷん質を抽出したのがタピオカの原料、タピオカ粉です。
タピオカはキャッサバを原料に作られているんですね。
また、キャッサバから採れる粉には、キャッサバ粉というものもあります。これは、キャッサバの根の皮を乾燥、粉砕したもので、タピオカ粉の製造工程で省かれる食物繊維がそのまま含まれた粉になります。
ちなみにタピオカ粉は海外食材コーナーや製菓コーナーで簡単に手に入るため、自宅でタピオカを作ることができますよ。
キャッサバとタロイモとの違いや類似点
世界を旅するとたくさんの品種の芋類を目にしますが、キャッサバと同様に世界で馴染みのある芋類の一つにタロイモという芋類があります。
キャッサバと同じく日本ではあまり聞きなれない名前の芋類ですが、ハワイをはじめ主に南太平洋の島々では重要な食材として食べられています。
キャッサバとタロイモの違いは、キャッサバは常緑低木の根茎である芋類ですが、タロイモは熱帯性植物の草の地下に育つ根茎の芋類です。たとえば日本のサトイモ(里芋)は実はこのタロイモの一種なのです。
タロイモは東南アジア原産で南太平洋の島々で広く栽培されているサトイモ科の多年草です。サトイモの品種群の総称をタロイモと言います。
タロイモはキャッサバと違い、毒性のある部分はありません。タロイモはキャッサバのように甘みもありません。タロイモはえぐ味や渋みが強いので、水にさらすだけでは食べられず必ず加熱調理しなければなりません。キャッサバは粉にして調理しますが、タロイモはそのままの状態を加熱調理して食べます。
またキャッサバと違いタロイモは種類によって皮の下に日本のサトイモのようにヌメリのあるものがあります。このヌメリを洗い流すときには手が痒くなってしまうこともあります。
それはタロイモに含まれているえぐ味の成分であるシュウ酸カルシウムが、皮を剥くことで針状の結晶に変化し、この針が手に刺さるため痒みを感じるのです。日本のサトイモを洗うとき手が痒くなるのは、この針が刺さるため手が痒くなってしまうのです。
それぞれ違う面を持ち合わせているキャッサバとタロイモですが、どちらもでんぷんを主成分とした低カロリーの食物繊維が豊富な食材だという点はこの二種類の芋類の類似点です。
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キャッサバの味や栄養素
キャッサバはジャガイモ、サツマイモに並ぶ世界3大芋類の1つで、主にタピオカ粉専用の苦味種と、ジャガイモと同じ食べ方をする甘味種のいずれかが、加工されて流通しています。
どんな味?
キャッサバの多くがでんぷん質から成ることから甘みがメインですが、その中に、わずかな渋みがあるのがキャッサバならではの特徴です。
甘味種を蒸せばサツマイモのような味わいになり、苦味種で作ったタピオカにはでんぷん由来の甘みが感じられます。いずれもにおいが強くないため、多くは他の食材と合わせて使われます。
キャッサバの栄養素
キャッサバのカロリーは100gあたり160kcal。これはジャガイモの約2倍で、根の部分を食用とする熱帯地域のでんぷん類植物の中でトップクラスです。
カロリーの正体をさらに詳しく見ていくと大部分はショ糖であり、炭水化物全体の69%以上を占めます。次いで多糖類の16%-17%となっています。
脂質やタンパク質は他の穀類や豆類に比べると低いですが、サツマイモやジャガイモ、ムジナオオバコといった熱帯地域原産の食材の中では高めです。
そして根茎類と同じように、キャッサバのでんぷん質はグルテンを含まないため、グルテンアレルギーの食事療法でよく使われます。
キャッサバは現在でも熱帯地域の人々にとって重要なミネラル源であり、亜鉛、マグネシウム、銅、鉄、モリブデン、カリウムを含みます。中でもカリウムの含有量が多く、カリウムは心臓や血圧を調節するのに需要な役割を担っています。
キャッサバの毒抜き方法や食べ方は
前述のとおりキャッサバには植物由来の毒があり、毒抜きが必要です。では、実際にキャッサバが食べられている地域ではどのように調理されるのでしょうか。
毒抜きの方法
キャッサバに含まれるリナマリンは、青酸配糖体を生成し、毒性を増やします。
中毒症状の軽い人で嘔吐、頭痛、めまいといった症状が、重度になると四肢の痙攣、意識混濁、呼吸低下が起こり、生命が危険にさらされることも。
それでは、確実にやっておきたい毒抜きの方法をいくつか紹介します。
皮むき
新鮮なキャッサバは毒の90%が皮に集中しています。まずは細かく皮をむいてよく洗います。これが基本的な毒抜き方法のファーストステップです。
茹でてから水に漬ける
まず2時間茹で、茹で汁を換えて更に2時間茹でます。その後水を換えて16時間以上浸けてから食べます。この方法で84%の毒素を抜くことができ、一般的にこの状態では中毒症状は出ないとされます。
生のまま水に漬ける
皮をむいたキャッサバを、4-6日間水に浸けます。水は毎日換え、取り出したら柔らかくなるまで煮るだけ。
時間はかけても手間はかけたくない人におすすめです。
食べ方
カリブ海の島々ではキャッサバの根を乾かして作ったキャッサバ粉でパンやケーキ、クッキーを焼きます。
ナイジェリアやガーナでは、キャッサバ粉に蒸したサツマイモを合わせ、煮物として食べられたりもするようです。
美味しく食べるには本場の人々の食べ方を参考にしてみるのもよいかもしれませんね。
これまで食べる機会のなかったキャッサバですが、タピオカ以外にも食べられていることが分かりました。
南米生まれで栄養満点なキャッサバをぜひ味わってみてください。
【参考】世界のキャッサバの生産動向(独立行政法人 農畜産業振興機構)