2017年2月7日更新

亜硝酸ナトリウムの毒性や発がん性

ハム

亜硝酸ナトリウムは、昭和32年7月31日に認可された食品添加物です。食品添加物としての用途はハムやソーセージ、イクラやタラコの発色剤として使用されます。一般的に発がん性があるといわれいている物質ですが、今回はどんな危険があるのかを調べてみました。

  1. 目次
  2. 亜硝酸ナトリウムとは
  3. 亜硝酸ナトリウムの発がん性
  4. 亜硝酸ナトリウムの使用基準、残存量の規制
  5. 亜硝酸ナトリウムの危険性
  6. 【まとめ】亜硝酸ナトリウムはそこまで危険じゃない

亜硝酸ナトリウムとは

亜硝酸ナトリウムは別名は亜硝酸ソーダといい一般的に発がん性がある食品添加物とされています。

亜硝酸ナトリウムを豚肉に発色剤として添加してハムやソーセージを作るとキレイなピンク色になります。また原料の肉臭さを消すことや、食中毒の原因として有名なボツリヌス菌の増殖抑制効果もあります。

添加せずにハムやソーセージを作ると、色は熱を加えた肉の色になります。わたしたちはハムやソーセージはキレイなピンク色だと子供のころから認識していますから発色剤を使わずに作られた褐色のハムを作っても売れなくなるのではないでしょうか。

亜硝酸ナトリウムの発がん性

亜硝酸ナトリウムに発がん性が疑われる理由

亜硝酸ナトリウムが発がん性がある食品添加物といわれる理由は、亜硝酸ナトリウムと原料の肉などに含まれるアミンという物質が反応して発がん物質に変化するためです。

アミンとは

アミン類は海で獲れた魚や魚の干物、魚卵などに比較的多く含まれている物質です。アミン類は食品が腐敗・発酵する過程で微生物(バクテリア)によって作られます。アミン類は食品中に含まれるアミノ酸が変化してアミンとなります。
アミンには種類があり、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンと呼ばれます。

アミンの生成

亜硝酸ナトリウムに発がん性があると言われる理由は第二級アミンと亜硝酸ナトリウムが胃の中で反応するとニトロソアミンという物質が作られるためです。

ニトロソアミンとは

ニトロソアミンは遺伝毒性発がん物質です。
遺伝毒性発がん物質とはがんの原因となる遺伝子の突然変異を起こす物質のことです。

ニトロソアミンが遺伝毒性発がん物質であるということは食品安全員会も認めています。

亜硝酸ナトリウムに発がん性はない?

亜硝酸とアミン胃の中で反応するとニトロソアミン(ジメチルニトロソミアン、トリメチルニトロソミアン)という発がん物質が生成されますが、生成される量はほとんど無視しても問題ない程度まで減少しています。

それはヒトががんにならないようADI(一日摂取許容量)や規格、基準が国によって定められているためです。

また食品安全委員会も平成21年に下記のとおりに発表しています。

本物質に関してはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)において評価が行われており、発がん性については1995年及び2002年の評価において、ヒトの摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠はないとされております。
また、1995年の評価において、「硝酸塩の摂取量は主に野菜に寄与している。しかしながら、野菜を摂取することの利点はよく知られており、硝酸塩の生物学的利用能※において野菜がどのような作用をもっているかは明らかではなく、野菜から摂取する硝酸塩の量を一日摂取許容量と直接比較することや、野菜中の硝酸塩量を限定することは適切でない」と評価されています。
食品由来の亜硝酸イオンによって、ヒトの健康に悪影響を及ぼしているという科学的知見がないことから、添加物として使用される亜硝酸ナトリウムが人の健康に悪影響を与えているという知見は得られていません。

これらが亜硝酸ナトリウムに発がん性があると言われる理由です。亜硝酸ナトリウム自体が発がん物質ということではなく、食品に含まれる物質と反応して発がん物質が作られるということです。

また食品中の成分の化学反応により遺伝毒性発がん物質が生成されるのは亜硝酸ナトリウムだけではありません。
例えば、

アスパラギンと糖を加熱調理するとアクリルアミドが生成されます。これはポテトチップスやコーヒーに含まれます。
魚や肉を加熱調理するだけでヘテロサイクリックアミンという発がん物質が生成されます。

亜硝酸ナトリウムの使用基準、残存量の規制

亜硝酸ナトリウムに発がん物質が含まれるのではなく、原料の成分と反応することで発がん物質に変化すると説明しましたが亜硝酸ナトリウム自体が劇物なのも事実です。

そこで食品衛生法では以下のように使用基準が定められています。

使用できる食品は、食肉製品、クジラ肉ベーコン、魚肉ソーセージ、魚肉ハム、いくら、すじこ、たらこです。

 ・食肉製品、クジラ肉ベーコンには最大残存量として70ppm
 ・魚肉ソーセージ、魚肉ハムには最大残存量として50ppm
 ・いくら、すじこ、たらこには最大残存量として5ppm

ppmは100万分のいくつであるかという割合を示しています。70ppmということは1kgに対し0.070g、5ppmは1kgに対し0.0050gになります。

硝酸を含む肥料を使った野菜には数十から数百ppmの亜硝酸が含まれているのでハムやソーセージに残存している亜硝酸ナトリウムの量がいかに安全かはお分かりいただけると思います。

ちなみに食品に添加する量の規制はなく自由に使用することができますが、残存量の基準は厳しく設定されています。

亜硝酸ナトリウムの危険性

確かに亜硝酸ナトリウムは毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています。しかし人間の唾液にはたくさんの亜硝酸イオン(NO2)が含まれていて、ハムなどから摂取する亜硝酸イオン(NO2)を1とするならば唾液から摂取する亜硝酸イオン(NO2)は150にもなるといわれています。

その他、キャベツや白菜、大根などの野菜にも亜硝酸イオン(NO2)は含まれています。特に硝酸を含む肥料を使った野菜に多く含まれます。

【まとめ】亜硝酸ナトリウムはそこまで危険じゃない

食品に添加されている亜硝酸ナトリウムだけを考えれば、それは危険といえます。
しかしわたしたちの体の仕組みを含めて考えるとそこまで危険とはいえないのではないでしょうか。

亜硝酸ナトリウムとアミンが反応してできる発がん物質以外にも家庭での調理過程でも発がん物質は生成されます。家庭での調理では規格や基準を決めたり、守ったりすることは困難ですので、心配な方はできるだけ原因につながりそうな食品を控えるしかありません。

【参考にしたサイト及び資料】
・農林水産省 「がん」と「遺伝毒性発がん物質」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/about/iden.html

・食品安全員会 廣瀬雅雄 食品に含まれる発がん物質のリスクについて
http://www.fsc.go.jp/koukan/risk-tokyo_220323/risk-tokyo_220323_shiryo1.pdf

・農林水産省 硝酸塩の体内での代謝
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/eikyo/001.html

・日本調理科学会誌 Vol. 47,No. 6,341~347(2014)〔講座〕 食品に含まれるアミン類
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/47/6/47_341/_pdf

・口腔衛生 学会雑誌 第29巻 第2号 昭和54年7月 ヒト唾液中の亜硝酸イオンの生成機構に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh1952/29/2/29_2_123/_pdf

・食品安全員会 本来的に食品に含まれる硝酸塩(概要)
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f04_nitrate.pdf

・食品安全員会 亜硝酸ナトリウム(発色剤)について
http://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07005000017