2020年12月19日更新

コーヒーは発酵食品かな?製造過程と発酵方法について

コーヒー

後を引く香りと苦味のバランスが絶妙のコーヒー。コーヒーは発酵食品かどうか不明と思われる食品ですが、クセのある味わいのコーヒーは発酵というプロセスを踏むことで味の行方が左右されます。嗜好品として楽しんでいる方も多いコーヒーの発酵方法からコーヒー酵母、乳酸発酵、麹菌、酸素が関わる複雑な情報をまとめました。

  1. 目次
  2. コーヒーとはどんなものだろう
  3. コーヒーは発酵食品か?
  4. コーヒー豆は製造過程で発酵を経る
  5. コーヒーの発酵方法について
  6. バリエーションの広がりを見せるコーヒーの発酵
  7. コーヒー酵母とは
  8. コーヒーは発酵していた!その一杯にかけられる愛情を味わってみて

コーヒーとはどんなものだろう

コーヒーの実

コーヒー豆はアカネ科の植物であるコーヒーの木から収穫されます。コーヒーの果肉は完熟した状態になるとサクランボのように鮮やかな赤色になるため、コーヒー豆は別名コーヒーチェリーとも呼ばれています。

そんなコーヒーは気軽に飲めるものと答える方、こだわりを持っていると答える方、様々な楽しみ方があります。

コーヒーは突き詰めていくと非常に奥が深い飲み物です。市販されているコーヒーは粉末のものからドリップして飲むものなど、個々の嗜好によって好みの飲み方ができます。

しかし、そんな世界中で愛飲されるコーヒーは独特の香りやクセのある味わいから、発酵食品のカテゴリーに入るのではないかと疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

コーヒーは発酵食品か?

コーヒーは発酵食品か、という点ですが、結論から言えばコーヒーは発酵食品です。

コーヒー豆が収穫されてから私達が普段目にする状態になるまでに様々な工程を踏んでいきます。そもそもコーヒーはコーヒー豆を収穫した後に、果肉を処理加工して種の部分が見慣れたコーヒーの元になります。

コーヒー豆の生産処理は味わいが変化するだけではなく、輸送や保存の関係で腐敗を防ぐために行われます。こういった生産処理のことを「プロセス」と呼び、様々なプロセス方法を実施されることで口に入れた際の香りや味わいが変わります。

ちなみに、このコーヒー豆の生産処理は他にも「コーヒー加工方法」や「精製」とも呼ばれます。

コーヒー豆は製造過程で発酵を経る

コーヒーの実が馴染んだ豆の姿になるまでには、木の育成から収穫、生産処理、脱殻、焙煎という順番を経て消費者の元へ届きます。

コーヒーが発酵する段階は生産処理を行う際に進んでいきます。コーヒー豆が発酵食品に含まれるということは、ヨーグルトなどの乳酸菌を体内に取り込めるのかという疑問が出てきますが、焙煎が終わっているコーヒーは既に死滅した乳酸菌のみが含まれています。

生きたまま体内へ送ることはできませんが、死滅した状態でも腸内で善玉菌のエサになってくれるため、コーヒーは適度に飲むと体に良いと言われています。

しかし、コーヒーの発酵に関しては効用を期待するというよりも、発酵することによって発生する香りや味わいを楽しむという方向性に期待されています。

コーヒーの発酵方法

手間をかけずに飲めれば良いという方や、コーヒー豆によって抽出する道具を変えるほどこだわりを持っている方など、コーヒーにかける熱量は違うものの、万人に愛されるコーヒーはどのような発酵方法を経ているのでしょうか。大きく分けて2種類の果実を取り除くための方法があります。

水洗式(ウォッシュド)

水洗式(ウォッシュド)と呼ばれるプロセスは、その名の通り水につけて発酵させることで果実を除去する方法です。

コーヒー豆の果皮と果肉を機械で除去してから水へ浸すと、ほぼ完璧に果肉を除去することができます。水を使ったこの方法は、水の中に含まれる微生物の増殖が進むことで、その働きによりコーヒー豆を分解(発酵)していきます。

ただし、水洗式で発酵したコーヒー豆は腐敗に近い状態の欠陥豆になってしまうことが多く、その場合は取り除かれてしまいます。

水洗式で作られたコーヒーは香りや質の良い酸味を味わえ、この方法を定番として取り入れているのはブラジルやエチオピア、イエメン以外の地域です。

非水洗式(アンウォッシュド)

非水洗式(アンウォッシュド)と呼ばれるプロセスは、乾燥をメインに果肉を除去する方法です。

果皮と果肉を天日干しにして乾燥させた後に、機械的に除去が行われます。乾燥させる間は虫の被害や不純物が混ざる可能性も高くなりますが、しっかりと熟した味わいと香り、コクが楽しめます。

非水洗式では果肉に残った微生物が酸素と触れて増え、果肉や種の部分の発酵が進んでいきます。ブラジル、エチオピア、イエメンなどの地域がアンウォッシュド式を主流としています。

ちなみに非水洗式の方が乳酸菌発酵が進みやすいのだそうです。

バリエーションの広がりを見せるコーヒーの発酵

コーヒーは非常に歴史の古い飲み物です。上記で触れた製造方法や発酵などを用いて現代まで飲み続けられていますが、嗜好の広がりからコーヒーは多用性を求められる時代になりました。

コーヒーがもともと持っているおいしさを異なるおいしさにシフトさせられないかと、今現在でも試行錯誤が続けられています。次は上記でご紹介した以外の方法で作られるプロセスについて触れていきます。

アナエロビックファーメンテーション

アナエロビックファーメンテーションは日本語にすると「嫌気性発酵」です。もともとワインの製造工程で見られるこの方法を、コーヒーのプロセスにすることで特別な発酵が起こります。

発酵酵母の中には酸素を嫌うものがおり、酸素がない環境で活発になる酵母やバクテリアが存在します。それらを活発にさせるために、タンクや容器などにコーヒーチェリーを入れて酸素をなくした環境で発酵させる方法がアナエロビックファーメンテーションです。

一般的な発酵と比べ、フルーティーな香りや独特の甘みが発生します。

ハニープロセス

ハニープロセスは前述した水洗式と非水洗式の中間である「半水洗式(セミウォッシュド)」とほぼ工程が同じです。

ハニープロセスは中米産のものに対して言い、果皮、果肉を除去してから乾燥させます。コーヒー豆には殻の部分に「粘液質(ミューシレージ)」と呼ばれるネバネバとしたものが付いていますが、ハニープロセスはこの粘液質を付着させたまま乾燥が行われます。

その結果、ハニープロセス独自の甘い香りと味わいが引き立ち、クセのない魅力的なコーヒーが出来上がります。

また、ハニープロセスは粘液質をどの程度残すのかによって呼び方が変わり、90%除去されているものをホワイトハニー、75~80%除去されているものをゴールデンハニー、50%除去されているものをイエローハニー、20~25%除去されているものをレッドハニー、全く除去していないものをブラックハニーとしています。

マロラクティック(乳酸発酵)

マロラクティックという方法は上記でも少し触れましたが、もとはワインを製造する際に用いられる発酵プロセスです。
この方法は添加された乳酸菌の働きでリンゴ酸が乳酸に変化し、酸味を軽減させて広がる風味を引き出します。

コーヒーの果実に含まれるリンゴ酸が乳酸発酵することにより、甘さやなめらかさがアップしたコーヒー豆に仕上がります。

麹菌

コーヒーを発酵させる過程で麹菌を使ったものに注目が集まっています。その元となっているのは、幻のコーヒーと謳われるほど希少価値の高い「コピ・ルアック」という高級コーヒーです。

東南アジアに生息するジャコウネコがコーヒー豆を食べて排泄した豆を使用します。ジャコウネコの消化器官で発酵されたこのコーヒー豆は、麹菌を使うことで再現できるのではないかということで、麹菌発酵したコーヒーを開発しました。

麹菌発酵されたコーヒーはクリーミーで軽い口当たりと甘さが付加され、丸くカドが取れた味わいになるようです。

コーヒー酵母とは

そもそも酵母とは、含まれる糖をアルコールと炭酸ガスに変える善玉菌(微生物とも言う)のことです。

パン作りに詳しい方はコーヒー酵母や〇〇酵母という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、発酵や酵母などは良く似ているため違いが分からないという方も多いことでしょう。

酵母は簡潔に言うと目的のものをアルコール発酵させる親のようなものです。酵母があるから発酵するのですね。

コーヒーにも同じことが言え、コーヒー豆から起こした酵母をコーヒー酵母と言います。ナチュラル思考の方が多い現代では、コーヒー酵母のような自家製酵母を1から作り、パンやケーキ作りに活用しています。

コーヒー酵母を混ぜて作ったパンはふっくらと膨らみ、良い香りを放ちます。

コーヒーは発酵していた!その一杯にかけられる愛情を味わってみて

コーヒーは発酵食品か、についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。コーヒーはただでさえ種類が多いため、情報の多さに困惑させられる食品です。

歴史を刻んできたコーヒーは普段目にする段階では既に発酵し終えていて、それが普段楽しんでいる香りや味わいに直接アプローチされます。

一杯のコーヒーに手間暇がかかっていることを考えると、丁寧にゆったりとしたコーヒータイムを楽しみたいものですね。