2018年10月14日更新
アイゴという魚は毒に要注意!上手な調理の仕方とアイゴの料理をご紹介
釣りの世界では有名ですが、関東では知名度が低い魚です。独特の臭いが強く、味の評価は賛否両論ですが、魚好きの方からは「くさいが料理次第で内臓のぜんまいも予想に反し美味しい味わいだ」などと言われます。今回はアイゴの調理の仕方、そしてアイゴの美味しい料理のレシピをご紹介します。
アイゴとはどんな魚?
アイゴとはスズキ目ニザダイ亜目アイゴ科の魚です。学名はSiganus fuscescensと言います。関東ではほとんど食べることのない魚ですが、瀬戸内海や四国、九州では上手に調理されて食べられています。しかしアイゴの味の評価は賛否両論。それは磯臭さというよりアンモニア臭のような強烈な臭みがあることや、体のヒレの部分に毒のある針をもっていることなどから、味の評価はまちまちです。
九州の南部から奄美諸島の熱帯方面に近づくにつれて生息している数は増えます。国内では西日本に多く生息しています。体高が高く扁平な体つきをしており、体色は茶褐色で白い斑点がありますが、体色については生息域により多少色が異なります。成魚の大きさは30cmほどですが、40cmくらいの大きい個体のアイゴが釣れることもあるそうです。
沖縄ではバリと呼ばれている
アイゴは地方によって違う呼び名で呼ばれることがあります。とくに沖縄や西日本ではアイゴを「バリ」と呼んでいます。このように呼ばれるわけは、アイゴ特有の磯臭さが「小便くさい」ということからです。沖縄の方言で「バリ」とは小便の別名であり、それが由来して「バリ」と呼ばれているとのことです。
アイゴの毒には要注意!
アイゴの毒に関しては、釣りの世界でも、海釣りの対象魚の中でアイゴ=毒魚とされているほどです。背ビレ、腹ビレ、臀ビレの筋は硬くて鋭く、針のように発達していて、それぞれに毒腺があります。命にかかわる毒ではありませんが、これらの毒針に刺されると、数時間から数週間ほど患部が激しく痛みます。
毒針に刺された時は、手を入れてやけどしない程度の温度(40~60℃ほど)の湯に患部を入れ温めてください。こうすることで毒素が反応しにくくなるので痛みを和らげることができます。場合によっては傷口が可能することもあるので、そのような場合は専門医に受診するようにしてください。すでに死んでいるアイゴでも、毒針の毒は消えていないので、調理するときは毒針が刺さらないように、はさみなどで毒針を取り除いてから調理するようにしましょう。
アイゴの毒針の処理の仕方
ヒレの針のような固い筋に毒腺があるので、アイゴを調理する前は、まずはヒレを処理します。キッチンバサミを使って切り落としますが、この時、素手で魚に触れないようにしてください。調理用のゴム手袋や軍手、タオルを使い、尻尾または頭を押さえて切ります。毒針は手袋を貫くこともあるので、処理中は十分気を付けてください。
毒針が付いている腹ビレ、背ビレ、尻ビレに3~4mmほど身を付けて身と共にキッチンバサミで切り落とすと、毒針に刺さることなく処理することができます。尻尾の方から頭の方向に切っていくと毒針を刺すことなくカットできます。切り落とした毒針を手に刺してしまわぬように、切り落とした毒針は手で触らず、ハサミなどで挟んで捨てましょう。
アイゴの調理の仕方
アイゴの強烈な臭いは、皮と内臓から臭うので、皮と内臓を取り除けば臭いを防ぐことができます。さばいていると血管が黒っぽいことにグロテスクな感じをうけます。
しかし上手に処理したアイゴの味は、臭いから想像していたものより癖も少なく、味の良い白身魚の味わいだと言われます。
アイゴは皮を付けたまま加熱すると臭いが目立ってしまいますので、皮もそいで処理します。中には皮つきのアイゴの味は美味だという方もおられますが、その味覚については賛否両論です。
アイゴの基本的な処理
毒針の付いているヒレの処理が終了したら、基本的な処理をします。アイゴは鱗がありません。ただぬめりがあるので、水で軽く流してぬめりを取ります。頭を胸ビレと一緒に包丁でスパンと切断し、指で内蔵を取り出します。頭を切り内臓を付けたまま頭を引いて内臓を上手に取り出すこともできます。内臓は腸が長いため、内部でくるりと渦巻き状の一塊になっているので簡単に取り出すことができます。背開きで二枚、大きいものは三枚におろし、皮をはげば基本的な処理は完了です。
アイゴの皮のはぎ方
皮は頭の方から尾の方に向かってはいでいきます。皮をはぐと綺麗な白身になります。上手な皮のはぎ方は、皮を引くとき布巾で皮の端をつまんで皮を引くようにすると、滑らずに引けます。指に力を入れて皮をつまみ、包丁が走る方向と逆の向きに皮を引っ張ります。この時、包丁を動かすのではなく、布巾で皮をつまんでいる手の方を動かすと皮が途中で切れることなくはぐことができます。
アイゴのおすすめ料理
毒針を持っている上に、身が強烈に臭いので地域によっては調理されない魚ですが、西日本の徳島や和歌山、沖縄などではちょっと変わった味の美味しい魚として珍重されています。
余談ですが、アイゴを食する地方で使われている言葉に「アイゴの皿ねぶり」という言葉をありますが、これは「盛り付けた皿を舐めるほど美味しい」という意味あいの言葉で、アイゴの料理の味わいの表現に使われています。旅に出かけた時にこんな言葉を耳にした時の参考までに記憶のどこかにメモしておいてください。
沖縄へ旅行に行くと、アイゴの稚魚を塩辛にした料理が提供されることがあります。沖縄の人はこれを豆腐などにのせて食べるそうです。また稚魚は酢締めにしたり、そのまま唐揚げにして食べるそうです。沖縄ではアイゴの成魚は塩味で煮付けたマース煮という調理法でよく食されるそうです。
毒針を上手に処理し臭みを除けば、アイゴの味わいは悪いものではありません。身は歯ごたえのある白身で、刺身や洗いなど生でも美味しいと言われているほか、西日本地方では塩焼き、煮付けなどでアイゴを食べます。臭さは皮からにおったり、内臓から身に移るので新鮮なうちに処理をしましょう。生姜や柚子胡椒をふったり、梅酢などに浸けてくさみを消すのも美味しく食べる裏技です。
刺身
「アイゴの刺身など臭くて食べることはできない」と、その臭いを嗅いだ人は誰もが思いますが、上手に処理された新鮮なアイゴの刺身は、予想外に淡泊で上品な味わいです。皮や内臓の処理さえきちんとされていれば、強い臭みはありません。刺身の場合は大型の個体になると上手に処理をしても身が臭うものもあります。
刺身にするなら30cmくらいの個体で太ったものが美味しいと言われます。アイゴの刺身の食感は、たとえば鯛の刺身のようにモチモチとした食感です。アイゴは生の方が臭いが少ないとも言われます。
塩焼き
塩焼きはアイゴの料理のポピュラーな食べ方です。皮と内臓に独特の臭いがあるので 内臓と皮を取り除き下ごしらえした上で塩焼きにします。ともかく臭いがきついアイゴ。食べるときにはスダチやカボスなどの柑橘系の汁を絞るなどの一工夫も大切です。アイゴを食べる習慣のある地方の人でもアイゴの臭いは強烈だといいます。塩をまぶしてもどうしても生臭さが残ってしまうため、アイゴを食する地方では、塩焼きにする時に「たて塩」という方法で塩焼きにすることがあります。
これは海水濃度の塩水にアイゴを浸してスノコで水切りし、塩焼きにするのです。こうすることで余分の塩水と共に血や生臭い成分が身から落ちて食べやすくなります。海水の塩分濃度は塩35gに水1リットルですが、塩が多めの方がいいようです。30cmほどの大きさのアイゴで40~50分ほど浸します。
塩焼きにしたアイゴの味わいは、プリプリした身でなく、どちらかというとササミのようなパサパサとした食感だと言われます。アイゴの味わいを高く評価している人にすると、皮つきで塩焼きにしたアイゴの香り(ちょっと変わった磯臭さ)と食感はお酒と相性が合うようです。
内臓のぜんまい
内臓が強烈に臭いと言われるアイゴですが、食べることができないものではありません。魚好きの方は上手に調理し好んで食べる人もいます。雑食性で何でも餌にするアイゴの内臓は、その中身によっても臭さも違うと聞きます。またアイゴの内臓は腸がとても長く、渦巻き状になっておなかの中に納まっています。そんなことからアイゴの内臓は「ぜんまい」と呼ばれています。
腸そのものは黒っぽい色をしていますが、腸のまわりには白い内臓脂肪がついて渦巻き状になっています。アンモニア臭というか魚介類が腐った臭いというか、ともかく確かに強烈な臭いがします。しかしこのぜんまいを調理して食べる人もいます。
たとえば好奇心旺盛の魚好きの人は、このぜんまいに塩・コショウをしてフライパンで焼いて食べてみるとか。ぜんまいをフライパンで熱すると、内臓脂肪がとけだし臭いにおいより、香ばしいにおいがするそうです。そしてその味は、外側の大腸の辺りは強烈に臭くて、好奇心旺盛の魚好きの人でも食べられないと言います。ただ内部の小腸は多少臭みはあるけれど、脂が甘く濃厚な味のなかに、ちょっとほろ苦さがある珍味な味わいだそうです。
また、西日本ではぜんまいだけを煮たぜんまい煮という料理も一般的に紹介されています。味わいは独特の磯臭いような臭いさえ気にしなければ、程よいほろ苦さと、口に入れると軟らかく溶けるような味わいで美味しいそうです。
アイゴの美味しいレシピをご紹介
アイゴは毒針を取り除いて、基本的な処理を上手に行えば、強烈に臭みを感じないで美味しく味わえます。一工夫してアイゴのデメリットを上手に隠して美味しく調理してみましょう。
アイゴの梅こぶ和え
上手に処理された生のアイゴは、加熱したものより臭みもなく美味しい味わいです。それでも食べなれていない人には、アイゴの臭いが気になるかもしれません。生のアイゴに普段の塩の代わりに昆布のうま味の利いた塩と梅干しの酸味加え、アイゴの臭いを抑えた一品です。
<材料>
- アイゴ・好みの分量
- 塩昆布・調整しながら
- 梅干し・1~2個
- オリーブオイル少々
アイゴのマース煮
沖縄で提供されるアイゴの料理です。作り方はとてもシンプルな料理ですが、アイゴがたくさん生息している地方の名物料理だけに、アイゴのうま味を上手に活かし料理です。
<材料>
- アイゴ・1匹
- 塩・大さじ1~2
- 昆布(あれば)・適量
- 泡盛or日本酒・水の1/3程度
- 水・魚がひたる程度
予想外に美味しいアイゴを堪能してみよう!
毒針があり、悪臭のような独特の磯臭さが強いアイゴは、西日本では上手に調理され、アイゴの料理も紹介されています。東日本ではほとんど食されることにない魚ですが、毒針を取り除き、基本的な処理を上手に行ったアイゴは、白身の美味しい魚と言われます。強烈に臭いと言われる内臓のぜんまいも、面白い味わいのようです。予想外に美味しいと言われるアイゴ!ぜひ美味しく料理して味わってみてください。