2017年8月18日更新

荒茶とは?荒茶の製造工程を見てみよう!

チャノキ

荒茶ってご存知ですか?聞きなれない名前ですよね。荒茶というのはいつも私たちが飲んでいるお茶の卵のようなものなんですよ。そこで今回はこの荒茶について調べました。荒茶の製造工程を知ることでいつも飲んでいるお茶のできるまでの道のりを知ることができます。

  1. 目次
  2. 荒茶とは
  3. 日本茶の製造工程
  4. 煎茶と抹茶の荒茶製造の違い
  5. それぞれの日本茶の始まりは荒茶にあり!

荒茶とは

荒茶とはお湯を注いで味わいを楽しむお茶のことではありません。チャノキから摘みたての茶の葉を蒸して乾燥しただけのまだ精製していない原料茶葉のことです。まだ製品価値の備わっていない半製品の「お茶の卵」のような状態です。水分もまだまだ含んでいて茶葉の形も不揃いのままの状態の茶葉を荒茶といいます。

私たちがお茶として楽しめるものはこの荒茶を商工業者が形状を揃え、まだ荒茶に含まれている水分を適度に乾燥させて、香味のバランスを整えたものです。私たちは荒茶を再生加工したお茶を煎茶などにして飲んでいるのです。

荒茶の製造工程

茶葉(生葉)は、摘採した時点から酸化酵素の働きによって発酵が始まります。日本茶の場合、茶の葉を熱処理(蒸す・炒る)することで発酵を止めて、葉の形状を整え、水分をある程度まで下げ、保存に耐えられる乾物状態にします。この乾物状態のお茶を荒茶といい、生葉から荒茶に仕上げる工程を荒茶製造と呼んでいます。

煎茶と抹茶の荒茶製造の違い

日本茶の製造工程を見るとたとえば一般的に緑茶として飲まれている煎茶と日本の伝統的な緑茶である抹茶とは荒茶を仕上げる工程に違いがあります。

煎茶の製造工程

チャノキから茶葉を摘採します。煎茶の場合一般的に、手摘みの場合は1芯2~3葉、機械摘みの場合は1芯4~5葉を摘み採ります。摘採したばかりの生葉は、まだ生きて呼吸をしているので熱を発します。

生葉の品質劣化防止・鮮度維持のために、湿度の高い空気を送って、水分の保持と呼吸熱を下げる作業が行われます。そして蒸すことで発酵を止めます。茶葉の色を緑に保ちながら青臭みを取り除くため、圧力のない蒸気でまんべんなく蒸します。このときの蒸し時間の長さによって、「お茶の味・香り・水色」の基本的な特徴が決まるといわれています。

蒸した茶葉を高温のまま放置すると、鮮やかな色あいが失われ香味も悪くなってしまうため、蒸した後は風を送り込み、室温程度に急速冷却します。そうすることで茶葉の色や香味を保つことができるのです。

温度が下がったら今度は揉んで茶葉の色や香味の向上をはかります。この時乾燥した熱風を送り込みながら柔らかく揉み続けます。適度に摩擦しながら揉み続け内部の水分を低下させます。揉んで茶葉の組織を破壊し茶葉の成分を浸出しやすくするのです。

よく揉まれた茶葉はくしゃくしゃに委縮し、形も不揃いですが、まだ水分をたくさん含んでいるため、乾燥した熱風を送り続け打圧を加えてまだ揉みます。それから茶葉を解きほぐし、よれた形を直して形が整うように乾燥させます。そうすることでちぢれていた葉が煎茶独特の細く伸びた形に整えることができます。

その後熱風乾燥で水分をさらに飛ばし、長期の貯蔵に耐えられ、お茶の香味をもった煎茶の荒茶が出来上がります。荒茶はまだ製品価値の備わっていない半製品の状態です。商工業者のもとで仕上げ加工を経てはじめて製品となります。

抹茶の原料となるてん茶の製造工程

てん茶の栽培方法は茶の葉に日光を当てずチャノキを被覆して栽培します。20日以上チャノキを覆い遮光します。被覆後、日にちが経過し柔らかな新芽に適度な張りが感じられるころになったら、1本1本指でしごいて摘採します。年1回の一番茶だけを摘採します。

煎茶の時と同様に摘採した生葉を放置すると熱をもちます。生葉の品質劣化防止・鮮度維持のために、まず湿度の高い空気を送って水分の保持と呼吸熱の低下をはかり、そして発酵を止めるために茶の葉を蒸します。煎茶よりも蒸し時間は短いです。およそ20秒程度といわれます。

蒸した茶葉は、高温のまま放置すると、色・香味とも悪くなるため、蒸した後はすぐに、風力をかける機械を用いて、葉同士が重なり合わないように拡散させながら冷却します。この後抹茶の原料となるてん茶は揉まずに170~200度の熱風で30分ほど乾燥させてしまいます。この工程により茶葉に適度な過熱香気が生成され、香味の調和がととのいます。

乾燥後の葉の部分はほぼ乾いています。しかし茎の部分は乾燥が進みにくいため、たくさん水分がまだ残っています。このため茎は切り落とし葉部と茎部(葉脈含み、骨と呼ばれる)に分けます。茎や葉脈は水分が多いため、再度乾燥させさらに葉と茎を風力で分離させます。

これがてん茶の荒茶の製造工程ですが、ここにできたてん茶の荒茶は運搬用の大きな袋に入れられて出荷されるのです。揉み作業を繰り返す煎茶に対して、抹茶の原料となるてん茶は揉み作業を行いません。そのため荒茶製造にかかる時間は、煎茶の約1/3時間で済みます。

それぞれの日本茶の始まりは荒茶にあり!

荒茶とは日常私たちが楽しむお茶の元のお茶のことです。この荒茶を商工業者が製品化して、そのお茶を私たちは煎茶や抹茶などとして楽しんでいるわけです。荒茶の仕上げる工程がお茶の香りや味、色の決め手になるほど、荒茶製造はそれぞれのお茶のベースとなり、お茶作りには大切な工程なのですね。美味しいお茶は荒茶製造にあり!といえるのではないでしょうか。日本茶の知識として覚えておきたい一つです。